何で俺だけ「伏兵あらわる」
そうして地獄が暫く続いて魔物も、プレイヤーの数も減って来た頃、ようやっと乱戦が治まって来る。
「よし!魔法攻撃が通せるだけの態勢が整った!合図を送ったら前線組!退避!」
指揮を執っているプレイヤーの声が戦場にこだまする。けれども次には魔法職の攻撃が放たれるはずのそのタイミングに遠吠えが重なった。
そして次には「ぎゃ!」と言った短い叫び声が魔法使いの集団の中から上がり始める。
「馬鹿野郎!ウルフだ!お前ら迎撃だ!・・・素早すぎる!くっそぉ!狙いが!定まらねえ!」
ここは草原だ。魔物としてはさしてそこまで強くないウルフが最も輝く平地である。その脚の素早さで。
そしてなぜ今までこのウルフにプレイヤーの意識が行ってなかったのかと言えば、所々にある背の高い草の密集した場所を移動しながらプレイヤーの集団の「外側」を削るように攻撃していたから。
プレイヤーの「群れ」の中心に居る者たちにはいきなりウルフが現れたと錯覚してしまっているのだ。外側の戦況が見る事ができていなかった、観察できていなかったからだ。
当然この被害を受けているのは魔法職、弓使いのプレイヤーたちである。彼らは乱戦の中に入る事ができずに後方支援でチマチマと攻撃と補助と言う行動を取っていたので、前方にしか意識を向けていられなかった。周囲の警戒を怠っていた。まあ初っ端の予想外で混乱していたからそんな余裕も無かったと言うのもあるだろう。
走り続けていたウルフの行動など分かるはずも無い。このウルフもまたプレイヤーたちを殲滅すると言う形を取るために、このタイミングで遠距離攻撃型のプレイヤーたちを襲ったのだ。絶好のタイミングである。
こうして前線に飛ぶはずだった攻撃支援は中断させられてプレイヤーは増々追い込まれていく。
しかしプレイヤーの意地がここで発揮された。前線はプレイヤーたちの踏ん張りで持ち堪えたばかりか、僅かずつだけども押し返しが始まっていた。
魔物の動きのパターンは既に何度も繰り返された事で慣れてきた。オークの突進を受け止めて、止まったオークへと集中攻撃で一気に仕留める。
オーガは周囲を固めて全方位からの一斉攻撃で削り切る事に因って対処。
ホブゴブリンはゴブリンよりは多少強いが、ただそれだけ。各個撃破でプレイヤーたちは魔物へと反撃をし始める。
所詮はプレイヤーが対処できないイベントでは無いのだ。動き方が分かればゲーマーなら直ぐに対処が可能な魔物ばかり。
生き残っているプレイヤーたちは勝利の道筋が見えた気がしている。そう、しているだけ。残念な事にこの対処は初動での出遅れをカバーできるタイミングを逃していた。
ウルフの奇襲によって後衛はほぼ壊滅に近く、中衛は魔物の勢いに詰め寄られて乱戦によって混乱に陥った事で力を発揮できずに多くが失われていた。
前線を張っていた守りを固める役のプレイヤーはもう既に壁役を果たせる状態では無く。そう、大勢は決した。
だが魔物は止まらない。プレイヤーを一人残らず全員駆逐するまで。残るプレイヤーたちは必死の抵抗をして少しでも食い下がるのだが、時間の問題だった。
僅かに押し返していたと思っていた前線は、瀕死のオーガがこじ開けた。プレイヤーたちの包囲に穴を開け、そこからオークが突進でその穴を広げる。
ここからプレイヤーたちの立て直していた体制が一気に瓦解した。そのオークも瀕死状態だったのだが、その突進は止まらずに後衛へと迫る。そのままそこに僅かに残っていた魔法使い、僧侶、弓使いなどを轢き殺して逆転の目をより一層潰していく。
「もう負けで良くね?って言うか、俺って良くこんな状況になるまで生きていられたな?つか、どうしようもねえな。」
「いやー、まさか俺たちの作戦の裏をかかれてたとは思いもよらなかった。」
「あれ?これ、第一波だよな?ここで全滅?・・・ああ、第二波はまた最初からやらせてくれるのか。」
「ならまた魔物は同じ動きしてくるの?休憩時間は一時間あるよな?それで対策考えろって?」
「つか、これ初見殺し?それともたまたま?流石に難易度ヤバゲじゃね?」
「ここで死ぬとなると減る経験値がヤバいんだけど?モンス倒して経験値ガッポガッポイベントじゃ無かったのでござるか?運営さん?」
「コレで死んで減る経験値に見合った分を自分で魔物狩らなきゃいけないとか、チョーハードデスガ?」
「俺さ、レベル二つ上がったんだけど、死んだらコレごっそりと持っていかれるんだろ?だったら最後の一人になってもお祭り楽しんだ方がマシって事じゃん?」
「これを最後の一人にまでとか、お前はベリーハードでドエムに過ぎる。正直、シンドイしか言えん。第二波に期待。勝って大量経験値ウハウハして生き残りたい。」
こうして第一波は幕を閉じた。




