攻略!悪魔王編!「深まる疑惑」
俺たちはまだ時間があるのでこれからポイント稼ぎの為に次の狩場に行く、つもりだったのだが。
「待て待て待て!無いの?何にも?」
「え?見逃された?何で?イベントとかじゃないのか?」
「いや、これって何かのヒントとか?」
「あ、それな?じゃあもしかして魔王の後に付いて行くとダンジョンの入り口見つかるとか?」
「ソレはきつくない?このまま魔王をストーキングとか?誰得?」
斜め上の答えに辿り着きそうな五名に俺は呆れそうになった。
お前らの目的場所は目の前にあるぞ?と言ってやろうかと思ったのだが、そこまでしてやる義理が無い。
だから代わりにこう言っておいた。
「付いてくれば即座に殺すぞ?」
この言葉に五人はギョッとした顔になる。自分たちがこれからしようとした事は魔王の機嫌を損ねる事であり、それが自分たちの死に直結していると理解したから。
普通は怖ろしい相手の後を付ける真似など容易には思いつかないはずだ。その対象が魔王だと言う「ラスボス」であればなおの事。
そんな危険な対象と真正面で出くわして、こうして何も無く見逃される事がそもそも普通じゃない展開だ。
そう言った思考の持って行き方にこいつらはならないのだと言う事を俺は良く知っている。
「おいおい、ここまで来て何のネタも仕入れられませんでした、とかお話にならねぇぞ?」
だが俺でもちょっとソレはどうだよ?と思う様なバカな事をこいつらは口にし始めた。
「掲示板に書くネタ探しもあったし、ここはいっちょやるべきだよなー。」
「前よりも俺たち強くなってっし?まさかまさか、ワンチャン行けんじゃね?」
「あ、それイイネ~。今の俺たちが何処まで通用するか、いっちょ試すのアリだな!」
「どうせこのままだとダンジョン見つから無さそうだし?どうせなら何かしら収穫は欲しい所だよな!」
心底馬鹿だ、こいつらは。いや、俺も以前はこいつらと同じ穴の狢だった。こいつらを馬鹿呼ばわりできない。
そんな事を思っていたらもう五人はそれぞれ武器を構えていた。止められなかった、もう遅かった。
次の瞬間には光と変わっている五人。しかもこれ、ミャウちゃんがやったのではない。そして俺がやった訳でも無い。
これをやったのはポチだ。ケルベロスの「ポチ」である。
瞬き一つの時間で五人を瞬殺。強い、強過ぎるのだ。本気で動いたポチは戦闘態勢に入ったプレイヤー五名を即座に排除した。
「・・・可哀想になぁ。きっとどうして自分たちがリスポーン地点に戻されたのか、きっと分からないだろうな、このブッコロされ方だと。」
余りにも瞬時に頭部を破壊されて視界もブラックアウトだろうこの分だと。
そう、五名全員が頭部を潰されての死亡判定である。噛みつかれ、爪で深く抉られ、後ろ足で踏みつぶされ、あと何故か氷らされていたりする。
「おん?氷?ミャウちゃん、魔法撃った?」
「いえ、私が動こうとする前にポチの気配が動いたので様子見をしようと思い、手を出してはおりません。」
「地獄の番犬ケルベロス、となったら炎の息じゃないの?ソレかアシッドブレス?もしくは使うなら闇系統だと思うんだけど?」
ここにきてポチがケルベロスなのかどうかへの疑いがより二段も三段も深まった。
「・・・まあそんなのは後々に判明するだろ。というか、高レベルの鑑定でケルベロスって出たんじゃなかったのかよ?」
プレイヤーの鑑定スキルで調べて名前が判明したのでは無かったのだろうか?
もしくはこのケルベロスは特別仕様で氷系統の魔法が使える種だったりするのだろうか?
それともこのゲーム内の「ケルベロス」は氷も放てる?氷結攻撃が使える?
考えても仕方が無い。ポチはポチであり、俺のペットだという事実は変わらない。
ポチがこのまま俺の癒しであれば良いのだ。何ら問題は無かった。
「なんか無駄な時間を使っちゃったけど、行こう。この分だとここのダンジョンの入り口は当分プレイヤー達には見つからないだろ。狩場が使い難くならないうちになるべくポイント稼ぎたい所だからさっさと回ろう。」
この後に調べたのだが、ポチがプレイヤーを倒した分はポイントとしてちゃんと俺に入って来るらしく、その点は嬉しい誤算だった。
一応は仕事を熟したポチの頭を俺は撫でておいた。