攻略!悪魔王編!「かつての」
それは俺のかつての仲間。俺を裏切った者たち。
「おい、こっちで合ってんのかよ?向こうの道じゃ無かったか?」
「それなら一つ前の道を右じゃねーか?」
「誰だよ、こんな事に賛成した奴は?」
「いや、お前も賛成派だったろうが?」
「俺は最初にちゃんと反対してたからなー?」
呑気にそう言い合いながらもこちらに気付かずに接近してくる五名。どうやら六人目のメンバーは居ない様子。
只単に気の合う者が居なかったのか、或いはこいつらのパーティに入って堪るかと言う感じで評判が悪くてプレイヤーが入って来てないのか。
「どうして第八悪魔のダンジョンに行ってみようぜって提案しただけでアイツってばパーティ抜けたんだ?」
「あーそれな?俺にもさっぱりだ。」
「誰もまだ入った事が無い場所に初めて入るとか、超面白そうじゃんな?ソレをパーティ抜けてまで拒否とか?訳わからん。」
「ちゃんとフラグは起てて来たし?ここら辺にあるって事だったよな?確か?」
「それらしいの全然見ないじゃん!これって迷子だよな?な?な?誰が責任取るんだよ、コレ?」
いや、こいつらはちゃんと第八悪魔の居るダンジョン入り口前に来れている。
しかしこいつらがこうして喚いているのは隠蔽魔法を解除、或いは看破できる強さ、スキルを得られていないから。
そしてこいつらが俺たちに気づかなかったのはその隠蔽の中に俺たちが居たから。
(こいつら六人目がパーティ抜けてでも拒否するのを引き止めなかったのかよ?というか、そこまで行きたくないって仲間が居たのに中止しなかったのか?)
こいつらの事を俺は良く知っている。そして以前の俺はこいつらと同じテンションで別のゲームで楽しんでいたのだ。
だから分かる。この五人は何処まで行ってもこんな感じなのだと。
(俺も昔はこんな感じだったんだな。客観的に見て冷静になればもの凄く・・・あ、落ち込んできそう)
俺もこいつらと昔は同類であった事を思ったら今更に自分が愚か者だった事を理解する。
(前にやってたゲーム内では守るべき物なんて無くて、夢中で仲間と楽しい事を見つけるのが当たり前だったからなぁ。ハジケテたな、昔は)
別にそこまで何年も前の事では無いのに遠い過去の様に思えてしまう。
こいつらに俺は裏切られたんだな、そう改めて思ったのだが、別に今はそこまで腹は立っていなかった。その事にちょっとだけ驚く。
「まあどう足掻こうが、今の俺は「魔王」だからな。これで遊ぶしかないんだし。」
そう俺は呟いてダンジョンの入り口に掛かっている隠蔽の範囲を超えて外に出る。
俺の姿はいきなり現れた様にこいつらには見えた事だろう。そう、俺はこの五人の前に姿を見せたのだ。
このまま無視して隠れ続けていても良かった。そうなればきっとダンジョンの入り口を見つけられなくてこいつらはこの周囲をずっと彷徨う事になっただろうその時は。
「うげぇ!?魔王じゃん!」
「どっから現れたんだよ!?って言うか!」
「え?ラスボスがフィールド歩き回っちゃ駄目じゃん?って言うか、なんかのイベントかコレ?」
「はぁ?マジでマジもんなのコレ?第六悪魔のダンジョンに魔王居たってホントだったのかよ・・・」
「まさか俺たちここでリスポーン案件?」
五人は狼狽えている。ここで俺にぶちのめされるのか?と。
「ミャウちゃん、ポチ、行くぞ。こいつらは相手にしなくて良い。」
「はっ!畏まりました。しかし向こうが攻撃をして来たら・・・」
「その時はミャウちゃんがサッと片付けてくれたらいいや。俺は手を出さないでおくよ。」
俺のこの答えにミャウちゃんは軽く一礼をする。ポチもどうやら俺とミャウちゃんの言っている事が分かってるのか、無いのか「わふ」と軽く吠えている。
俺に続いて姿を見せたミャウちゃんとポチに対して五人がギョッとした目でこちらを見つめて来ていた。




