何で俺だけ「自分でやれよ」
最初に立ち上がったのはベイルだ。そして俺を睨んで「化け物め」とだけ呟く。
「さて、呼吸が整って喋るのに支障は無いよね?それじゃあベイル、君の不満を教えてくれないか?」
「この期に及んでその様な事を!何処までも我らエルフを侮辱するのか!殺せ!一思いに!」
「・・・ナめた事を言ってるね。そこまで誇り高いエルフなら今ここで自害して見せてくれ。こうして国の決定に反しての行動、そして失敗、返り討ちにされて閉じ込められている。さぞこの場に居るエルフたちには耐えがたい屈辱だろうね。ならば殺せと言わずに自ら命を絶てばいい。殺してくれと甘えた事まで言って、恥ずかしいと思わないのか?自殺する勇気がないのなら、それは只の臆病者だよ。殺されると言う他人からの介入で死する事は覚悟していても、自分で自らの命を絶つ事ができないのなら初めからここに来なければ良かったんだ。とんだ頭の悪さだな。自分を自分で殺すのはそんなに怖いか?ならこんな事をしでかす前に良く自分を顧みればよかったんだ。侮辱だ何だと吠えてはいるが、そのくせにそうして戯言を口にしていないと奮い立つ事すらできないのか?結局生きて国に帰ったとしても反逆の罪で死罪を言い渡されるんじゃないかな?それならここで自決をするのは別にちょっとだけ死ぬのが早まるだけだろう?やれば良いじゃないか。」
俺はちょっとだけ怒りを覚えて少しだけキツイ言い方をしてしまう。コレに「言い過ぎたかなー?」などと思ってしまったが、口に出してしまった言葉は元には戻せない、無かった事にできない。
ベイルはコレに黙ってしまった。言い返す言葉が見つけられないのかもしれない。他の倒れているエルフたちもどうやら俺のこの言葉がちゃんと耳に入っていたらしい。静かな呼吸音だけがこの場に響く。
「あ、互いに互いを殺して解決、何て見苦しい事はしないでくれよ?そんな死に方したらソレを盛大にエルフの国に広めるからね?そうしたら君たちはずっと同胞の笑い者として後世に受け継がれていくだろうね。あ、そうするとエルフって長命種なんだよね?だとすると、語り継がれる期間は相当長くなりそうだ。ずっと君たちの行動は失敗談の例え話として使われて役に立つかもよ?」
思わずエルフたちの長い沈黙に追い打ちをかけてしまった。しかし未だに倒れている内の一人がピクリとコレに僅かに反応していたのでおそらくはその方法を考えていたのかもしれない。
ベイルは追撃で放たれたこの俺の言葉に余計に打ちひしがれている様子だ。結局はこの襲撃失敗はエルフの国に広まるだろう。それを分かっているのだベイルは。
「俺は君たちを殺さない。そして君たちは俺を殺せない。そしてここから今は出られないだろうね、この部屋の唯一出入口はうちのゲブガルが塞いでるから。取り敢えずミャウちゃんが向こうに手紙を出しに行くし、返事が返って来るか、それとも弁明の為にお偉いさんの使者が直接来るかは分からないけれど。その時に君らの処遇は決まる。その時までここで大人しくしていて貰おうか。あ、駄目だと分かっていても、まだまだ攻撃を仕掛けて来ても構わないよ。俺も待っている間は暇だしね?」
俺はそうエルフたちに言った後にゲブガルへと声を掛ける。
「ゲブガル、俺がここから消えても一応はそこでずっとエルフたちを閉じ込めていてくれる?他に交代要員とか付けて当番制でいいからここから出さない様にお願いね。」
こうしてその後はエルフたちが俺へのアクションを何ら起こしてこないので、今日の所は俺はコレでログアウトする事にした。