何で俺だけ「活気からの絶望」
そのイベントは運営が専用の「フィールド」を用意したもので、その中でひたすら魔物の大群と戦う、と言った単純なお祭りイベントだった。
でもその背景はこのゲーム内のキャラ、住民とも呼べるNPCを絶望させると言った内容だ。
『魔王が復活しました。その余波を受けて魔物が活性化。大草原にその大群が迫ってきています。これをプレイヤーたちは迎撃してください。』
只々それだけが説明としてプレイヤーに発表された内容だ。しかしたったこれだけで、このイベントをお祭りだと言って騒ぐ者、稼ぎ時だと言い気合を入れる者、プレイヤーでゴチャゴチャするのは勘弁だと言う者、などなど。様々なプレイヤーたちの反応を引き出す。
そんなプレイヤーの中で一人だけ、反応が薄い者がいる。それは魔王だった。
「勝手に運営が俺の事を無視してそうやって。俺って魔王じゃん?事前に何か言って来てもいいじゃん?・・・あれ?でも待てよ?これってもしかして俺が全く関係無い代物じゃね?」
説明文は俺の元にも届いている。そしてそれをよく読むと、俺が、この「魔王」が、直接に関係するイベントでは無い事が読み取れた。
「復活した余波で魔物活性化。そもそも俺が復活しただけでコレ?いや、まあ、俺がホント、意味無いな。間接的だわホント。そもそもさ、俺ってここから移動できないじゃん?」
この告知は三連休の二日目の夜にもたらされ、そしてその三日目の夕方と夜の二波を防ぐと言う内容だった。
なので偶々ログインをして残っていた俺は魔王の状態でこれを読んでいる。
「じゃあコレで死亡を受けたプレイヤーの入って来るポイントはどうなってるの?・・・ああ、説明あったわ。ドレドラ?んん?プレイヤーの一人死亡につき、一ポイント確定ね。コレは恐らくプレイヤー側へのテコ入れ?このイベントを生き残ってじゃんじゃんバリバリレベル上げして魔王へと対抗しようって?」
運営が畏れているのはどうやらゲームバランスと言った所か。たぶん俺が自主的に自分の強さの調査をしたことで「今のままじゃ不味い」と運営が判断したのかもしれない。
と、言ってもそれは俺の妄想でしかない。何か他に狙いや意図があるのかも知れないのだ。しかしそんな事はどうだっていいだろう。
「このイベントでガッポリと稼げないって事は分かった。けどさ、俺もコレに顔出ししたいよな。つか、何で俺だけ魔王でシミュレーションゲーなんだよ今も。」
コレはフラグだったのだろうか?そう呟いた俺のところに運営からのメッセージが届いた。
【魔王として復活したあなたにはイベントの前に「演説」を行って頂きたく。しかしコレに了承するかしないかはあなたの自由にお任せします。YES・NO】
そんな選択肢が俺の目の前に光って現れた。




