攻略!悪魔王編!「招かれざる客」
俺とミャウちゃんの入場券を買って入り口へと向かう。ミャウちゃんは認識阻害のかかった仮面をつけているのでプレイヤーに顏はバレないだろう。
因みに、このゲーム内通貨はちゃんと俺たちも持っている。ウチで作ったポーションや武器防具などを部下たちがあちこちの街に秘かに出向いて売却したりして結構な額を稼いでいたりする。
「・・・御来園・・・真に、あ、あ、あ、有難うございます・・・」
どうやらこの場所に魔王が来るなんて思っても見なかったんだろう。ここはプレイヤーが経営する場所らしく、どうにもスタッフも全員がプレイヤーらしい。
俺とミャウちゃんが中へと入る事を拒否する様な事は無かったが、終始引きつった顔つきでいた。
俺も魔族、魔王がこのチケットを買えた事がちょっと驚きだった。自動券売機はプレイヤーにしか反応しないかもな?とその可能性を少しだけ考えたからだ。
だけどこうして購入できてしまった物はしょうがないのである。スタッフもどうやら俺たちが入場券を持っている事で入園を拒否もできないと言った感じである。
俺たちが中へと入った後はその対応してくれたスタッフは「一大事だ!」と叫んで何処かに連絡を入れていた様ではあったが。
「あー、想定外だよなあ。ここに魔族が来ちゃいけないとか、入れないとか言ったルールは作っていなかったんだろうし?それにチケット買ってちゃんと正規に入園してるからなぁ。文句も言えないよな。ここの責任者が後で俺たちの所に来るかもしれないけど、ミャウちゃんは大人しくしていてね?」
「御意に。」
「それにしても、何だか魔物たちが俺から少しでも離れようとしている?怯えてる?何で?」
「ソレは魔王様が放つ魔力の威圧が原因かと。」
「えぇ・・・ソレはもっと早く知りたかった・・・と言っても俺がソレを聞こうとしなかったんだけど。あー、じゃあ魔力操作でもっと内部に魔力を集めて外に出ない様にしていたら普通にフィールドで魔物と出会ってたのか?」
園内を歩きながら俺は魔力を自分のヘソの位置に集まる様に意識をして見る。外に漏れださない様にぎゅっと集めて圧力を上げる感じで。
そうすると幾らかは檻に入れられている魔物たちはホッとした様子を見せる様になった。どうやら制御は成功したようだった。思う通りに行った事にちょっとだけ嬉しい。
まあ俺の姿をその目に入れるとギョッとしたような反応をしてくるのだが。魔物なのにそう言った驚きが分かり易いのは何故なのだろうか?
ちょっと変わった動物園、そんな感じの園内はどこもかしこもプレイヤーで賑わったりしているのだが、俺が側に来るとやはりプレイヤーもギョッとした目で俺たちを見てくる。
中には臨戦態勢に直ぐに入って警戒最大と言った感じでこちらを睨んでくるプレイヤーも居たのだが、俺はそれらを無視して魔物たちの姿をよく観察した。
「どれもコレもどうやらテイムされてるのか?スタッフがプレイヤーにどうやら魔物の説明をしてるらしいな?」
そのスタッフは揃いの制服を着ていてどうやら魔物の購入に関してプレイヤーから受けた質問に丁寧に答えている様だった。
そしてそんなスタッフも俺を見るとギョッとした目でこちらを見てくる。そして大抵は固まってプレイヤーへの説明が止まっていた。
「歓迎されてないねぇ。まあ、当たり前だし、俺がいけないんだけど。」
「魔王様に向かって不躾な目を向けてくる者たちを全て抹殺しますか?」
「ミャウちゃん、駄目だよ怖い事言っちゃ?俺はちゃんとプレイヤーとは敵対しないと言ったでしょ?まあ、襲い掛かられたら返り討ちにはするけどさ、正当防衛の為に。」
そんな会話をしながらミャウちゃんと動物園デートな感じだ。物騒な会話内容である。
こうして様々な魔物が展示されているこの場所は普通の動物園とは全く別、異質な場所ではあるが。
定番の「ウルフ系」「ホース系」「ラビット系」「バード系」などが多いだろうか?そう言った系統の魔物がどうやら基本的に良くプレイヤーに売れている様に見えた。
此処は購入も可能で、プレイヤーは買った魔物を直ぐにこの場でテイムして連れて行く事が可能なようだった。
中には特殊系と言えるだろう魔物も見受けられた。それが「スライム系」である。
どうにもその「ぷるるん柔らか」な感触に魅入られた、虜になったプレイヤーはその「スライム体験コーナー」で蕩けた顔になってスライムと触れあっている。
鼠、蝙蝠、蜥蜴、羊、鹿、熊、虎、ライオン、豹、サイ、カバ、バッファロー、チーター、猿、蛇、リス、ペンギン、アザラシ、ラクダ、ダチョウ、コアラ、蛙、象まで居る。ありとあらゆる「魔物」がここに居るようで、奥に行けば行くほどに様々な種類との出会いがある。
広い、そして飽きさせない。これだけの魔物の管理をしているこの「モンスター動物園」は異常とも言えた。
「どうなってるんだろ?まさかスタッフが稼いだ金を注ぎ込んで?いや、経営とは言えないソレ。あ、でもここはゲームの中だし?何でもアリか。」
そんな納得をした所で俺に声を掛けてくる者が現れた。
「この度は我が園に御来園頂き、非常に光栄で御座います魔王様。どうですかな?楽しんで頂けておりますでしょうか?」
魔王様、などと様付けしてきたので「え?ここって魔族が経営してるの?」と俺は驚いたのだが。そこには一人のプレイヤーが居るばかり。
どうやらそのプレイヤーは腕章を付けていたのでソレをよくよく見ればそこには「園長」と書かれていた。