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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
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何で俺だけ「徹底的に、容赦無く」

 直撃していれば魔族の十人や二十人は簡単に倒せたであろうその一撃の反動でそのプレイヤーは動けないでいた。

 技後の硬直で動けない所を前後左右、四名の魔族がその手に持つ剣で串刺しにして片付ける。


「これよりゲブガル率いる隊と残りのプレイヤーの殲滅へと移る!各自!損耗率の確認!」


 このミャウエルの声はゲブガル隊との戦闘を続けていたプレイヤーたちの意気を大いに削ぐ。

 挟み撃ちだからだ。前方は攻撃の通らない魔法障壁で撤退も難しく、横へと広がって逃げ出そうとする者には容赦なく魔族が魔法攻撃を仕掛けていた。

 こんな状況で後方を責められてはどうしようもない。前衛職が全て倒されて絶体絶命のピンチである。


「どうあっても生き残るぞ!この際だ!誰か一人だけでもいい!生きて逃げ出せる奴が居たらコッチの勝ちだぁ!」


 プレイヤーは苦し紛れにそう叫ぶ。余りにも低い勝利条件。しかしそれだけプレイヤー側は必死だと言う意味である。

 どうとらえようとも魔族から逃げ出せるような状況では無い。だからあえてこのように低いハードルでプレイヤーたちは自分たちのヤル気を引き出そうとした。しかし余りに悲しい。それは叶う事が無かった。


 剣に付与された魔法攻撃で前衛職の多くを屠った魔族は同じ様な攻撃をして来るに違いない、そういった事をプレイヤーの誰もが考えた。

 だから、魔法を防ぐための障壁を展開する。後衛職の多くの者たちが使える魔法だけに特化してダメージを通さない障壁を。

 どんどんと後方から迫る魔族たちへの準備はコレで万全。果たしてそうだろうか?そんな疑問を浮かべてその事を口にしようとしたプレイヤーも存在する。

 しかしそれは遅かった。魔族軍が迫る速度は一瞬。魔法攻撃「だけ」を防ぐ障壁は魔族を素通りさせる。


「え?」


 只々その短い驚きの声だけがプレイヤーたちの中に小さく起こる。その後は地獄であった。


「あぎゃああああああ!?」「う!?ど、どう言う事だってばよ!?」「一撃ぃぃぃぃ!?」「はや!動体視力良い方なのに俺ぇ!?」「避けれない定期・・・」「まるで風を相手にしてるみたいである・・・死ねるよね簡単にこれじゃ。」


 前衛職たちへと迫った速度はフェイク、コレが本来の魔族たちの速度だとでも言わんばかりの素早さでプレイヤーたちの間を駆け抜けていく攻撃。

 剣での一撃で胴、腕脚、顔などなど、様々な部位を切り捨てられていく後衛職プレイヤーたち。

 自らの脇を何かがすり抜けた、そんな後には光と消えていく自分を確認するような事態にプレイヤーたちは諦めと混乱で騒ぐ。

 だがもう遅い。いや、終わったと言うべきだろうか?もう魔族たちはプレイヤーへと一人残らず一撃を加えた後であった。まさに疾風の如くの早業にプレイヤーたちは魔族との開き過ぎている力の差に唖然とするしかなかった。


「嘘だろ・・・これじゃあどうあっても勝てねえよ。」


 光の力を持つプレイヤーが居た。仲間に。だが、結果がコレだ。その事実に今回のこの大規模遠征に参加したプレイヤーは誰もが後に「魔族に勝つには人で無くならないと駄目だ」と口にするようになる。

 果たしてこの内の何人が「人間を止めるぞ」と言い出しただろうか?その数は分からない。

 このゲームは確かに「種族」を変える事ができるイベントが存在した。しかし今はプレイヤーたちにその存在は知られていないのが現状である。

 種族「人」を止めるためにそのイベントを探そうとする者は残念ながらその中には現れなかったのだが。

 しかしながら人で無くなり、その他の種族になったとしても、この魔族の強さについて行く事ができると言う保証は無い。それはそれぞれの種にはデメリットがそこには存在するから。


 魔族は「光の力」は使えないし、聖属性関連の魔法に滅法弱い。

 プレイヤーは「光の力」を得れば魔族に匹敵する力を発揮できるようになるし、聖属性の魔法関連は多くの種類獲得できる。

 この二つは対極と言って良い位置にあるのだ。種を変えてもコレ以上の事を出来ると言った事は無い。

 寧ろ、人種、プレイヤーは「光の力」さえ手に入れられて、それを十全に使いこなせるようになれば魔族を圧倒できる。そうなる筈であった。運営的な視点から見れば。

 でも、「魔王」が現れてソレが大幅に変わる。寧ろ全く別物、運営的設定など飛び越えた変化がゲーム内には発生していた。

 そんな事はこの場に居るあらゆる者たちに知る由も無い事である。


「まだ息のあるプレイヤーたちに止めを刺せ!その際は二人一組だ!同時に仕掛けるな!こちらの油断を誘って反撃をして来る可能性を思慮に入れて行動せよ!」


 ミャウエルの厳しい声が戦場とも呼べない蹂躙の地にこだまする。

 数少ないが生き残っていたプレイヤーがコレを耳にして「勘弁してくれよ・・・」と漏らすのだが、そんな容赦をする魔族では無い。

 彼らはこうして程無くして全滅をさせられるのだった。この大規模な五百人と言うプレイヤーを魔族が全滅せしめたこの事件は掲示板に巨大なる衝撃を後にもたらす事になった。

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