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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
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何で俺だけ「荒稼ぎのその中身」

 その後を追っていた魔族はその広場へと入り込んだ。その瞬間に四方からぞろぞろと一斉にプレイヤーがこの広場を囲うように隠していた姿を現した。


「よっしゃ!一体だけじゃん!・・・あれ?仲間どうした?ぷぷッ!もしかして・・・やられたの?ダッサ!」


 この集団の中心なのだろう一人が前に出てこの場へと駆け込んできたプレイヤーにそう言葉を投げつける。

 相手は一人、なのに六名も居たプレイヤーは一人を残して誰もこの場に居ない事で直ぐに殺された事を察したのだ。

 コレに事実なので言い返す言葉が無い逃げ出してきたプレイヤーはぐっと手を握って悔しそうにするだけだ。そしてその後は魔族を包囲する円の中へと入って行く。


「それにしてもよー?一体だけ都合良く誘き寄せられたのはお手柄だったけどな。これだけの数いりゃ全滅させらるとかは流石に無いべー?」


 チャラい。何処までもその態度は目の前の敵を舐め切っている態度だった。そして、相手が遥か格上だと言う事すら分かっていない様子だった。

 幾ら強くても限度はある、数で押せば犠牲が多く出たとしても何とかなるだろう。そんな甘い考えの者たちがここに集まって来ていた。

 掲示板での呼びかけに応じた者たちが今、ここに集結しているのだ。それは烏合の衆と呼ぶにふさわしかった。

 自分は殺されない、寧ろ、今ここで自分たちが「魔族殺し」の称号を得るのだと思っている。何らそんな根拠になる物など持ち合わせていない者たちなのにもかかわらず。

 ここで「光の力」を得ている者が一人でも居れば、その可能性はあった。称号を得られるという。

 しかし残念ながら誰もこの場に集まった者たちにそう言った「切り札」になる力を持っている者が一人も居ない。


 未だにペラペラと自分の言いたい事を並べて喋り続けるプレイヤー。そして戦闘にも入ろうとせず、ましてや態勢も整えようとしていないこの場を囲むプレイヤーたち。

 勝てる、余裕で。そんな弛緩とも呼べない、楽観と呼ぶにしても限度がある空気を作り出していた。


「もう、良いか?お前たちは生贄だ。我らが王へと捧げる供物である。大人しく殺されれば良し。抵抗して来ても構わないが、この場で生きている時間が延びるだけで結末は変わらんだろう。さて、もうそろそろ準備も終えている。さっさと片付けてしまおう。このつまらない口上に付き合う時間が無駄だ。」


 この空気を壊したのは魔族の方だ。そしてプレイヤーのこの集まった数に対して全く敵とすら見なしていない。

 コレに舐められたと思ったんだろう。急に機嫌が悪くなったプレイヤーたち。しかし彼らは自分たちの身にこの後起こる事を理解できない。


 ソレは魔王軍「暗殺部隊」が仕掛けた攻撃。その攻撃の仕込みもプレイヤーが作り出していた。

 一人でいる魔族に対しての余裕「俺たちが初の魔族殺しの称号を得る」と言う事に酔った言葉を吐き出しているその時間、それが彼らの命を一瞬で全員狩り取る為の準備に使われるとは思っても居ない。


 しゅ、ただそれだけだ。この場に響いた音は。次にゴトリ。プレイヤーの首の全てが同時に地に落ちる音。

 コレに恐らくこの場に集まった何名かのプレイヤーにトラウマを植え付ける事になるだろう事は想像に難くない。

 誰もがその目に何が起こったのかの理解を示す事は無く、美しいきらきらとした光の粒を上げながらその場全員のプレイヤーが死亡し、消滅していった。


 コレはミャウエルの使う「糸」の攻撃と同じ物であった。彼ら暗殺部隊は徹底的にミャウエルに「仕込まれた」者たちであり、精鋭でもある。

 プレイヤーたちがにやにやと笑っている間にそれらの「糸」は彼らの首に巻き付けられている。音も無く、影も見せずに。

 流石「暗殺部隊」であり、そして高レベルの魔族である。この場に居たプレイヤーの誰もにその存在を悟らせることが無かった。


「さて、これでどれだけの供物を魔王様に捧げられたかは分からない。けれども次に直ぐに向かおう。どうやら部下が次の獲物を見つけたようだ。合流をする。」


 囮役、餌とも言える魔族はそう言ってその場から空へと飛び上がる。そう、こうして隙をプレイヤーに見せてその上でまんまと襲ってくる者たちは「称号狙い」だと言うのがすぐに判明する。

 彼らに付き添うのは暗殺部隊の精鋭が一名。その腕前は今先程に繰り広げられた光景で嫌でも解る。

 森の中へと最初に逃走を図ったプレイヤー五名を屠ったのもこの一人の暗殺部隊の者だけだ。

 餌として追撃を掛けていた魔族は殺しに何ら関わっていないのである。


 次々にこの作戦は成功をおさめ、魔王の元に未だかつてないポイントの嵐が舞い込んでいるのだった。

 最初からプレイヤーは本気になった魔族に勝てる見込みが無い。騙し討ちを初めて食らった魔族たちも最初から全力を出していれば受けた怪我はもっと低度のモノで抑えられていた事だろう。

 そう、油断からあのような事態にへと追い込まれたのだ。それは急な事への対応力の問題で、「魔王軍」はまだまだそこら辺は鍛え始めたばかりの部分だった。


 こうして「魔王軍」が本気で動き始めてしまっては、プレイヤーが付け入るスキなど無い。

 だが、頭の悪い、察しの悪いプレイヤーたちにはコレが分かる者が少ないのであった。

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