攻略!悪魔王編!「少数派が頑張ったで賞」
ミャウちゃんは俺の言葉に直ぐに動いた。糸使いであるミャウちゃんはその自らの操る糸に魔力を通す。
そして今にもプレイヤーをその拳で消し飛ばそうとする第六悪魔の腕へと絡めた。
次の瞬間には重量物が地面へと衝突する音が響く。これは第六悪魔の腕をミャウちゃんの攻撃で切り落としたと言う事である。
「魔王様、どうやら私の糸では一撃入れるたびに奴の持つ熱で糸が切られてしまうようです。魔力で覆っているのにも関わらず耐えられませんでした。」
「抵抗感的にどう?瞬間的に糸に熱量を加えて焼き切ってるって感じ?それとも普通に巻き付けるだけでも焼かれちゃう?」
「手応えとしては一瞬だけ耐えたと言った感じでした。力を加えた後に許容量を超えたようです。」
「あー、じゃあ刀で斬りたかったけど、止めておいた方が良いな。耐久力が減るとか、もしくは刃が欠けたとかりすると嫌だしな。」
俺は武器を携えて来ていた。例のヤヴァい奴である。俺はこの刀を未だにマトモに戦闘では使っていない。
なのでこの悪魔王編から慣らしていきたいなと思っていたのだが。
ミャウちゃんのこの反応で一旦止めておく判断をする。
「・・・あ、今の内に逃げたかったらさっさと行った方が良いよ?こいつが他にどんな攻撃を隠しているか分からないし。広範囲を巻き込む攻撃でもしてこられても君たちを助ける義理は無いから巻き込まれたら自業自得と言う事で。」
俺とミャウちゃんが助ける様な形で戦闘に入って来たのでプレイヤーたちは唖然として立ち尽くしていた。
それに俺が声を掛けて「逃げたきゃ逃げろ」と声を掛けたのだが。
「・・・なぁ?これって悪魔王と魔王は対立してるって事か?ってか?直接魔王がとか有り得るか?」
「どう考えてもそうじゃね?だって魔王が悪魔王と手を組んでたらこうはなって無いだろうし?」
「もしかして・・・この第六悪魔に魔王が手古摺ったりして追い詰められたりとかしたら、俺たちが横取りで魔王に止めを刺しちゃえたりしないだろうか?」
ひそひそと会話をしてこちらにその内容が漏れ無い様にと小声でプレイヤーたちは話をしている。
しかし悲しいかな。俺もミャウちゃんもこの会話が聞こえてしまっている。
一応ミャウちゃんは認識を阻害する仮面をつけている。しかし見事にその雰囲気から顔が般若へと変貌している事がアリアリと予想できる。
「魔王様・・・先ずはこやつらから地獄を見せてやりましょう・・・」
「あー、控えて控えてミャウちゃん。こいつらが余計な手出しをしてきた時で良いからそれは。」
さて、俺がこのプレイヤーたちに真っ先に魔王だとバレたのにはちょっとした事情がある。
ここ最近になって俺の姿が載っている画像や動画が掲示板に流れるようになったのだ。
さてソレは誰が流しているのかと言えば、城へと辿り着く事ができた一部のプレイヤーである。
悪魔王編が始まって殆ど全てと言っても良いプレイヤーがそちらに「遊び」をシフトしたのだが。
それでも中には少数派と言われる魔王編攻略を諦めないパーティも存在していた。
そう言ったプレイヤーが俺の城の門の前まで辿り着く事に何組か成功していた。
今や魔王の城の周辺の大森林は巨大な自然要塞である。マルスを始めそこには「ハンター」と呼ばれる組織を作って警邏をさせていたし、森に入るその前には防衛の為の防壁まであって、しかもそこには守備隊が配置されている。
それらプレイヤーが「無理ゲー」と言う難関を掻い潜って仲間を失いながらも門の前へと辿り着くプレイヤーたちが存在したのだ。
どうやらそう言った無理だと言われる事を超える事に快感を覚えるタイプがそう言った冒険をしていたと後に知った。
しかし辿り着いたとてそこには褒美など無い。当然その門は開けられるはずが無いのでそれ以上を進む事ができないのだから。
そう、未だにこの門を開ける為のアイテムをプレイヤーは全て集める事ができていないのだからしょうがないのではあるが。
まあそれも今となっては必要無くなってしまったが。封印が完全解除となって門は開け放たれているので。
そうした執念を燃やすプレイヤーが居る事を知って「頑張ったで賞」をその彼らへと俺から勝手に送る事に決めたのである。
門の前まで辿り着いた彼らを内部へと案内したのだ。案内役で門を開き招き入れる役はミャウちゃんにして貰っていた。
その頃はまだ発展途上ではあったが、俺が育てている「街」を見せびらかしたくてそうした思い付きを始めたと言うのもある。
その中に俺の姿をスクショしても良い権利をプレゼントである。城の中もある程度の場所をスクショ許可したりもした。
最後の最後で俺との戦闘をして貰うと言うアトラクションも用意したりもした。まあこれはこちらのポイント稼ぎに付き合って貰う的な面が非常に大きい。
これに死に戻りでレベルが下がるのは流石にと思ってその代価に見合った鉱石などを持たせると言った事もしている。
こうした事をしていたので俺の姿はもう結構なプレイヤーが良く知っている状態だと思う。
「と言う訳で。今度は俺が一発かますから、ちょっとミャウちゃんは安全な場所まで下がっていてくれる?さてと、それじゃあ・・・腕に魔力を集めてっと!」