何で俺だけ「誘拐事件」
プレイヤーが作り上げた街を放棄すると言う事件が勃発してからまたしても大事件が起きた。
それはプレイヤーが「神隠し」に遭うと言うモノだ。そしてその被害を受けた何十人ものプレイヤー、その誰しもが口を揃えて先ずはこう言うのだ。
「魔王がもう復活していた」と。彼ら彼女らはそう口々に言う。
「いきなり目の前が真っ暗になったんだ!そんでもって雁字搦めで動けないんだよ。それでその拘束が解かれるまでずっと何かに乗せられて移動してるんだけどさ。それが何だか空を飛んでるっぽくてよ!?」
「移動が終わって何処かの建物に連れて行かれたのよ。だけどその時にはまだ目隠しされてるから分からないの。で、拘束も目隠しも解かれていきなり目に映ってきたのはさ、玉座に座った鬼みたいな大男なの!怖かったわー。」
「で、そいつがさ。「お前の力を見せてみよ」とか言ってくるんだよ!意味不明じゃね?でさ、全く何が何やら分からないから俺はそこで聞いてみたんだ。お前は何者なんだって。」
「そしたら返ってきた答えが「魔王」とか言っちゃうわけ。マジ信じらんないでしょ?なんのイベントなの!?とか叫んじゃったわよ、その時は。」
「そしたらさ「お前たちの強さが知りたい」なんて言ってくるのさ。これイベントならこいつを倒せればもの凄いアイテムが手に入るんじゃないかって思って全力で挑んだよね、当たり前みたいに。」
「いや、瞬殺だったけどね。ああ、一応はこちらからは一斉に最強攻撃を連続で重ねて大ダメージを狙ったんだけどさ、これがまた、ね。」
「無傷、とか思ったらポツリとその魔王が「全然痛くない・・・」って。このゲーム痛覚遮断もツイてるじゃん?それでさ、その魔王ってもしかしたらプレイヤーなんじゃない?ってなって。」
「NPCの魔王だったらさ「全然痛くない」とか言う風に中の人が入ってるみたいな言い方するか?ってなってな!まあその後に「有難う、実験に付き合ってくれて」とか言われて何されたか分からずにその直後にはコッチは全滅ですよ。訳が分からねえ。」
大体誘拐されたプレイヤーたちはこう言った内容の話を誰もがしている。ざっくりとその中身が共通しており信憑性が高い案件として「魔王が復活した」と言った結論を出している。
そしてその陰に隠れるように「もしかしたら魔王はプレイヤーかもしれない」と言った情報が「嘘か」「真か」と議論が巻き起こっていた。
そしてとあるパーティーが今まさに誘拐されようとしていた。そのパーティーの名は「ランナーズ」と言う。
そう、魔王が今、最も怒りを向ける存在「裏切り者たち」であった。
「なあなあ?魔王復活とかもっぱら言われてるけどさ、それが何なん?」
「え?お前メインストーリー知らんのかい!」
「と言うか、めっちゃサブクエスト多くてそっちに気が向いちゃうのはしゃーない。」
「バリエーション多くておもろいしな。それに強い装備揃えたいし?」
「でもメインの方も進めないと他の人に持ってかれるべ?まあそんなガチンコ攻略組に強さが追いつけるわけないけどな、俺たちみたいなエンジョイ勢には。」
「あの、私はゲーム初心者なので言っている意味がイマイチ分からないんですが。こう言うのは本筋をなぞるモノじゃないんですか?」
このパーティーの最後の一枠に入った女性初心者プレイヤーはまだまだこのゲームをどうやって楽しめばいいのかを掴みかねていた。




