攻略!悪魔王編!「隠れた強者」
ここまでで十体以上の魔物の紹介を園長から受けている。どれも奇抜、奇妙、複雑な魔物ばかり。
俺は今までこの様な魔物がいたなんて事を知らなかった。知らなさ過ぎた。
「これらの魔物は珍しいモノたちでして。捕獲するのにも多大な苦労と労力が掛かっておりますれば。」
園長はそんな事を言って次の魔物を説明しようと口を開く。
これまでに見せられてきた魔物はどれもオカシイ。
一つ目のバク、超巨大な口裂けウサギ、全身から刃物の様な鱗を生やした巨大蛇、軟体動物の様に身体がくにゃくにゃのワニ、背中に溶けない氷を纏った巨大アルマジロ、全身真っ黒なジャッカル、クマの顔のフクロウ、その他もろもろ。
おかしいのだ。いや、本当にどう言ったつもりでこんな魔物を運営は実装したんだ?と疑問に思わざるを得ないものばかり。
そうしてやっと最後に紹介された魔物が一番マトモとは良い根性をしているこの園長は。
只ここに集めてある魔物の自慢をしたいだけなんだろうとは思うのだが。
「こちらは通称「地獄の番犬」と呼ばれるケルベロスですな。とは言っても、首は一つしか無く、三つあった形跡もありません。しかし高レベルの鑑定で調べて貰ってもこの魔物の名は「ケルベロス」でありました。私の予想ではまだこれは子供で、成長すると首が増えて行くのでは?と思っております。」
そこには巨大な狼と言って良い存在が居た。しかしどうにも園長に対しての殺意がもの凄く向けられている様に見えるのは俺だけじゃ無いと思う。
「このケルベロスの捕獲には私が中心戦力として戦った思い出がありましてなあ。」
そんな事を言ってそのケルベロスの檻の中に園長は散歩でもするかのように入って行く。
「はっはっは!捕獲できたのは上々なのですが。この子は余りにも懐かなくて困っておりまして。テイムが未だにできないでいるのですよ・・・おっと!」
ケルベロスが噛みつこうとその口を開いて園長を襲う。けどそれに対して園長は小さなシールドを何時の間にか腕に装備していて腕を軽く振っていて「ぱこん」と言った音を立てさせていた。
これは園長が「パリイ」と言う相手の攻撃を弾くスキルを発動させた音だ。それが成功しているのである。
この園長、ニコニコ顔であるが相当の強者だ。人は見た目に寄らない。
ケルベロスは噛みつこうとした顎をそのシールドで弾かれた事で顔が仰け反っていた。完璧なタイミングでこれは弾かれた事を意味する。
ケルベロスが園長の何気ないこのスキル発動で動けなくなる。完全にシステム由来の「硬直時間」と言う奴だ。
「アンタ、強いな。相当な差があるだろ?ケルベロスとアンタとの間には。」
俺が素直な感想を漏らす。ケルベロスが硬直している間に園長はサッと檻の中から出て来ていた。
「いえいえ、私の強さなどは魔王様に比べたら。さて、魔王様、こちらのケルベロス、如何でしょうか?」
この園長の言葉は率直な意味だ。気に入ったか?そうで無いか?だから俺はここで一言。
「俺も中に入って触れ合いをしたいんだが?良いだろうか?そうだな、それでこいつが気に入れば買いたいと思うんだ。幾ら位になるかな?」
「本来は金貨三万枚と言いたい所なのですが。こやつが魔王様に従う所を見てみたいですな。私が幾ら世話をし続けても一向に従順になってくれずに悲しい気持ちでずっと居たのです。こやつが大人しくなっている所を見せて頂ければ、半額でお譲り致しましょう。」
俺はミャウちゃんに目配せした。ミャウちゃんはコレに一つ頷く。購入オッケーの意だ。
「じゃあやってみるとしよう。あ、大人しくさせられなかったとしても購入はさせて貰うよ。三万枚だよな?なら大丈夫。」
俺にはこのケルベロスを大人しくさせられる自信は無い。だけどもコイツに襲い掛かられたとしても俺が負けると言った事は有り得ない。
先程のケルベロスの動きを見ていたが、これに俺の負ける要素が無いと一瞬で理解できていた。
寧ろ園長の方が戦えばもっと手強いなと言う印象を強く受けている。
「じゃあちょっとお前さんや。俺に付き合って貰おうか。今後長い付き合いになるだろうな。」
やっとここに来て俺とモフモフとの触れ合いが始まる。