何で俺だけ「この先の見通し」
「被害は無し。掠り傷一つ負っておりません。敢えて言うならば、偽物を返り討ちにするのに使用した魔法の為の魔力を少々くらいでしょうか。」
消費したのがその少々の魔力のみと聞いて「それだけ?」と思ってしまう。
「三人一組でだったからね。当然数の有利が・・・」
「いえ、一対一で御座います。戦った者の言葉ですが「自分より弱い者しか相手にしてこなかったのだろう」との事です。基本の身体的能力はどうやら同程度、しかし戦闘においてはどうにも稚拙との事。これでは偽物としてではありますが、泳がせているとはいえ「魔王」などと名乗らせるのは・・・」
「ミャウちゃん、良いんだよ。このままプレイヤーの注目を少しでも集めておいて貰おう。今はプレイヤーからポイントを稼ぐ事に集中しようか。今順調なんでしょ?」
掲示板で広がるのが早かったので随分とプレイヤーの動きが活発だ。
中には二組、魔族を追い詰めた猛者が居たようだ。そしてその戦闘では追加報酬をちゃんと約束通りにプレイヤーへと支払っている。
コレがどうやら追い風を起こしているようで、本当に魔族が約束を守ったと言ってプレイヤーの間では話題になっている。
「はい、確かに。プレイヤーはどうやら我々に勝てないと分かっていても得る利益はそれに見合っていると判断しているようです。魔王様の見込み通りです。流石魔王様です。プレイヤー共は戦闘で負けても消えていく際には満足そうな顔をしているとの報告が・・・くッ!幾ら作戦とは言え、プレイヤー共が歓喜する様を見せられようとは・・・!」
ちょっとミャウちゃんが憤りを見せている。でも我慢して貰いたい。ミャウちゃんは「プレイヤー絶対殺す」が心情だ。それを俺がちょっと無理矢理抑え込ませているのでちょっと申し訳ない気分はある。
「それで、何か異変とかは無い?変なプレイヤーとかは近づいてきたりしてない?」
一応は有象無象が臨時パーティを組んで次々に魔王軍を見つけようと必死にフィールドへと出張っている状況だ。
普段は街で引きこもりの生産職のプレイヤーですら、フリーで活動するプレイヤーを募集して魔王軍を見つけようとしているのである。
それほどに得たいと思える貴重な代物をプレイヤーへとばら撒いているのだと、餌の効果が抜群な事が確認できて嬉しい限りなのだが。
「・・・はい、あります。プレイヤーが我々を見つけるなり即座に攻撃を仕掛けてくる、と言った事案も出てきております。」
「あれ?それってどう言う事?交渉から始めてるんだよね?ちゃんとこちらから説明をしてからバトルしてるんだよね?」
「ソレを何か勘違いしているのか、はたまた、問答無用で我々を倒して素材を奪えば良いと考えているのか。どうにも頭の悪いプレイヤー共がその様な行動に出ている模様です。」
俺はコレにどのように対処をしているのかと確認を取ってみた。するとミャウちゃんはこう言う。
「そう言った者たちはそれこそ、相手の流儀にのっとってこちらも反撃を致します。全力で。」
「あー、それはプレイヤーの方が即座に全滅だね。馬鹿なのか、解ってないのにでしゃばってそうやって無駄に損をするとかねぇ?」
掲示板を調べればちゃんと流れが分かるような解説がある。そうじゃなくともプレイヤー間の噂話でだってそれなりの情報が得られるし、そもそも何も分かっていない奴らが、それこそ偶然集まって無差別に魔族へと攻撃を仕掛けていると言うのは考えにくい。
野良で固定パーティを組んでいないプレイヤーが六人も集まって、その中で一人も今回の事の詳細を分かっていない、何て事はそう無い事だろう。
「その点を少し調査して見て貰える?もしかしたら誰かが唆してるって事もあるかもしれない。あ、でもそれはそれで全滅させればポイントウハウハだし、放って置いてもその内に沈静化はするだろうから今の内にガッポリ稼ぐためにも放置で良いかな?」
俺はこのどうにも妙な動きをするプレイヤーたちの裏側が気になった。なのでちょっとだけ調べてみて欲しいとミャウちゃんに頼む。
「はい、では引き続きプレイヤー共を相手にしつつ、調査隊を組んで行動をさせます。して、魔王様。今回のこの作戦はどの程度を目標に終了をお考えでしょうか?」
「あー、そうなんだよねえ。資源が無限にある訳でも無いしなあ。まだまだ城の裏の鉱山からはざっくざくに鉱石はゲットできてるけど、それもいつ枯渇するか分からないもんね。そこら辺の具合も誰かに計算して貰えたらいいなあ。一応は今はまだまだ稼ぎ時だし、もうちょっと終わりは後に。」
ドワーフにも鉱石を融通している都合上、限界と言うのを見定めなければならない。
ゲームだから資源が無限に取れる、何て事は余りにも都合が良過ぎる馬鹿な考えだ。いつかは無くなると思って行動しておいた方が、何かあった場合に覚悟も素早くできるし対処も早く済ませられる。
こうしてミャウちゃんの報告と今後の話を終えて俺はメニュー画面を出す。
「さてさて、このポイントの使い道を今からでも決めておかないとな。後から悩むよりも今すぐに優先順位だけでも決めておいた方が話が早い。」
俺は今もどんどんと増えていく数字ににんまりと笑顔になるのだった。