攻略!悪魔王編!「急所!」
そこは開けた場所だった。この森の一角にこんな場所があったなどと言う情報は掲示板には一切無かった。
恐らくはこの森に散布されていた「迷いの魔力」と言うモノのせいだと思われる。
そしてそれらをバラ撒いていた雑魚悪魔たちは、殲滅したと言って良い程の数を僕らが倒している。
そう、そのおかげで隠されていたこの場を見つける事ができたのだと言って良い。
それとマルスの索敵能力。と言うか、マルスは「勘だべ」などとも言っていたので偶然も多分に含まれているだろうが。
さて、目の前には黒い球体が存在している。そこから触手がニョキニョキと十本ほど生えて来た。
「来るべ!」
そのマルスの叫びに僕はマルスの背後から飛び出す。前方右斜めへと。
ソレは触手が十本すべてマルスに向けて迫ってきていたから。
(この数が全てだとしたらマルスが触手を惹き付けている間に僕が球体に攻撃を仕掛ける)
一応の保険としてまだまだ触手が増える可能性も視野に入れる。
そうなると僕の接近に危機を感じた球体が触手を増やして迎撃してくると言った事になっても対応できる。
心構えができているか、そうで無いかで反応速度は大幅に変わる。
球体の側面に周り込めた僕はそこで一気に踏み込んで剣を振りかぶる。
思いきり振り切ったその手応えがおかしい事に気づいて即座に僕はバックステップで距離を取った。
「やっぱり十本だけじゃ無いよな。まだまだ増やせるのか?」
僕の一撃を受け止めたのは新たに発生した触手。警戒を怠らずにマルスの方を見ると。
「ぶも?ぶも?ぶも?・・・この程度なら後十本追加でも防ぎきれるべな。ケンジ、そっちは大丈夫だべか?」
余裕だった。もの凄く余裕だった。マルスは自身の武器の大斧をこれでもかと器用に振り回して触手を時には防ぎ、時には切り裂き、時には叩き付けている。
もの凄くクルックルと細かく動き続けるその斧捌き。本当にこいつはどうやったらこんな事ができる様になるんだ?と盛大なツッコミを入れたい。
しかもその際の動きは何だか舞を踊っている様にも見える程に華麗だった。そのマルスの動きは洗練さと美しさが同居している。
「こっちは心配無い、と言いたい所だけど、後どれだけこっちに触手が増えて迫って来るかがカギかな?」
恐らくは三本来たらソレを避けて防いで、それだけで僕は精一杯になってしまうだろう。
僕がそんな感じなのにマルスは今も十本のランダムで動く触手の攻撃を楽々捌いている。
ソレがもう十本増えても余裕だと本人が宣言しているのだ。全くもって信じられない。
「じゃあもうちょっとこの球体の手札を引き出すのに頑張ってみますか!」
きっとこの球体が第一悪魔の「コア」なのだろう。それ以外には考えられない。ならばここは踏ん張りどころだ。
コレを破壊した後にそのまま次に第一悪魔を倒せば復活を阻止できる。ちゃんと「討伐」となるだろう。
「でりゃ!・・・アイスニードル!」
先程よりももっと強く踏み込んで接近速度を上げた。そしてそのまま剣で「突き」を放つ。
コレを球体はまたしても触手を増やして対抗して弾いて来た。
攻撃が失敗した僕はまたもやバックステップで後ろに下がりながらも魔法を放って牽制も忘れない。
鋭い氷の針が真っすぐに球体に向かう。しかしやはりこれも簡単に触手に打ち落された。
「ぶも?ケンジ、もっともっとガンガン攻めて見て欲しいんだべ。何だかこっちの触手の長さがちょっとだけ短くなってるんだべ。」
コレに僕は「ん?」と思った。どうやら触手の長さは「一定」しか出せないらしい。
数は幾らでも増やせるが、しかしその長さはと言うとその分だけ短くさせないとならないのだろう。
この球体の「制限」が見えた。ならばもう少しだけ僕が頑張ればマルスが球体への接近をし易くなる。
そうすれば球体の意識が僕とマルスに大きく集中してマイウエルの魔法もグッと通しやすくなるはずだ。
と言うか、今の所マイウエルは魔法の準備も、詠唱もしていない。
どうやら球体への止めを刺す為の機を窺っている様な感じだ。じっと戦況を窺っているように見える。
だけどそんな僕の感想は全くの的外れで。
「き、き、き・・・気持ち悪いィイイイイィ!」
と叫んだマイウエルは僕の事などお構いなしと言った感じでマルスの身体の倍はある「炎の球」を生成して球体へと放っていた。