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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
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何で俺だけ「噂の噂」

「なあ?あのイベントってもう終わったらしいぞ?最近は攫われるプレイヤーとか現れてないってよ。」

「あ、俺いきなり目の前でプレイヤーが消えたの目撃した事ある!あれってもう終わったん?いつ?」

「それな!俺も魔王見たかったわこの目で。でもさ、攫われるのはレべがめっちゃ高い奴らばっかりだって聞いたから俺は無理だわ。」

「エンジョイ乙。でもさ、これってどう言った趣旨のイベントだったんだ?運営が企画したイベントじゃ無いって検証班は流してんな?」

「ゲーム内での決まったイベントで告知とかはされないって奴な。でもさ、ヤバくね?こっちに何も旨味が無いイベントって?」

「選ばれし者だけが魔王のご尊顔を見る事ができるってか?ならさ、この間「生き残った」って言うプレイヤーの証言が全てなんじゃね?」


 一つのパーティーがこの様な話をしている。ゲーム内掲示板ではもっと色々な推測やら、予想が飛び交っていた。

 その中には運営へと直接電話を掛けている者も居たりする。しかしその内容は一貫して「仕様です」だった。

 中には利用規約などの面倒なものを読み込んで少しでもヒントが無いかどうかを探った者も居たのだが、それは別段「答え」を導き出すには至らなかった。

 前回の問い合わせの事も記憶に新しかったので、多くがこのゲームを遊戯するにあたっての利用規約を深読みしたのだが成果は特に無し。

 只々この事件で一人、生き残った女性プレイヤーの証言だけが頼りだった。


「あの、私はパーティーで一人だけ攻撃に参加しないで仲間の皆さんを諫めていたんです。攻撃しちゃったら反撃を受けて死ぬだけだから、何か他の方法で回避をしましょうよ、って。だけど、聞いて貰えなくって。私の言った事なんて聞く耳すら持っていなかったんです。で、光の魔法を重複させる合体魔法ですか?あれを放ったんですけど、その後が五人全員どんな方法でやられちゃったのかすら分からないんです。いきなり五人全員が宙に浮いて、それで、ジェットコースターよりも怖ろしいくらいにかき回されて、それで、光になって消えちゃいました。」


 生き残ったと言うプレイヤーに検証班がインタビューを行った記録がゲーム内掲示板で流された時には騒然となった。


「その後に私は魔王から何でお前だけ攻撃してこなかったんだ、って質問されて。それで正直に敵わないって分かってるのに攻撃したら死ぬの確定で攻撃に意味が無い、って言う風な返事をしたんです。その後にも助けてくれないかって私からお願いしたらあっさりと帰してもらえました。」


 この言葉に誘拐されて消された者たちは「あちゃー」と顔を覆ったと言う。中には「俺は攻撃していない!」と主張する者も居たのだが、そいつは仲間にバフ、補助魔法を掛けてはいたと言う事が判明して非難されていた。

 そんなのは敵対行為と変わらない。攻撃しようとしている者をパワーアップさせたんならソレはお前の攻撃意志とみなされるのは当然だ、と。


「で、最後に私が気付いたら元の居た街に戻されてました。あ、その前にミャウエルって言う部下?なんですかね?魔王がその名前を言った後に私は拘束されて目隠しされて、って言った感じです。でも、あの場に魔王と私以外の人影なんてなかったんですけど?」


 コレにまたしてもゲーム内で衝撃が走った瞬間だった。魔王の部下がいて、そして姿が見えない。しかもそいつは今の現状の高レベルプレイヤーを簡単に攫ってしまえる程に強い。

 それは要するに有象無象には敵いっこないと言う事だ、その「ミャウエル」と言う見た事も無い、見えない存在に。

 これを理解したプレイヤーたちに戦慄が走る。その後に背中に流れる冷たいモノに少なくない者たちが諦めを持つのはしょうがない事だった。サブクエやって遊んでるのが一番いい、と。勝てない奴を相手にしても面白くない、と。

 でもそう言った思考にならない者もまた多い。レベルを上げに上げて、いつかその敵を倒して見せる、と。

 誘拐されたプレイヤーたちにこう言った思考は多かった。そして掲示板内にも。

 高レベルプレイヤーが対処できなかった存在を、いつかレベルを上げた自分たちが倒す。そうなれば名声が手に入る、と。そんなクダラナイ名誉を求めてモチベーションが上がる者もまた存在した。

 ゲーム内で有名人に、と言ったモノですらゲーマーにはヤル気を出すための燃料となる。


 こうしてこの一件は一部のプレイヤーたちのヤル気を高め、そしてエンジョイ勢に諦めをもたらした。

 しかしコレはゲーム内の活気を全体的に見てもたらしていた。生産職は魔王へと通用する武器の生産、魔王の攻撃に耐えられる防具、などなど。

 そう言った向上心を上げるための材料ともなった。生産職は、武器は武器でも単純な攻撃力の高い武器だけを作ろうと言った思考は捨て去り、いかに特殊であっても場面に嵌れば強い、と言った癖のある武器も作られるようになり、一層バリエーションが増えてどんな場面にも対応できると言う事を目指すようになった。

 コレは突発的にこの様なイベントなどが発生した場合も柔軟な対処ができる様にする為だ。


 こうして活気が上がっている時にその運営からのイベントはもたらされた。

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