攻略!悪魔王編!「模擬戦後、感想」
その後もボッズと模擬戦は続けたが、終始ボッズが押せ押せで僕は守勢にさせられ続けた。
そのボッズのラッシュの合間を狙って一撃、隙が見えたら一撃と言った感じの反撃をするだけで僕は精一杯だった。
そう言った攻撃でさえボッズに軽く躱されるのだから増々僕は「ムリゲー」をこの身で実感した。
渾身の一撃でさえ「おっとあぶねえ」の一言で難無く躱されたと言った感じだ。コレが無理ゲーで無くて何が無理ゲーなのか?
「おう!これくらいで良いか!いやー結構本気でやってたんだがなあ?マトモな一撃の当たったのが最初のアレだけになっちまったのはちょっと悔しいぜ。」
模擬戦は終了した。ボッズのその感想がこれである。確かに僕はこのボッズの攻撃に当たってはいけないと必死になって避け続けた。
避けるだけじゃ無くて受け流したり、逸らしたりと忙しかった。
受け流す時もヤバい。タイミングがちょっとでもズレたりしたら初撃に腹に向けられて放たれたあの「衝撃」をまたモロに食らうのだ。
ちょっと流しが甘くなった時なんて体勢が大きく崩れてしまってヤバかったのだ。
直撃とは言わないまでもその「受け流し」は瞬間的に相手の攻撃をしっかりと「受け」る。だからその受けたボッズの一撃から衝撃はやはり僕を襲ってくる訳で。
それに何とか耐えると言った具合で粘りに粘ってまともな一撃を食らわない様にするのはハッキリ言って拷問レベルだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、もう動きたくない。今日はもう駄目だ。第二悪魔の所に向かうのは明日にしよう。」
模擬戦を結構長い時間やっていた。ボッズが満足するまでと言う条件でこの模擬戦は開始されたのだが。
「やり過ぎよボッズ。ケンジが疲労困憊じゃない。貴方の我儘に付き合ってくれたケンジにお礼の言葉も無いの?」
ジト目でマイウエルがボッズを睨む。ボッズはコレに「がッはっは!」と笑って言う。
「おう!ケンジ!ありがとな!楽しかったぜ!またやろうや!ケンジが今よりももっと強くなった時に「力試しがしたい」ってなったらいつでも俺が相手になってやるぜ!と言うか、絶対にやるぞ!そん時はな!」
ボッズはまた僕との模擬戦を求めて来た。僕のレベルがもっと上がった時にはもっと良い戦いとやらができるようになっているだろうか?
「あはははは・・・まあ、その時にはお手柔らかに頼むよ。」
僕にはこれくらいしか言える言葉が無い。これを聞いてボッズは「また明日な!」と言って訓練場を去っていく。コレに僕は。
「また明日模擬戦、って事じゃ無いよな?第二悪魔の所に向かうって事を分かって言ってるんだよな?」
ボッズが自由人?過ぎてどう対処したら良いかまだ掴めない。
「ぶもー、ボッズはアレでいて別に話が通じないって奴じゃ無いから大丈夫だべ。あの狭い洞窟内でならボッズも猪突猛進な動きに制限が付くだろうから丁度良いくらいになると思うべな。」
マルスがそんな風に言って僕の不安が少しでも減る様にと気を使った言葉を掛けて来てくれる。
「まあ、大丈夫かな?アレでいてそこまで馬鹿じゃないしね。とは言え、ちょっと処じゃ無く自分勝手な部分が多いけど。」
そう言ってマイウエルも苦笑い。マイウエルもマルスも「アレ」と言う言葉を使って何だかもやっとした感じでボッズを表現するが、実力は確かだと太鼓判を押している。
「では私もこれにて失礼いたします。いつでもお声がけいただければ第二悪魔討伐へ同行致しますので。遠慮無く言ってください。」
キリアスが綺麗な一礼を俺へとして訓練場を去っていく。
「あんなに丁寧に接してくれなくても、もっとフランクにしてくれて良いのになあ。」
僕は確かに魔王の客人扱いなのだろうけど、それでも、もう少しだけ砕けた接し方をして貰った方がこちらの気持ちが楽なのだが。
この僕のボヤキに何故かマルスもマイウエルもクスクス笑っている。何処にそんなおかしな部分があったのか分からずに僕は素直にソレを質問した。
「何で?なにかおかしな事を僕言ってた?」
「ケンジが魔王様と同じ事を言うモノだから思わず笑ってしまったべな。」
「そうそう、魔王様もキリアスに度々そう言っていたの。」
コレに僕は「おい魔王」と心の中だけでツッコミを入れた。真面目そうなキリアスに対してそんな言葉は逆にプレッシャーになるだろう。
僕が言うのは別にそこまでおかしな事じゃ無いとは思うが、魔王が言っちゃいけないセリフだコレは。
「キリアスは苦労してるんだなぁ。・・・あ、キリアスの実力ってどうなのか知りたかったのに行っちゃったよ・・・」
もう行ってしまったのでここにまた戻って来いと言うのはちょっと気が引ける。今頃思い出してももう遅い。
そして「実力を見せて」と言わずとも僕の中では魔族は洩れなく全員「無理ゲー」と言いたくなる強さだと言う印象が固まってしまっていた。
なのできっとキリアスも強いのだろうと勝手に思ってその日はその後ログアウトして現実の方で休息を取った。