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何で俺だけ  作者: コンソン
嵐が始まる
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攻略!悪魔王編!「誰も居ない荒野で」

 翌日の僕らは第四悪魔の居るダンジョンに来ていた。とは言え、そこは荒野だった。

 見渡す限りそもそも何処に何があるかがほぼ丸見え。時折大きな岩があるくらいでその他は荒れ果ててカサカサと乾燥した草の塊が風に吹かれて遠ざかっていく。

 砂埃も結構あってサーッと目の前を過ぎて行くのを眺めているとこちらの心まで荒んで来る様だ。


「えーっと、今日は昨日説明した通りに様子見って事で、直ぐに第四悪魔との遭遇をしたら即撤退と言う事で。宜しく。」


「ぶもー。ケンジは慎重だべな。一応は情報を得ているんだべ?プレイヤーの基本的な「力」とか言うので。なら恐れる事は無いと思うんだべが?」


 マルスは僕が「掲示板」でこのゲーム内の情報を調べられる事を「神の目」とか言ってプレイヤーが与えられた力の一部として認識している。まあ間違っちゃいないけど、言い方はワラエナイ。


「でも、考えてみればおかしな話よね?数字付きの悪魔は「コア」がある筈でしょう?こんな何も無い場所の何処にソレを隠せるのかしら?謎なのよね。」


 マイウエルがしきりに納得がいかないとばかりに首をかしげている。

 そう、プレイヤーたちは既にこの「憂いの荒野」と名前が付いているフィールド型ダンジョンに踏み入って第四悪魔を一度だけ倒している。

 その時に結構な広さのこの場所を人海戦術で外側からじわりじわりと範囲を狭める様にして中心へと向かい隅々まで探索をした後に第四悪魔との戦闘に入っている。


「一度目の挑戦の時にはプレイヤーは第四を倒せなかったって話だよ。でも、その時に得る事ができた情報で二度目の挑戦には良い所まで削って、三度目の挑戦でやっと倒したって言うからさ。」


 そう、一発初見で倒せた訳じゃない。プレイヤーはこの第四をレイドを組んで挑戦し、二度も敗れているのだ。

 一度目はしょうがないにしても、二度目で成功にできそうなものだが。それでも敵の体力を一定割合削ると行動パターンが変わって戦線を崩されると言った事が良くあるものだ。

 その情報を得る事でようやくと言った感じで完璧に倒せるだけの作戦を立てる事が出来るようになったと言う事だろう。


「それにしてもこんな場所なら簡単に敵が見つけられ・・・無いんだべ。どういうことだべか?」


 そう、この荒野、何も無いから敵が居れば直ぐに一目で分かるはずなのだが。

 そもそも視界一杯に広がる不毛な荒野には一切の姿が見受けられないのだ。おかしいのである。


「私の魔法感知にも何も反応無しだね。この場所、本当に何も無いわ。」


 マイウエルがそう言って右へ左へと首を先程から何度も振ってはウンウンと唸っている。

 上空、そして地下にもどうやらマイウエルは感知を飛ばしている様で。上下に首を縦に振っていたりもする。

 それでも何も不審な点が引っ掛からないようで余計に混乱が増えている様子だ。


「最初に此処に踏み入ったプレイヤー達も何も見つけられなかったって。だからきっと何かしらの条件があるとは思うけど。それはまだ予想もできない状態だから考えても仕方が無いよ。情報が無さ過ぎる。行こう。ここで突っ立っていても始まらないから。」


 僕は二人にそう言って一歩踏み出す。ここの第四悪魔が出て来るとしたらこの荒野の中心付近まで行った時だ。

 そしてこの第四悪魔との戦闘はゲームとして珍しい仕様で「逃げる」事が可能だった。ボス戦、なんてモノになるとプレイヤーは「しかし逃げられ無い」と言った感じでそのバトルフィールドから逃げ出し不可能な事が多いモノだ。透明な壁が逃走を防ぐと言った具合で。

 特殊な仕様のボス戦で無ければ大体が逃げ出し不可である。しかし今回はそう言った不安要素は無い。

 既に掲示板でこの情報は出回っており、検証も行われていて第四悪魔との戦闘は気軽に逃げ出す事が可能なのである。安心だ。


「第四悪魔と初めて戦闘を行ったプレイヤーたちはより多くの情報を得る為に死に戻りまで粘って戦ったから、この情報は結構後になって判明した仕様だって事らしいけどね。」


 僕は中心部へと歩みを進めながらそう説明する。その時に戦ったプレイヤーたちには「固定観念」があったのだ。

 ボス戦は逃げられ無いから、どうせなら死に戻りする分だけの価値のある相手の情報を得られるように粘った。そういう背景である。


「逃げるにしても偏に只々逃げるだけなのは駄目だべな。囮役、逃走戦術、しんがり、相手の隙を作り出せなければ成功率は著しく低くなるべな。バラバラに逃げ出すのも一種の生き残り戦術としてはアリなんだべが。だけども広範囲の攻撃に晒される可能性もあるから見極めが難しいべ。後は自分が無事に逃げ出す事ができるかは運も絡むべな。」


 全員が一致団結して恨みっこ無しで一斉に逃げ出したなら、それはまだ良いだろう。

 でも一部が怖気づいてしまい、そいつらが一気に周りの者たちの事など一切気にせずに逃げ出そうものなら、それのせいで後々に遺恨が残ると言う事だってある。


 逃げ出すと言う判断はかなり難しい。見極め、決断しても、しかし周りからは「もっと粘れた、やれたのでは?」などと言った意見が無事に逃げ切れた後に出て来るものだ。

 そう言った者たちは何も考えずに「後出し」で逃げる決断をした相手に対してそう無責任に問う。

 よくよく後から考える、そんなものは自分が安全な状態になってようやっと冷静になって気づける事であって、決断を下した者からしたら「じゃあその時に即座に言えよ、今更遅い」と言い返す所である。

 言い返された方はそう言った場面だと「あんな状態で思いつけなかったんだからしょうがない」などと言って自分には責任が無いと言い逃れようとする。

 結局は逃げる判断を出した者に従って全員が逃走を図ったのであれば誰にも後から文句は言えないのだ。文句ならその場で言わなければ意味が無いのである。指示に従った者には言い返せる権利など端から無いのだ。


 その指示、判断、決断のおかげで死に戻りをせずに生還を果たしたのなら、それは感謝をするべき事であって批難や文句を言うべき事じゃない。そう言った事を全く分かっていない者たちが後からワイワイギャアギャア下らない事をその口から垂れ流す。

 その危機の瞬間にあってその時に自分が決断を下す責任を負った事が無い者程、大抵は「もっとやりようがあったのでは?」と今更な事を後から口に出す傾向がある。


「・・・おっと、どうやら第四悪魔がお出ましらしい。二人とも、逃げる準備は大丈夫?」


 最初の計画通りに僕らは第四悪魔の姿を実際にこの目で見たらすぐに逃走する。

 二人にその事を確かめた時に第四悪魔は出現してきたのだった。

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