何で俺だけ「開始早々」
「魔王ヤバくね?何あの顔?めっちゃ厳つすぎワロタ。」
「おいおい、そんな事言ってねーで前見ろや。やべえよあの数。」
「なんかゴブリンが多くね?あ、その中にウルフも混ざってる?」
「数が数だけに最初っから広範囲を止められるスキル使うしかなさげ。まあそれが役目なんだけども。」
「なあ?あれが第一波でいいの?あの先頭集団の後ろにまだ何か居るんじゃないか?」
「まだ余裕じゃね?いきなり俺たちのレベルを上回るモンスを仕掛けてきたりはしないだろ、さすがに。」
「いや、運営がどんなバランスでこのイベ組んでるか全く分からんし、油断してちゃダメだろ。」
「って言うか、演説、あれ聞いてお前らなんて思った?あれがラスボスだろ?一応ある(笑)ストーリー上は。」
「んあ?魔王だろ?それが?って言うか、何アレ?ゴブリンの癖に足早過ぎだろ。接近してくる速度がオカシイ。」
「魔王の演説カッコ良すぎワロタ。マオウマオウしてて何かオモロかったよ。」
「邪悪さ加減が程よく滲んでて中●病っぽいのがいい塩梅。」
「お前ら!最初の衝突が来るぞ!構えろ!なるべく集めて一網打尽だ!・・・は?」
最初のゴブリンたちは壁となっているプレイヤーたちに突撃をしては来ていたが、急激に左右へと横展開で広がっていった。
この動きに驚いたプレイヤーたち。こうしたイベントでは魔物の敵モブは何の考え無しに正面衝突してくると「思い込んでいる」ので対応が一歩遅れた。
「壁役!モンスを拡散させない様に囲んで!・・・駄目だ!あふれる!」
指示役がそう言ってはみたのだが、もう遅かった。プレイヤーが観測していたゴブリンの先頭集団の裏にホブゴブリン、オーク、オーガ、が続いてきている。
そいつらはプレイヤーの本来の最初の作戦が発動できていれば屠る事ができていたはずだった。
しかしその後続の魔物たちは左右に広がって、まるで壁役のプレイヤーたちを囲おうとする動きに変わっていた。
「やむなし!魔法部隊!弓矢部隊!攻撃開始!」
攻撃タイミングを知らせる立場のプレイヤーだろうか?叫ぶように指示が飛んだ。
けれどもそのタイミングは既にここでも遅かった。矢の雨、魔法の爆発ははるかに想定していた戦果を挙げられていなかった。しかもコレはもっと酷い事態を招いてしまう事になる。
「へっ!ゴブリンぐらいだったら俺ら位のレベルの攻撃には一撃死だろうさ。・・・ぎゃぁ!?」
矢が胴体に刺さり致命傷、そんな既にもう死に行く運命しか残っていないゴブリン。魔物に近づくと確認できる体力バーも既にゼロ。
後は光となって消えるだけ、そんなゴブリンは最後の力を振り絞り、近よってきたそのプレイヤーに噛みついたのだ。しかも首に。
光となって消えるまでに若干の時間、間があくのだが、それまでは魔物はそれこそ「消えない」。
消えるまでのその間に起こした死に際の攻撃。コレはゲーム内での判定でも「あり」なのだ。
油断したプレイヤーが受けた攻撃は「クリティカル」。実際に人体急所と呼ばれる部分に攻撃が入るとこうしてダメージが上がる仕様である。
「くそぉ!なんだよコレぇ!?いってえな!回復を・・・うがあ!?」
予想外の魔物の攻撃に、予想外のダメージ。コレで全く持ってして余裕が無くなってしまったそのプレイヤーは警戒どころでは無くなってしまった。
だから、追撃を食らう。それこそ、自らの体力が全部失われてしまうまで。
そう、矢で射られたゴブリンはその一体だけでは無い。周囲にはまだ消えずに残っている「体力ゼロ」のゴブリンが数多く居る、残っているのだ。
それらに群がられて徹底的に噛みつかれる。それこそ防具で守れていない身がさらけ出ている部分を。
こうなれば如何に雑魚でも、群がられて受けたダメージの蓄積はプレイヤーの体力を一気に死亡判定まで持っていく。
この光景がそこかしこ、無数に起きており地獄絵図を作り出していた。




