攻略!悪魔王編!「舐めていた」
「掲示板に情報は散々載っていたから知ってはいたんだけど・・・」
目の前に現れた存在の事が信じられない。いや、このゲームはファンタジーであり、物理法則などと言ったモノは関係無いのだろう。魔法と言う訳の分からない力もある。
「デカイ、べな。国にも「巨人族」が数名居るだべが、比べ物にならないべ。」
魔王の国には「巨人族」なる存在が居る事がマルスのこの発言で発覚した。それを僕は知らなかった。
結構魔王国に滞在しては居るのだが、まだ会った事は無い。
「これは・・・私の全力で倒せるかしら?相手の魔法抵抗力次第?」
マイウエルも驚いている。自慢の魔法で倒せるかどうかに自信が揺らいだようだ。
「ちょっと大きめのビルを・・・超えるくらいだけど。じゃあ巨人族ってどれくらい?って話で。」
「あ、巨人族はオラよりも少し背が高い位だべ。」
マルスが僕の溢した素朴な疑問に答えてくれるが、今は目の前の第四悪魔の事に集中して欲しい。
まるで目の前に「モビル◯ーツ」が立っているのである。その見た目も運営が「悪乗り」したのでは無いかと言えるくらいにスタイリッシュなカッコ良さである。
デザインを担当したスタッフに一言物申したい。
「じゃあ、逃げる準備はしてあるけど・・・これって相手が一歩踏み出すだけで追いつかれるレベルじゃないかしら?」
マイウエルが当初の計画通りと言う事で一歩一歩と後ろに下がるのだが。
「確かになぁ・・・これはどうにも逃げるにしたって相手を一度大きく怯ませないと駄目かも?」
僕はマイウエルの意見に同意する。
「ソレとこいつがどれ位まで追いかけてくるのかが運命の分かれ道だべ。ちょっとホイホイとここまで来てしまった事に後悔している自分が居るだべな。」
マルスは少しだけ頬を引きつらせながらそう漏らす。確かに僕も怖いもの見たさと言った感じがあった。
逃げられると言う情報も相まって「大丈夫だろう」と軽く考え過ぎていた。そして。
「これまでの数字付き悪魔が簡単に倒せちゃったのがいけなかったわ。今回も軽く倒せる、なんて、心のどこかで思っていたのね。」
そう、心の油断だ。僕は掲示板からこの第四悪魔の情報を散々得ていたのに、二人が、魔族のもの凄い強い味方が居るから大丈夫だと。
その二人は二人で、数字付き悪魔の完全討伐が二度も簡単に成功している事に大いに相手を格下と認識していたのだ。
「最初から逃げるって計画を立てていて正解だったね・・・じゃあ、マイウエル、頼める?」
僕がそう声を掛ける前に既にマイウエルは自分の魔力を溜めていた。最大級の威力を出せる魔法の準備をしていたのだ。
「マルスはマイウエルが魔法を放った瞬間にマイウエルを抱えて一目散に真っすぐ逃げて。僕も必死でその後を追うから。」
僕はやられてしまっても復活できる。だからしんがりだ。二人は死ねば蘇れない。
二人は必ず生還しなくちゃいけないのだ。そうで無いと僕は今後二度と魔王に顔向けできない。
第四悪魔のその顔の部分、瞳だろう場所に緑の光が灯る。恐らく「起動」したのだとソレで僕は分かった。
「今だマイウエル!顔を狙え!」
僕は即座に指示を出した。これを信じて即座にマイウエルが魔法を放つ。
狙いを定めたマイウエルの人差し指はまるで拳銃の形。そこからスイカくらいの大きさの真っ白な塊が飛ぶ。
「逃げるぞおおおおおおおお!」
その瞬間に僕は大声でマルスに合図を送った。