何で俺だけ「称号狙い」
それからというもの、どんどん増えるポイントに油断していた。
「え?大怪我を負った部隊が出た?しかもそれって・・・」
ミャウちゃんから報告を受けたその内容が俺には衝撃だった。
「はい、ゲブガルが偶々近くで監視をしていたので命に別状は無かったのですが。プレイヤー共は卑劣にもだまし討ちの様な真似を。」
プレイヤーたちはどうやら戦闘に入った後に真面目に戦っていたかと思うと逃げ出したと言う。
それを追撃した部隊だったが、どうにも誘導されていたらしい。森の近くまでそのパーティが到達すると、その森の中から他のプレイヤーパーティが出てきたと言う。その数は「12」である。2パーティ分だ。
こちらの魔族の部隊は基本三名である。そこにプレイヤーパーティが「3」だ。合計で十八名のプレイヤーが襲い掛かって来たのだと言う。
最初は数に圧倒されて魔族部隊は少々押され気味、しかしそこは訓練の成果かどうかは分からないが、プレイヤーを反撃で三名キルしたそうだ。
それでもプレイヤー側が動揺せずに怒涛の連撃を仕掛けてき続けた事で不意を突かれて態勢を崩されたらしい。
そこでダメージ大きめの攻撃スキルをプレイヤーに放たれてしまい、それを食らってしまったそうな。
「そこでゲブガルが偶々近くに居て助かったって、何かのドラマかな?」
魔族の部隊を隊長格の者が一つ一つに監視に付けている訳では無い。なので本当に幸運だったのだろう。
攻撃スキルを受けた魔族は大怪我を負って、そこでこちらが約束通りに戦闘終了を述べたのにもかかわらずにプレイヤーは攻撃を止めなかったそうだ。
そこへ危険だと言う事でゲブガルが助けに入って事無きを得たと言う。
「既にその三名は怪我を癒やして療養中であります。この度の事があったので全員を呼び戻し会議を開きました。そこでプレイヤーのその行動の結論を導き出しました。」
ミャウちゃんは既にそのプレイヤーの動機を会議での議論で解明したそうで。
「どうにも奴らは「称号」とやらを求めて我々を殺害しようと試みた模様です。攻撃を受けた者の証言では・・・」
『こいつを殺せば絶対に称号を取れるって!俺たちが初めて魔族を倒したとなれば絶対に有名になれる!』
そんな事をプレイヤーは口走っていたそうな。ちなみに、そのプレイヤーたちへの追加報酬は無しである。もちろんゲブガルがそいつらを全滅させたからだ。
こちらから持ち掛けた約束は「戦闘終了」を宣言したら戦闘行為は一切禁止である。それを守れなかった奴らに支払う物など何もないのだ。
「そうかぁ~、称号狙いで問答無用から、不意打ち、騙し討ちもやらかすのね。ミャウちゃんに頼んだ調査が間に合わなかった結果だなあ。」
「申し訳ありません。この度は私の不始末が・・・」
「はい!重たいからそう言うのは止めようねって言ってあるでしょ?ミャウちゃんのせいじゃないからね?調べてって言ったのもつい昨日だし。それじゃあ間に合わなかったのも俺がもっと早くにプレイヤーの動向を探らなかったからだね。責任は俺にあるな。うんうん。」
こうでも言わないとミャウちゃんがずっと自分を責め続けてしまうのでここでこの話を無理矢理俺は終わらせる。
確かに俺はじゃんじゃん増えていくポイントの桁にニマニマしてずっとソレを眺めていたから、もとはと言えば俺がそんなだらしない事をしていたから起きた事とも言える。
「今回のその三名の魔族からは詳しい状況やら流れやらの調書を取って訓練に生かそう。怪我が治ってももしかしたら心の傷が治っていない事も考えられるからね。その三人には長めの療養を取らせるようにして。うーん、それじゃあそう言ったプレイヤーへの対応が次の課題だなあ。」
今回の事が原因でポイント稼ぎを止めたくはない。寧ろ、そう言った者たちを釣り上げてより一層の稼ぎを出したいと考える。
「ミャウちゃん、あの部署を出動させようか。今回の作戦の部隊も三人一組じゃ無くて、六人二組で行こう。安全の為に。それとプレイヤー狩りの効率を高めるために。」
単純だがコレが一番手っ取り早いと思ったのだ。プレイヤーが「レイド」を組んでパーティ人数を増やそうと、不意打ち、騙し討ちをしてこようとこの数なら今回の様に怪我をさせられる、圧倒的手数に押されると言った事も防げるだろうから。
「先ずは「称号」を狙って来てる奴らをもっと釣れるにはどうしたら・・・あ、逆に減らして見せる?」
こうして俺は思い立った事をミャウちゃんに説明して今作戦に練り込んで貰う事にした。