攻略!悪魔王編!「複雑?単純?」
それにしても魔王と悪魔王は別々であると、しっかりと区切ってあるのだと思っていた僕。
それがこうも「魔王の配下」が悪魔王編にこれほどまで食い込む事ができるとは思っても見ていなかった。
と言うか寧ろこんな事を確信を持って思いつけるプレイヤーが居たとしたらそれはそれで化物だな、って思う所だ。
「ぶもー。魔王様は確か前に言ってたんだべ。ちょっとだけその話をオラも聞いていたんだべが。どうやら魔王様は悪魔王の配下と直接顔を合わせをしていたらしいんだべ。」
「その時に敵対の意志をちゃんと口に出されたらしいのよね。共闘の持ちかけを蹴ったそうよ。」
僕の全く知らない所でそう言ったやり取りがあったらしい。それこそソレって多分運営も想定していない出来事では無かろうか?と思う。
「共闘の提案を受け入れていたらきっとプレイヤーは今も数字付き悪魔にすら挑めない状況だったと思うね、いや、これ、ホントに。」
僕は率直な感想を述べる。きっとこの森にすら侵入ができなかっただろうその時は。
いや寧ろ、森に入り込めたとしてだ、この雑魚悪魔の物量と魔族たちの「無理ゲー」と呼ばれる強さが合わさったら?さぞや酷い結果が待ち受けているのが確定となるだろう。
何せプレイヤーたちのその多くが「勝てない」と太鼓判を押す魔王軍である。それがこの様に面倒な方法での突破条件を付ける悪魔王編で共闘などされれば目も当てられない状況に陥っていた事だろう。
「魔王が断ってくれて良かったよ。と言うか、プレイヤーと魔王と悪魔王と、これって三つ巴?」
三角情勢?三国成立?その事にこの場でようやっと気付いた。
「しかもまさかプレイヤーである僕と魔族が協力してその悪魔王をぶっ倒そうなんて動き出してるとか・・・信じられないだろうな誰だって。」
こうして魔族と一緒に居る僕には魔物が寄って来ない。一匹も。この森へと向かう道中、一切魔物は近づいて来なかった。
と言うか、この二人の魔族が強過ぎてビビッて近づいて来ないと言った形であるのだが。主にマルスの威容が原因だ。
そう、今僕は自身のレベルを上げる為にはこの悪魔たちを倒すしか選択肢が無いのだ。
そもそもダンジョンと呼ばれる場所へと入ったとしても、この二人が一緒に僕と居る限りボス部屋に魔物が、そのダンジョンの主が出てこないのである。
だから自分が強くなるためにはこうして今頃に悪魔王編に参入するしかない状態である。
僕があの宴の時に自らが口にした「願い」。それが悪魔王編の攻略へとシフトする選択肢しか残さなかった。
「自分の口から洩れた正直な気持ちだったし、しょうがないと言えばしょうがないんだけどな?もう今は前に進むしかない訳だし?」
僕のボヤキをマイウエルもマルスも黙って聞いてくれている。
「良し!行こう!休憩は充分。と言うか、動き続けて無いとこうして悩みとボヤキで脚が止まっちゃうから何も考えずに動こう!」
「そうだべな。どうにもケンジはそうしている方が良さそうだべ。精神が不安定だべな。」
「戦闘中はずっと何だか楽しそうなのにね。ふふふ、おかしい。立ち止まったらそうやって直ぐに悩んで。コロコロと表情が変わるから見ていて飽きないかな?」
そうやって二人に揶揄われる。だけど何だか別に嫌な気がしない。
これにグッと溜息が漏れそうな所を我慢して第一悪魔討伐への一歩を僕は踏み出す。
「さて、ゲブガルから受けた情報を頼りに「弱点」を見つけに行こう。確か魔王の城の古い書庫に在った文献によれば近場に隠してあるんだって話だったよな。」
雑魚魔物は充分に狩り尽くしたと言えるこの森は安全で歩きやすくなった。
マルスの索敵にも周囲に敵の気配は無く、そしてどうやら森の中に充満していた「惑わせの魔力」も今は全く消失しているとマルスは言っている。
「じゃあオラについて来てくれるだべか?こっちの方角から何だか嫌な空気が流れて来ているからきっとそっちに目的の物があると思うべ。勘だけど。」
マルスはその巨体なのに歩く時に足音一つ、振動一つ起こさないのは何の冗談だ?と思っている僕の事など気にもしないでスーッと森の奥へと進み始めた。




