攻略!悪魔王編!「必死の逃走」
マイウエルの放った魔法は真っすぐに狙い外さず第四悪魔の、「モビル◯ーツ」みたいな顔に向かって行った。
だがしかしコレには素早い反応、そう、この「モビル◯ーツ」の持つ盾で防がれてしまったのだ。
だが魔法の威力は絶大でその爆風で相手は怯んだ。その隙は大きく、そして長い。逃げ遠ざかる僕らの方にまで爆風の影響が来る程の威力である。
それでも第四悪魔にはダメージは無さそうなのだ。やはり僕らは数字付き悪魔を舐めていたとコレでハッキリと分かる。第四悪魔の被害はこれ程の攻撃でも盾が多少焦げた程度で抑え込まれていた。
爆風を盾防いでいる間にはもう僕らは既に必死に走り遠ざかっていた。第四悪魔が盾で身を守っているその間に僕らは少しでも逃げる距離を稼ぐ。
どれだけ相手から離れられれば脱出と言えるのか分からない。必死に今は走り続けるしかないのだ。
「マイウエル!抱えられながらでも魔法連発して牽制して!」
「ちょっと待って!マルス!抱え方を変えて!」
「ブモー!分かったべー!」
マイウエルは最初マルスの脇に抱えられるようにされていた。マイウエルが魔法を放った瞬間は反動で直ぐに動けないので初動のロスを防ぐためにマルスにマイウエルを最初は抱えて貰って逃走を図ったのである。
だけど僕のこの指示で直ぐにマルスはマイウエルを抱え直す。抱っこをしてマイウエルが背後を向く形になった。
「先ずは威力はさっきより下がるけど!三連発!今度は氷結弾!」
どうやらマイウエルは機転を利かせたみたいだ。名前からして当たった場所が凍り付いて動けなくなる魔法なんだろうと僕は想像する。
ソレは合っていたみたいだった。爆風が止み、丁度盾を動かして視界を確保し始めた第四悪魔のその手に氷結弾は当たったのだ。
見る見る内に着弾した場所から氷が広がって行って肘の部分まで氷で覆われて行く。
脚を狙わなかったのはどうしてなんだろうか?今は逃げる為に相手を動けなくさせるのが第一なのに。
でも、直ぐにソレは分かった。メキメキ、パリパリとその氷が剥がれる音がしたのだ。
そう、相手のパワーが氷を砕いて直ぐに凍った部分は自由の身になってしまっている。
「・・・やっぱり駄目だった。あの巨体からして力も大きいと思ったけど。この程度じゃ動きの阻害すらできないなんて。」
マイウエルはどうやらあわよくば、と言ったつもりで腕の自由を奪おうと考えた様だ。
確かに盾で防がれなければ恐らくはマイウエルの高威力の魔法は相手に通じると思われる。
当たっても平気だったと言うのであれば盾で防がずともこちらに向けて攻撃を仕掛けて来ていても良いはずだったから。
そう、ここでこの氷の阻害効果が大きく出れば反撃、と言った選択を生み出す為に実験でマイウエルはこの魔法攻撃で確認をしたのだ。
「オラは一気にここで全力で走るべな!ケンジ!宜しく頼むべ!」
この魔法攻撃で第四悪魔のヘイトが大きくマイウエルに向かう事になっただろうコレで。
そうなると敵の攻撃を受けない為にもマルスには僕を気にせず全力ダッシュで切り抜けて貰わねば危ない。
ここでマイウエルも自力で飛行の魔法を使って逃げられたら良かったが。
第四悪魔の居る場所に行く前の作戦会議で「先ずは逃げる」と説明した時の事だ。
『マイウエル様が飛行する速度よりもオラが全力を出して走った方が速度が出るべ。もし本当に危ない場面になったらオラがマイウエル様を担いで走るべな。』
そんな話が出て来ていたのである。だから今もマイウエルはマルスに抱っこされたままである。
分散して逃げると言った事で各自の生存確率を上げると言う事も考えたが、それは寧ろ余計に危ないのでは?と言った結論になってこの逃げ方になっている。
「コナクソ!自棄だ!」
僕は立ち止まって振り返る。僕はやられてしまってもリスポーンで復活できる。ならばここで足止めが僕の役目だ。マルス、マイウエルを無事に帰還させる為にも。
「アイスニードル!」
僕は掌を第四悪魔に向けて魔法を放つ。MPを全て空っぽにするつもりで。
マイウエルから教わった「同時詠唱」「複数詠唱」のスキルでアイスニードルを連発する。
ソレはさながら「マシンガン」だろう。僕の視界には絶え間無く「氷の針」が相手の胴目掛けて飛んで行っている。
しかし悲しいかな、第四悪魔には全くノーダメージ?恐らくは微かな損害しか出せていないんだろう。
第四悪魔はこの程度の威力の魔法に盾など使う必要も無いと判断したのか、目立った動きは見せずにアイスニードルをそのまま胴にて受け続ける。
「それでもこちらの目的は達成できたから良いとして・・・」
そう、相手のヘイトはマイウエルから僕へと移った。成功した。コレでマルス、マイウエルの危険は著しく下がったと言って良い。
このままでいけば上手く逃げ出せる。そう思った時に「モビル◯ーツ」が動く。その顔の向きは僕を、怪しく緑に光るカメラアイが僕をしっかりと捉えた。
その手に持ち、そして僕へと向けられているのは何処をどう見ても有名な例の「ビームライフル」である。
僕は緊張感で喉をごくりと鳴らす。ここまで悪ノリした運営だ。コレが放たれたら一瞬で僕は消滅してしまうだろう。
あの銃口から放たれるのはきっと実弾では無い。光線だろう。あの巨体の持つ銃なのだ。その口径も大きくなるのは当たり前で。
ちょっとくらいその中心がズレたとしても、掠っただけ、もしくはそれが当たる様な事が無かったとしても、側にいただけでその熱量で僕はきっと瞬時に消し炭だ。
だが僕はここで集中をした。完全に躱す事の出来るタイミングを見極める為に。運営の「こだわり」がこの時は僕を助ける形となった。