何で俺だけ「対処」
俺はメグロムに対して魔王通信を試みた。それは成功した。
「緊急で伝えたい事がある。このまま聞いてくれないか?君たちエルフの森の外周にプレイヤーの集団が近づいていると連絡が入った。ご存じの通り、魔王軍とプレイヤーは敵対している。しかし、君たちエルフが彼らプレイヤーを受け入れる体制がある、その気があると言うのであればこちらはプレイヤーを攻撃せずにそのまま森へと入らせる事もできる。判断を求める。」
そこから少々の沈黙が訪れた。メグロムにはこの通信が繋がっている確信はあるし、聞こえていないと言う事も無いはずだ。
メニュー画面を直ぐに出して俺はベイルと通信を繋げた時の様にメグロムの名前が並んでいるのを確認する。そこに「通信中」と出ているのが見て取れた。
そこでやっと返事が返ってくる。しかしその声音は苦い。
「・・・早速そうなりましたか。いえ、彼らを森の内部へと入らせない様にお願い申し上げます。」
「もし討ち漏らしが出て森に逃げ込む者が居れば?」
「それもできれば討って頂きたく。」
「分かった。こちらで手勢を出すよ。で、そこまでプレイヤーを嫌う理由は?」
「ソレは後程時間が空いた時にお話しさせて頂きたく。」
「ならすぐにこちらで軍勢を出してプレイヤーを殲滅する。聞いてたかいミャウちゃん?プレイヤーの数はどれくらいだ?」
「はっ!どうやら五百は居る模様です。こちらは二百も手勢があれば片が付くかと。」
五百も一体いつの間に集めたんだと思ってしまう。確かに俺は掲示板をチェックするときはまばらで、短い期間にこうしてプレイヤーが人を集め出したら感知できないタイミングと言うのも出て来るだろうが。
「安全の為に三百で行こう。プレイヤーを甘く見てこちらに死人が出たら悲しいし、後悔したく無い。直ぐにでも戦力は集められそう?」
「可能です。今も外に出ている魔族には連絡が既に行っております。まもなく集合致します。ここまでプレイヤーが来るまでには森の中に入らせないだけの必要数は充分に集まるかと。」
「なら暗殺部隊を森の中に配置してくれる?討ち漏らしや逃げ出したプレイヤーが森の中へと入り込む可能性も無くは無い。それと、他の場所からプレイヤーが森の中へと進軍する可能性もある。別動隊などがプレイヤーに無いかどうかの確認も。」
魔族がもの凄く強くてプレイヤーなど一捻り、と言った部分があるので俺も油断はある。本来ならこちらも五百は出したい。
しかしミャウちゃんが二百でOKなどと言うので俺の判断も底に百を足せば充分過ぎると考えた次第だ。
「一応はコレで大丈夫だろうと思うけど、どうだろうかメグロム。この件が落ち着くまでは城に滞在して行ってくれ。森へと戻る際にプレイヤーに見つかると面倒になるだろうから。それと安全の確保のためにもね。城の滞在中は好きな所を見て回って構わない。ここに住む者たちの姿を見極めてくれ思う存分。それじゃあミャウちゃん、作戦開始だ。」
ミャウちゃんの気合の入った「畏まりました」と言う言葉を聞いてから俺は通信を切る。しかしメグロムにはまだ繋げているままだ。
「我々への御配慮、痛み入ります。では、お言葉に甘えさせて頂きまする。」
俺はキリアスにエルフたちに対して歓待をするように言いつける。すぐさまコレにキリアスは動き出した。凄く優秀である。直ぐに実行するために即座に動き出してくれる、文句ひとつ言わず。
その表情には少しだけだが不平不満が滲んでいたのを俺は見逃していない。
(その内キリアスにはそのため込んでいるモノを吐き出させてやらないと爆発するかな?)
きっとキリアスは俺へと反逆してきたエルフたちへの処断が温過ぎると感じているのかもしれない。まあコレは俺の勝手な推測なのでキリアスが内心で何を思っているのかはさっぱりだが。
「今回のエルフへのプレイヤーの動きをどう見ますか魔王様?」
ここでゲブガルが一言問いかけて来た。どうやら俺が喋っていた言葉から何かと察したようだ。
「あーそうだね。うーん?プレイヤーの動向は四六時中探っては居ないからなぁ?それでもやっぱり何かしら情報を得たんだろうな何処かしらから。それで急遽、って流れが一番だと思う。・・・ちょっと心配になって来た。なんか嫌な予感がする。ゲブガル、ちょっと頼めるか?」