攻略!悪魔王編!「返す刀で」
この水の塊があるおかげで通路は通れない。いや、無理矢理通る事も出来なくは無さそうだったが。
「思い切り殴って見ても壊れなかったな。凄いぞ、コレ?」
俺が思いきり全力で拳を叩きつけてもこの水の塊は弾け飛んだり破壊されたりしなかった。
この水の塊、当たる瞬間にまるでスライムの如くに俺の拳、腕まで包み込んでその威力を吸収したのだ。
吸収しただけでなく、その威力の半分だろう衝撃波をこちらに向かって放ってきていた。
俺のこの魔王の身体はそれくらいじゃダメージを食らわないが、ポチとミャウちゃんはちょっとだけ危なかった。
「ポチもミャウちゃんも無事で良かったよ。脳筋プレイはやっぱ駄目だな。もうちょっと考えるべきだった。」
いきなり破壊できないかどうかを試すのに初手で全力はやはりマズかった。
こんな反撃を食らうとは思っていなかったのだ。しかも俺のその一撃を受け止めて返してくるなんて考えもしなかった。
ミャウちゃんは咄嗟にどうやら魔力と糸を合わせたバリア?みたいなモノを張って防いでいた。
ポチはその瞬発力で衝撃波の威力外まで瞬時に離れて事無きを得ている。
そして俺はと言うと、この水の塊の反撃に対して何ら反応も出来ずにまともに食らったのだが無傷、と言うちょっとした間抜けな事になっていた。
「うーん、意識していればこの「魔王」の身体のコントロールはできるんだけど。咄嗟に思いがけない事になるとどうしても動けないなぁ。でも、まあ、呆れる程の耐久力と頑丈さで耐えられちゃうんだけど。それに頼りっぱなし、ってのも駄目だよねぇ。」
一応は戦闘訓練と言うものもやっている俺は。しかし所詮「中の人」は素人だ。
そんな素人に毛が生えたような付け焼刃で咄嗟の動きなどできる様になれと言うのは土台無理な話であった。
「魔王様、お怪我は御座いませんでしたか?」
ミャウちゃんが心配の声を掛けて来てくれる。
「咄嗟の事で魔王様を障壁で守る事ができませんでした・・・申し訳ございません・・・」
「ああ、そんなに気に病まないで。もっとミャウちゃんは俺の事を信じて欲しいね。ほら?この通りピンピンしてるから。ミャウちゃんはミャウちゃんで自分の身を守ってくれないと駄目だよ?俺を守るためにミャウちゃんが傷ついたり、死んじゃったりする方が俺は嫌だからね?今回の事は俺が考え無しに動いた結果だから。俺が悪いんだよ全面的にね。」
俺の返しにミャウちゃんはそれでもちょっと納得いかなさそうな声で「はい」と小さく答える。
ミャウちゃんからしたら「自分の命よりも魔王様の御身の方が比べるまでも無く大事」と考えているだろうから俺のこの返しに納得はできないだろう。
「さーてと。これをどうにかしたいね。このまま歩いて突っ込んで、さてそのまま貫通して通る事は可能かな?いや、そんなギミックは無しだろうな。壊せるか、壊せないのか。どっちかな?それともこれを消せる何かがダンジョン内にあるのかな?」
炎熱で水を蒸発させられるのか?、はたまた土魔法で水を吸収させたりとか言った事は可能か?
或いは凍らせてからの破壊は?雷での電気分解とか言った方法は?
などと今頃になって考える。そうなるとここでマイちゃんが居たらそう言った実験も出来たなと思うのだが。
「でも、先ずは試したい事があるんだよなー。ちょっとミャウちゃん、ポチ、下がっていてくれるか?そうそう、さっきの衝撃波が来ない位の所まで。じゃあ、もっと全力でやって見ちゃおうかな?」
はっちゃける、と言う言葉はこういう時に使う物なんだろう。
俺の精神はポチと長時間遊んでいた事でちょっとだけ高揚していた。
だからこんな方法を先ず選んで実験してみようなどと実行するのだ。
「さて、限界は、あるのかな?」
俺はまたしてもこの水の塊に対して全力の右ストレートを放った。