何で俺だけ「作戦は裏の掻き合い」
三日目の朝。俺はいつも通りの目覚めを迎える。夜更かしをしない、早寝、早起きだ。
「今日だなあ。演説、上手く行くかな?と言うか、めっちゃ恥ずかしいけど。でも面白そうだよなあ。まあ俺は戦場を眺めるだけになりそうだけど。上手くいけば魔王の方にもポイントが入るけど、他のプレイヤーのレベ上げイベントだもんなぁ完全にコレ。」
ぼやきながら朝食準備だ。そして出来上がった目玉焼きにソースをかけて齧る。そして白飯を口の中へとかきこむ。
塩気の聞いたベーコンをぱくりと一枚頬張って、適当に細かく切り刻んでおいた野菜を口へと放り込む。
結構な手抜きの朝食を食べ終わってから食休みを十分程取って、俺はログインをする。
「魔王様、お帰りなさいませ。」
「ああ、ミャウちゃん。どうだった、プレイヤーの様子。」
俺は偵察に出していたミャウちゃんからプレイヤーたちの様子を聞く。
別段コレを聞いたからと言って俺が演説をしないと言う事は無い。こう言ったのは雰囲気だ。
「は!どうやら奴らは壁役を作り、そこで魔物を押し留めて一気に強力な範囲魔法で仕留めに来ると予想されます。」
「なるほどなあ。たぶん俺でもそれやるだろうな。魔物の強さが雑魚ばっかりなら多分ソレで一発で終わるだろうけど。でも、それだけじゃ無いんだろうな。魔物の強さもピンキリだろ。だとすると流れ的には初撃の後が問題かあ。」
細かい命令は「演説」とやらには組み込めない。ミャウちゃんのこの報告からするとプレイヤーは初撃で大勢を決めに来る形を狙っていると見られた。
「まあこれだと俺が最初に考えてた「命令」だと魔物たちは突撃するだけになるだろうし?もうちょっと考えた方が良いか?」
まだ開始までには時間がある。もうちょっとだけ俺は捻った指示が魔物に出せないかどうか考えた。
こうしてミャウちゃんがプレイヤーたちの初動を調べて来てくれたのだ。せっかくなのでこれを先ずは生かしてみるのがいいだろう。
そしてそこに「魔王」もしっかりと組み込んだものを考えるのが俺は意外と楽しかったりした。
こうしてあーじゃない、こーじゃないとぶつぶつと考えていると時間はあっという間に過ぎて行った。
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【イベントの開始時間が近づいてきました。プレイヤーの皆様には参加の意思の確認を致します】
このアナウンスの後にイベント参加への「YES/NO」の表記がプレイヤーの目の前に出てくる。
ログインしている殆どのプレイヤーたちは迷わずコレにYESを押す。
【開始五分前です。時間となったらイベント専用フィールドに飛びます】
この表記とともにプレイヤーたちは緊張感に包まれる。そしてカウントダウンが十秒前から始まった。
それが終われば参加表明をしたプレイヤーたちは目の前に遥か彼方まで草以外に全く何も無い場所へと飛ばされる。
「フハハハハハ!ようこそ神の兵たちよ!我が復活の祭りへようこそ!君たちは今回私への糧となって貰う事となった。せいぜいあがいて見せてくれ。私を楽しませてみよ!」
空には巨大スクリーンに映る「魔王」が尊大な態度でそう偉そうにプレイヤーを見下した言葉を吐く。次に。
「我がシモベたちよ!我に生贄を捧げよ!プレイヤーどもを囲い、一人も逃がすな!その命を燃やし尽くし、死んでもプレイヤーたちを一人残らず殺し尽くせ!お前たちの狂乱もまた我の享楽となる!さあ!我を存分に楽しませよ!鳴け!叫べ!そして我の為に死ね!」
こうしてイベントの開始が告げられた。




