何で俺だけ「恐怖の館」
そこは寂れた巨大な屋敷だった。あちこちボロいのだが、造りはしっかりとしているのか、倒壊と言った恐れは感じられないがっしりとした土台で建てられている。
しかしこの様な晴れ間でもどことなくその屋敷は暗く湿り気があり、生温い風が時折微かに肌を舐める。
ともすればお化けでも出そうな、そんな佇まいのそのダンジョンは四天王バイゲルの支配するダンジョンだった。
そんな事を知らないパーティーがゲーム内生配信をしつつ門の前へとズラリと並ぶ。カメラワークは主観視点。これを見ている人たちはこれからこの不気味な空気をずっと滲み出し続ける屋敷へとこのパーティーと一緒に入っていくかのような感覚を味わえる。
「なあ?ここってもしかしてゴーストとかゾンビ系の敵が出てくるッポイよな?そっちの対応準備してたっけ?」
そんな事をリーダーなのであろう剣士だと見られる男性プレイヤーが口にする。
「大丈夫だろ。聖水系のアイテムは充分持ってるし。それとほら、うちには聖属性の攻撃魔法を撃てる神官いるしな。」
「俺のビルドがこんな場所で役に立つとかな。本当は魔族に対しての最終兵器的な形で活躍しようと考えてたんだけど。」
仲間だろう二人の男性プレイヤーがそう剣士の不安に対して答えを口にする。一人は斥候だろう軽装鎧、もう一人はいかにもと言った聖職者風の装備だ。
「じゃあいっちょ行きますか!俺はエンチャントを掛けて貰えねーと攻撃当たらねーし、宜しく頼む。効果切らさねーでくれよ?」
武闘家と言った感じの道着の男性プレイヤーがそう言って門に手を掛ける。そこに小さな悲鳴が上がった。
「ちょ!コワ!あそこの窓になんか居た!不気味な人影だったんだけど!赤い服着てたぞ?」
「ああ?別に何も居ないじゃん?え?もしかして人棲んでる?いや、無いだろ。」
魔法使いなのだろう男性プレイヤー。頭には三角帽子で赤い宝石が先に付いた杖を持っていた。その魔法使いがどうやら窓辺に人影を見たというのだが、これを大盾を持った重鎧を着た男性プレイヤーが否定する。
「行ってみれば分かるだろ。とりあえずじゃあその見たって言う場所を目的地として目指して入ろうか。」
剣士はそう言って準備もちゃんと足りるだろうと言った判断を下して屋敷の中へと入る。コレに続いて仲間たちは続けて一緒に屋敷の中へと入って行った。
しかし彼らに今足りていないのは覚悟だったのかもしれない。
門を通れば庭だ。その庭は別にこれと言っておかしな様子は感じられない。いや、おかしい事が一目で分かる。
「あまりにも整えられて過ぎてやしないか?ここって不死者系モンスターのダンジョンだろ?どうなってんだコレ?」
その庭は剪定がしっかりと計算されて行われており、この屋敷に誰かが住んでいて世話をしているとしか考えられなかった。
しかし彼らはここを「アンデッド」が支配するダンジョンだと思い込んでいるのでコレに対してしきりに首を傾げる。
あり得ない、そうしたアンデッド系の敵がこの様に庭を綺麗に管理して保っている事がオカシイと感じている。
しかしコレは間違いだ。だがその事には彼らは一切思い及ばない。
「別にオカシク無くね?演出の一種だろ。別段こう言うのって荒らしても後で元通りじゃん?最初からこう言ったダンジョンなんだろ?構成が。」
武闘家がそう述べると他の者たちもコレに納得してしまう。そこに「チョキン」と言った金属を重ね合わせる、そうまるで鋏を閉じたときの様な音が微かに響いた。
しかしコレが彼らには聞こえていなかった。気付く事ができなかった。もしかしたらこの時、それに気付いていればこんなトラウマを彼らは負う事は無かったのかもしれない。




