攻略!悪魔王編!「水も滴る」
僕は今ダンジョンに来ている。第二悪魔が居るというダンジョンだ。
此処は地下水脈。最下層には巨大な地底湖が存在する場所で。以前に始まりの街の側にあったのとは違う場所のダンジョンだ。
「びっしょ濡れ・・・・この張り付く感覚まで再現しないでも良かったんじゃないかなぁ・・・」
僕の装備は水浸し。敵の雑魚悪魔の攻撃が水系統に統一されていて凄く面倒だ。
「雷系統の魔法は使えないわね。こちらに感電したらいけないし。だけど炎の魔法も通用しずらいのよね。」
マイウエルは魔力でバリアを張っていて水には濡れていない。だから雑魚悪魔へと一番ダメージを叩き出す雷の魔法を撃っても良いモノだが。
だけどもここでソレを放てば僕がそれに感電しかねない。ついでに炎も悪魔たちに水魔法で相殺されるか、完全に消火されてしまって余り通じない。
これにマイウエルが溜息を漏らしている。有効であろう魔法攻撃が使えず、通用せず。魔法が得意と言えどもこの洞窟ダンジョンの崩落を招く様な大威力の魔法も使えないとあってはマイウエルの受けるストレスはどれだけ高い事か。
マルスもびしょびしょである。けれどもそれ以上にこのダンジョンはマルスの巨体を計算されているかのような通路の狭さであった。
なのでいつものマルスの豪快で繊細な動きはこの狭さに阻害されてイマイチ雑魚悪魔への攻撃行動に移せないでいた。
「ぶもー・・・ここはオラが来ないで他の者たちに来て貰った方が攻略はし易かったベ。何でケンジは事前情報を持っていたのに、オラたちを同行させたんだべ?」
こうして僕は二人の代わりにより一層に動き回って雑魚たちと戦い、これ程にびしょ濡れになってしまっているのである。
「んー?そうだなぁ。僕は今やっと二人との冒険に慣れて来た所だから、そうコロコロとメンバーを換える気は無かったって言うのが正直な所かな。」
魔王には好き放題に連れて行きたい者が居たら自由に入れ替えて連れて行っても良いと言われている。
だけども僕はこの二人との連携にやっと慣れて来たと言った所があるので今更にメンバー変更をしようなどとは思えなかった。
「それでもここは接近戦が得意で狭い通路でも機動力を無くさない者に変えるべきだったわ。曲がりくねってる通路が視線を塞いで魔法を撃つのにも敵を視認できていない事には反応も大きく遅れてフォローが間に合わなくなる可能性が大きいもの。」
マイウエルが無謀だと僕へと注意をする。けどそれでも僕はこのメンバーで最後まで行きたいと思っている。
「まあ縛りプレイだと思って対処するよ。二人は僕が危ない時にだけ助けてくれる形にしてくれれば良いよ今回は。僕の責任だしね、二人が動き辛くて不快なのはさ。」
一応はびしょ濡れではあるが、ダメージはそんなに多く食らってはいない。HPにはまだ大幅に余裕がある。
じゃあ何故これ程にまで全身が濡れているのかと言うと。
(飛んでくる魔法を盾で受けたり剣で切ったりできるのはまあ、いい。けどさー?その後に形を保てなくなった「水魔法」が飛び散って体に掛かってくるのは、どうなの?)
ソレとフィールドギミックなどもある。地下水脈の洞窟なのでそこら中で水がバシャバシャいきなり溢れてくると言った感じなのだ。
コレのせいもあって僕もマルスも全身びしょ濡れ。何ら変哲も無い壁や床、天井などのひび割れた部分から突然に勢い良く水が「ブッシャー!」である。避ける暇も無い。
これで洞窟内を進む速度も相当に落ちていた。
「水系統のお守りは手に入れて無いしなぁ。それに、初見なのにガチガチに対処をしてから突入とか?面白みが大分減るよな。でもそう言った楽しみ方もあるけどさー。」
完全対応した準備で一気に突き進むと言う爽快感も否定はしない。
けれども僕は今このゲームを楽しもうとしているのだ。一度くらいはこう言った初見プレイをしたいと思ってしまう。
(それでも事前に掲示板で情報は収集したけどね。だけどここまでその情報を上回るんじゃあ、なぁ?ここまで濡れネズミにさせられるとは思っても見なかったさ)
僕は心の中だけでそんな事を呟きつつもダンジョンを進んで行った。