何で俺だけ「早上がり」
俺の勤めている会社は自分のノルマがいち早く終わらせられれば帰宅して良い事になっている。
当然そうなれば月のノルマが決まっていて、それが満たされていなければ当然減給対象だ。
俺はそれを最低限のラインより少し上を維持して自分の生活を維持している。当然、それは自分の時間を確保優先だからであり、それは主にゲームに注ぎ込まれるのだ。
そして俺は今日のやっておかねばならない仕事分を充分に超えた状態で仕事を早上がりするのである。
定時間には丁度一時間前である。コレに文句をつけてくるのは俺の一つ先輩だ。
「おい、お前さ。能力があるんなら上を目指そうって気にならねえの?随分と早上がりするけど、もうちょっとだけ残って行けよ。」
「お疲れ様です先輩。では、これにて失礼しますね。じゃ、お先に失礼します。」
俺はそんな雑音を無視してスパッと自分の部屋へと戻って来る。会社から自宅へは一瞬だ。本当に在宅しながらにして出社とは便利である。
出社用のヘッドギアを外して仮想空間から出てくれば一通り身体全身のコリを軽くほぐしてお茶を飲む。そしてトイレに行って直ぐに俺はゲーミングソファに座る。
「おー、ミャウちゃんが出張で助っ人に行ってるからここはガランドウだな。誰も居ないよな。当たり前だ。」
俺は別にログインしないでも良かった。だがしかしやはりもう今はちゃんとこの魔王という「ゲーム」をする気をちゃんと持っている。
ならばと、ゲーマーならしっかりとこうして一日1ログインはしっかりと熟すのが当然だろう。
「とまあ本当にやる事無いんだけどな。ポイントポチポチ連打するだけだし?」
昼からポイントがどれだけ増えたのかといった所も細かくチェックだ。すると。
「1249!?あれから増え方おかしくね?だって昼は900台だったじゃん?・・・あ、でも直ぐに突っ込むから良いか。ほんじゃこいつをぶち込んで強化したらミャウちゃんには一旦引き上げて貰うか。」
俺はせっかくミャウちゃんが助っ人に行っているのでそちらの方の四天王を最大まで上げる。
「よし、これで後はもう一方の四天王に余り全ツッパ!でストップ!」
最後に余ったポイントを入れた四天王はまだ最大にはなっていないが、後々に入って来るポイントを順次投入していれば大丈夫だろう。
コレで大分先まで容易に四天王がプレイヤーに倒される事は無いと判断できる状態になった。一安心だ。
そして俺はコレに満足して一度ミャウちゃんに帰ってくるようにメッセージを飛ばす。
コレは魔王の配下には自由に繋げられるもので、俺はムムムと軽く唸ってミャウちゃんに「帰ってこーい」と念じる。
するとたったの5分ほどでミャウちゃんがこの玉座の間に入ってきた。
「あ、ミャウちゃん。ご苦労様でしたー。おかげでポイントガッポリで。ミャウちゃんが助っ人に入った方の四天王を最大まで強化できたから。ありがとうねぇ~。」
俺はこんな厳つい魔王の顔でそんな軽い感じでミャウちゃんを労う言葉を掛ける。するとミャウちゃんはもの凄く感動した様子で畏まる。
「は!魔王様の御言葉、ありがとうございます。我が身、我が心は全て魔王様のモノ。こうしてお褒めの御言葉を頂けるのは私にとって至上の喜びです!」
軽く身震いしながらそう言うミャウちゃん。俺はコレにちょっと引く。いくらそう言った「キャラ」であってもだ。
いくら仮想現実ではあってもこうした反応を返されると若干引く所はある。魔王として遊ぶ気になった今の俺には特に。
これまではこの魔王と言う「ジョブ」にかんして「どないせいっちゅうんじゃ?」と言った部分が大きかったのでそっちに気を取られてこのミャウちゃんというキャラには意識はそこまで割いていなかったが。
こうして余裕が少々出てきて来ると、どうにも傅かれると言う事に対して抵抗感が少しづつ湧き出てくる。
なのでそれを避けるためにここで俺は話題を変えてみる事にした。
「そう言えばさ、ミャウちゃんが助っ人に入った方の四天王の特徴を教えてくれない?ちゃんとそこら辺を知る前にポイントとか突っ込むべきなんだけどね、本当は。」




