攻略!悪魔王編!「逆転」
やはり腕も骨は断ち斬れなかった。相当に堅い。そしてここでも悪魔は動く。深く傷付いた腕をそのまま振って痛みなど感じていないとばかりに僕を狙って攻撃が繰り出される。
しかし僕はそれを大きく後方に跳び下がって躱した。これで空ぶってまた体勢を崩す悪魔にボッズが高く跳び上がってその顎にアッパーカット。
この一撃で見事に仰向けに倒れ込んだ悪魔は五秒程起き上がって来なかった。どうやらクリーンヒット効果と言う所らしい。
その短い時間で僕は二人と会話を交わしていた。
「ボッズ、このままイケる?ソレと、キリアスは俺に遠慮しないで魔法でもっと攻撃してくれて良いよ?つか、止めをキリアスが刺してもオッケー。」
「しょうがねえ。俺の攻撃はどうやらこいつの体力をそこまで削れねえみたいだしな。おう、キリアス!お前がやっちまえ!」
「・・・ケンジ様が倒さなくても宜しいのですか?」
「うん、別に今すぐにレベルアップしたいとか思わないから。気長にやるし?ソレと、コイツどうやら体力多いっぽいんだよねぇ。あんまりだらだらと無駄に長く戦いたくは無いし?良いんじゃない?」
キリアスはどうやら僕の経験値稼ぎの為にもこの悪魔の止めを躊躇っていた。
そう、いつでもキリアスは自身の放つ魔法攻撃でこの悪魔に大ダメージを与えられたのだ。
ソレをしなかったのは僕の為だった。最初に雑魚悪魔を僕が倒して経験値を稼ぐと言った話だったのに、ボッズが全部倒してしまっていたせいでその事をキリアスはずっと気にしていたらしかった。
なのでここで僕はキリアスに「言い訳」を与えてさっさとこの悪魔を倒してもらう事にする。
ここで悪魔はダウンから立ち上がって再び僕らへと向かって来る。巨体であるのでその迫力はもの凄いのだが。
「プレッシャーは魔王の方がでかかったなぁ。大きさは魔王の方が小さいんだけどね?こいつと比べたら。」
この悪魔は今度はボッズへとターゲットを変えた。どうにもダウンさせられた事が僕なんかよりも余程危険だと判断したようだ。
僕はこの悪魔の肉を断つ事ができるが、骨までは行かない。なので多少削られても戦闘は継続できると判断したのか。
ボッズの顎への一撃の方がよっぽどヤバい代物だと、そんな決定がこの悪魔の思考AIは計算した様だ。
「そっちに浮気すると僕がやりたい放題・・・だぞ?」
氷魔法の剣へのエンチャントはもう暫く続く。付与魔法は込めたMPの数値に応じて効果時間が長くなる。
ちょっと多めに込めたのでおそらくは後五分程は効果が続く予想だ。
そうして悪魔がボッズを倒そうと気が行っている隙を狙って僕が悪魔の身体を削り続ける。
ここでボッズが声を上げた。キリアスへと。
「おーい!キリアス!もうそろそろ俺の腕も痛みで限界だ!コイツどうやら硬いだけじゃ無かったらしい!俺の腕の方が耐えられなくなってきやがった!もうそろそろお終いにするぞ!」
どうやらこの悪魔、物理攻撃を反射して相手へと小さなダメージを与える能力があるらしい。
ソレのせいでボッズの腕の耐久力が持たない様だ。決めろ、そんな言葉をボッズはキリアスに掛けていた。
「じゃあ僕ももう少し頑張るか。ここが踏ん張りどころだな!」
僕は悪魔へと一撃目に入れた傷に剣を振る。骨を断つ為だ。露出している足首の骨を何度も斬る付ける。
どうにも悪魔はまだボッズへと意識が向いていて僕の攻撃なんてお構いなしだ。
この骨を断ち斬れればまたもう一度こいつから大きなダウンを取れると思っての事だったのだが。
どうやら悪魔は僕には骨は断ち斬れないと判断しているんだろう。さっきから連続で僕は何度も剣を振るっていたのだが、確かに一向に手応えが感じられない。
ここで僕は少しだけ焦る。このままだとボッズが倒される危険があるのでは無いかと。
ここで偶然にも剣に掛けていたエンチャントが切れた。予想していた継続時間よりもかなり早く切れてしまった。これはどうやら何度も剣を切れない骨へと叩き付けた事に因って効果時間が大幅に減ってしまったようなのだ。
付与効果が切れたのだからもう一度掛け直せばまた魔法剣を使える様になりはするが。
しかし効果切れのままにそのままの勢いで剣を振ってしまう僕。要するに止められなかっただけである。
「あ?」
だけどコレが功を奏した。手応えが僕の手に残ったのだ。振った剣の食い込みを感じたのである。
「コイツ・・・面倒臭い!」
奴の骨は物理に弱いらしい。さっきまで手応えが無かったのは魔法剣、そう、魔法効果としての計算でダメージが算出されていたのだ。
この悪魔、肉は魔法攻撃に弱く、骨は物理攻撃に弱いと言うなんとも面倒な設定であるらしい。
だけども物理に弱いと言ってもそこそこ手応えは堅い。なのでもう後は根競べである。
「僕の剣が折れるか!それともお前の骨が断ち斬れるのが先か!」
どうにもしょうも無いチキンレースが始まった。




