攻略!悪魔王編!「雑魚悪魔は殲滅されてしまった!」
僕らは順調に次々にこちらに群がる雑魚悪魔たちを屠っていく。と言うか、マルスの一撃で起きた轟音がどうにも敵を誘き寄せたと言える様で。
「キリが無い・・・一応は対応できない程じゃ無いけど、鬱陶しいな・・・」
僕はボヤいた。コレに答えるのはマイウエル。
「でもこれだけ来てるのを全て片付ければもう森の中は安全になるんじゃないかしら?」
淡々と魔法を放って迫り来る悪魔たちを消滅させていくマイウエルは正直に言って恐ろしい。
怖ろしいのはついでに言うとマルスもだ。大振りにせずに小振りではあるが大斧をふるい続けているのだが、その姿に疲れは微塵も無い。
「そうだべなー。恐らく後二分ぐらいで今の状況も終わりそうだべ。ならここは踏ん張り所だべな!」
踏ん張り所、それは僕の今の現状だ。二人のその強さは充分に解っていた事だ。
そしてその強さから来る余裕で僕の観察をしている。その観察からギリギリ限界まで捌ける数の悪魔を僕の方へと器用に二人は誘導して戦闘を行っているのである。
ソレは何故か?
「幾ら経験値が沢山必要だからって!これはスパルタ過ぎないかな!」
僕は自分の事情を二人に、そして魔王に話している。
あの宴の後に僕と魔王は話し合う場が設けられて二人きりで自分たちの事情を話し合ったのだ。
僕は「魔王」が本当に中身が「プレイヤー」なのか疑いつつ会話をしていたのだが、話すにつれて本当に彼は望んで魔王になった訳じゃ無い事を知って行った。
そして魔王の方も僕が「無職」である事と、そして望んでソレを得た訳じゃ無い事をよく理解してくれた。
そしてお互いにランダムでジョブを選ぼうとチャレンジしている事で意気投合までしていた。
そこで僕は師匠を得ていてその修行によりレベルを上げる為の必要経験値の値が増えた事を伝えている。
「二分って!結構!長いと!思うんだ!」
流れ作業の様に迫り来る悪魔どもを片っ端から薙いでいく。休んでいる暇など無い、息をゆっくりと吐いている暇すら無い。
短く吸っては剣を振る際に短く吐く。コレを敵が迫っている間に素早く熟す。無限とも勘違いしそうになった時間をコレで繰り返し埋めて行く。
時には魔法を牽制や止めなどに放って雑魚悪魔を蹴散らす。それこそ全力全開で。そうで無いと僕が死ぬ。
師匠から受けていた稽古をもっと激しくしたような戦闘に僕の体力と精神は絶賛がりがり削れている。
「お、終わった・・・ぐはぁ~。」
僕はピタリと止まった襲撃に神経を尖らせて黙った後に良く周囲を観察する。追加で悪魔が来ない事を確認した。
その後にやっと終わった事を実感して大きな深呼吸をして地面へとへたり込んだ。
「よく頑張ったんだべ。それにしてもその剣、中々の業物だべな。良いモノを持ってるだべ。感心感心。」
マルスは僕のメイン武器である武器屋から貰ったこの剣を褒める。
確かにこの剣は凄い。刃毀れが未だに起きていない。武器の耐久率と言ったモノも減ったようには感じない。
そうならない様にして僕も意識して振ってはいるけれど。それでも欠片も刃毀れが無いのはどう言う事だろうかと不思議に思っている。
魔王の所のドワーフにメンテナンスで見て貰っているのだが。その時のドワーフの感想が「良い剣だ。大事にしろ」としか言われなかった。
「剣の立ち回りだけでなくて魔法も使っていたようだけれど。器用なんだね。どっちも使うプレイヤーはそんなに多くは見ないのに。」
マイウエルはそう言って僕の戦闘スタイルに言及する。
まあ確かに僕は専用のジョブに就けていないので特化したような戦闘はできない。寧ろ何でも使って戦闘を熟さないとならないと言える。
一極集中の戦闘スタイルなら魔法でも、武器ででも、片方を極めればそれだけで一定以上の強さを得られる。
でも僕は何でもできて、何にもできないと言った器用貧乏だ。それが何となく自分でも分かっている。
とはいえ、今では師匠に鍛えられた件があって将来はレベルが上がれば上がる程に「オールラウンダー」になれる可能性はある。
けれどもそれが大器晩成、ハードルが高い、壁が厚いと言わざるを得ない。
ソレが為せるまでにこれ程のハードな戦闘をずっと繰り返さねば到底、到達は無理という状況なのだから途中で心が折れてもおかしくは無い。
「二人が居てくれるだけで立ち回りがし易いよ、有難う・・・って言えれば良いんだけど。出来ればもうちょっと優しくしてくれると嬉しいね、ハハハ・・・」
乾いた笑いが最後に僕の口から洩れる。コレを聞いた二人はしきりに笑って上機嫌になった。