何で俺だけ「地獄は続くよ、まだまだと」
それだけでは無い。魔法攻撃で瀕死である生き残った魔物ですら、その動きは衰えない。そもそも首を飛ばされる、頭を吹き飛ばされるなどと言った「即行動不能」に追い込まれた魔物は動いたりはしないのだが。
そう言った魔物の数が少ないのはやはりプレイヤーの初動が遅れた事が原因だ。最初の魔物の突撃を防げずに横に広がられた事で魔物側の被害が小さくなったためだ。
そしてもう一つ、プレイヤーたちはこの時に思い至らない。魔王の演説の事を。魔王からの演説で魔物の動きには一定の行動指針が出来上がった事を。
そしてこのスタンピードイベントは魔王の復活により魔物が活性化、凶暴化したと言う「中身」の事を失念しているのだ。
この事でより一層プレイヤーたちの被害は広がっていく。互いに仲間を庇い合いながら戦うが、じりじりと魔物に詰められている。
「くっそ!そっちに救援をしに行ってくれ!魔法は迂闊に広範囲のやつ使うなよ!あ!くっそ!早く行ってくれ!向こうが押し込まれてる!瓦解しちまう!後衛の方にあれじゃあ直ぐに流れていくぞ!」
レイド、それは幾つものパーティが組んで「一つになる」システムだ。これをすると仲間となったプレイヤーに攻撃が当たってもダメージがゼロになると言う仕様だ。
しかしコレには限度がある。その限度を超えると一気に魔物が強化されるのだ。それを恐れてプレイヤーたちはその上限を守ってレイドパーティが今回組まれている。
仲間一人が魔物全てを集めておいて、魔物を仲間ごと巻き込み全て一気に叩く、なんて真似は魔物側からすると「ズル」だ。なにせプレイヤーは仲間からのダメージを受け無いのに、こんなやり方をされれば魔物は一方的に蹂躙されてしまう。
なので上限を超える様なレイドを組んでいる場合は魔物側もそれに応じた強さ、それ以上へと強化がされる。
コレに因ってゲブガルの時はプレイヤーは失敗していた。まあ魔王があの周囲にいる魔物強化にポイントを入れていたと言うのも一つあるが。
なので今回、救援をするにしてもレイドを組んでいないパーティへの攻撃は通ってしまう。同士討ちだ。
なので慎重に魔法は選んで使わねばならない。もちろん弓矢での攻撃も慎重にしないといけない。
だが、こんな乱戦に持ち込まれていれば流れ矢が当たる可能性があるので飛び道具を使用するプレイヤーはその自慢の攻撃も使う事ができない。
こう言った理由が重なってドンドンと魔物側のプレイヤーへの蹂躙は続いていく。
オークがその太った巨体の体重で助走を充分に付けて体当たりし、前方のプレイヤーたちを吹き飛ばす。
その開いた道をオーガが進みながら周囲のプレイヤーたちへとその怪力を使って単純に只なぎ倒す。
ホブゴブリンがまだ死亡判定に至らない生き残ったプレイヤーたちに追撃をしていく。
文字通り、殲滅する気だ。魔王からの「演説」に混ざっていた命令をこなそうと魔物たちはそれぞれがそうした一連の連携を取ってプレイヤーたちに容赦無く止めを刺していく。
プレイヤーから反撃される魔物も居るのだが、そんな魔物たちは自らの命など最初から何も考えていない。その攻撃を受けてもひるまずにプレイヤーへと「死なばもろとも」だと言わんばかりに逆襲する。雄たけびを上げながら。
こうして地獄はまだまだ続いていくのだった。




