攻略!悪魔王編!「逆さまは」
俺たちは一部屋一部屋丁寧に入っては中を細かく見て行く。
そもそも第九悪魔の居るダンジョン城を全く同じに逆さにしただけとは言え、トラップやギミックは全てが別物。
第十悪魔のこの「逆さ城」は戦闘感覚も変わるし、戦い易さも向こうとは別物だ。
天井が足場で、床が天井になっているのだ。方向感覚も、上下感覚も狂う。そんな場所で激しい戦闘などすれば目も回るだろう。
幸いにもポチが集めてくれた雑魚を軽く薙ぎ払うだけで倒せる俺はまだそう言った事態には陥ってはいないが。
多分ここにプレイヤーが攻め入ればきっと気分の悪くなるプレイヤーが大勢出る事だろう。慣れてしまえばどうって事無いのだろうが。
「お?ここの壁が押せるな?隠し部屋用のギミックかな?でも、完全に押しこんだりしないけどねー。」
全て押し込み切ったと同時にトラップが発動などと言った事になると、俺は良いとしてポチとミャウちゃんに危険が及ぶかもしれない。どんなものが仕込まれているか想像もできないのだ。余計な危険は一々起こさないでも良いだろう。今は只の軽い調査をしに来ただけだ。
なので中途半端にしておいて起動させない様にしておく。まあ中には触っただけで自動で動いてしまう物もあったりするから油断はできないのだが。
「こちらにもどうやら動かせる壁があります。そちらと連動している可能性も残っていますね。」
ミャウちゃんがそう言って俺の方を見る。同じ部屋にあるギミックなので謎解きも含んでいたりする可能性も無くは無い。
起動させる順番を間違えると開けられないとか?遠くにあるギミック同士を同時に起動させるとか?まあそう言ったモノにはダンジョンの何処かしらにヒントなどがあったりするものだが。
そう考えている間にもこれまたポチが「わふ」と鳴いてどうにも別の所にも何かあると訴えてくる。
「お?ポチどうした?・・・あー、ここにも隠しスイッチかー。調べれば調べる程に何だかおかしいな?」
どうしてこっちはこんなにも妙に「隠し」があるのだろうか?ちょっと一部屋に三つもあるのは多く感じる。第九悪魔の方の城にはここまでの数の隠しスイッチなどは無かった。
と思えばまたミャウちゃんが別のギミックを見つけてしまう。そうなると四つ目である。
「ベッドの下にどうやら窪みがあるようです。退かして見てみますか?」
此処はどうにも寝室と言った部屋なのでベッドが置いてあるのだが、誰かが使っていると言った様子は無い。
ソレはそうだ。ここはダンジョンで、数字付き悪魔が居る場所だ。そこでこんな「演出」と言った具合の部屋で過ごしている者などいないだろう。
「あー、別に良いよミャウちゃん。そのままにしておこう。情報だけはメモを取っておいて、後でケンジがここを攻略する際に必要だと求めてきたら教えれば良いさ。その時には俺たちも一緒にケンジとこの城を攻略しに来てるかもしれないな。」
今は地味な作業、ポイント稼ぎを優先しているのだが、その内にケンジも順調に数字付き悪魔を倒して行けば俺たちと合流する事になるだろう。
その時の俺の気分次第で雑魚狩りを切り上げて一緒に悪魔王攻略を進めるかもしれないその時は。
「さて、ここの部屋はこれ位にしておこう。次の部屋に行って見ようか。」
このダンジョン、結構部屋数が多い。もちろん第九の方も同じ数なのだが、こちらは逆さなのだ。調べるのも結構精神力が必要になっている。
何せ先程にミャウちゃんが言っていたベッドの下、というのを考えても見て欲しい。
本来だったら床に置ていあるベッドがこちらの逆さになると天井にくっ付いているのだ。
そのベッド、しかもシーツもベッドにくっ付いていて落ちてくる様子も無いのである。そんなベッドの「下」なのだ。行って見れば天井にあると言っているのと同じなのである。
こんな環境で部屋の中を探ると言うのはちょっと所じゃ無い。平常心と言うのがガンガン削られる異常な環境だ。
「想像以上に疲れるね、これは。それでも第十悪魔とやらと一戦してみたいと思っての事だからなぁ、今やってるのは。こっちも戦うのに条件とかこの分だと必要そうだよなー。」
恐らくはこの予想はあっていると思っている。第九悪魔が何処にも見当たらなかったのだ。ならば第十も同じくと言ったパターンも可能性は高いと見るべきだ。
さてこうなると俺は第八以下の悪魔としか戦えないと言う事になる。それでも良いのだが。
「やっぱ第十とは戦っておきたいな、一度は。それで強さを確かめて「悪魔王」がどれ位の強さなのかって所の予想の為にも出現条件は満たしたい所・・・お?またここにもギミックか。やっぱ多いな、コレ。」
このギミックの多さに何か意味があるのか、無いのか、どうなのか?
運営がこの「逆さ城」にどの様な思惑や方向性を持たせているのかがちょっと疑問になってくるここまでギミックがあちこちに多いと。
「これは通路の方ももっと細部まで調べないといけないかなぁ。あー、ここまで来ると全部網羅したくなるなー!」
これはちょっと悩む所である。そこまでの事をする必要があるか?と問われると、無い。
けどこうして調べ始めてしまうとこの数の多さだ。ゲーマーとしては全てを把握して攻略情報として纏めておいて手元に置いておきたい。
「今日はここまでで切り上げよう。時間も時間だしな。さて、戻ろうか。」
俺は一日で終わりそうも無い調査を切り上げる。決めていた事だ。今日の所は軽く下見程度で済ませると。
だけども俺は帰る時にはもう既にこの「逆さ城」の本格調査を決めていた。
「さて、どうやって丸裸にしてやろうかなー?」