何で俺だけ「作戦・作戦・大作戦」
餌は様々な鉱物資源、アダマンタイトしかり、珍しい宝石の原石しかり。他にもプレイヤーの掲示板で調べた結果、まだ彼らが得る事ができていない代物を餌にして戦わせる事になった。
その一連の流れと言うと、ちょっと杜撰過ぎると指摘されるような方法だ。
先ず魔族の方は数として三人一組で動く。それに対しプレイヤー1パーティ六名を基準で声を掛ける事になっている。
そして「餌」を先ずはプレイヤーにちらつかせてから交渉を始め、先払いとしてソレを渡して「戦闘」を求める。
プレイヤーが魔族を追い詰めて勝ちを確実だと判断させるような結果を出せば追加報酬を出す。
しかし、プレイヤー側は全滅を覚悟しなければならない。
こんなルールは自然とプレイヤー不利だし、お話にならないと言えるだろう。そもそも魔族からその様な申し出をプレイヤーへとする事自体が変に思われるのがオチになるだろう。
けれども恐らくは今回の事もプレイヤーたちは運営のノー告知「イベント」だと勘違いするんじゃないかと俺は読んだのだ。
もちろんプレイヤー側が全滅をしても良いだけの損をしない「先払い」をこちらはする予定なのだ。最初に渡す報酬を多めに出す予定なのである。
もちろんそれを持ち逃げしようとしたプレイヤーが居た時にはソレを魔族軍は容赦無く「狩る」。コレはその時には絶対に全滅をさせると言う事だ。
プレイヤーが上手く立ち回って魔族三人組の内の一人にでも「王手」を掛ける事ができれば、その時には追加報酬を渡して撤退するようにと俺は命令を出している。
こうしてこのポイントちょっと多めに稼ごう大作戦は始まったのだが、思いのほか出だしは好調だった。
その好調は「持ち逃げ」をしようとしたプレイヤーが多かった事がもしかしたら良かったのかもしれない。
先ず最初に俺に入った報告はプレイヤーが先払い分を受け取った後に即座に逃げ出したと言うものだった。
しかしこちらの魔族軍はコレを追撃。そして全滅をさせたと言う。この事が掲示板に超速で広がり即座に話題となったのだ。
その一番最初にキルされたプレイヤーたちはどうにも復活した後にすぐさま掲示板にこの事を投稿したらしい。
そのおかげで今回の件がプレイヤーたちの間で即座に認知されて逆に魔族軍をプレイヤーが見つけようとして来る程に発展してしまった。
いつもならプレイヤーたちは魔族に見つからない様にと祈りながらフィールドを移動していると言うのに。
「今回は報酬アリだからな。死んでも元手が取れるのなら積極的に見つけようとするのは当たり前か。」
その分入って来るポイントが爆発的に増えて行ってる俺はウハウハである。じゃぶじゃぶポイントが増える物だから「アレ」の事などすっかりと頭の中に無かった。
その「アレ」とは。
「魔王様、偽物がどうやら我々に接触をしてきたようです。その偽物は今回の我々の動きの裏を説明しろと言ってきました。高圧的な態度で、です。・・・抹殺して構わないでしょうか?」
報告をしに来たミャウちゃんがキレる五秒前。俺は咄嗟にコレを止める。
「ちょっと待って!その接触された部下たちはどう言った対応を取ったの?」
「はい、機密事項として今回の作戦における中身は説明しておりません。しかしそれを無理やりにでも力ずくで聞き出そうとしてきた偽者は戦闘を仕掛けてきたのです。」
これは俺がログアウトしている間に起こった出来事らしく、ログインするまでは全く俺が知る事ができなかった事である。
「で、どうなったの?まさかウチのやつらが痛めつけられただけならまだしも・・・殺されたって言うのは不味いよ?うーん、報復とか言った暗い事はやりたくないんだが・・・」
「いえ、実は・・・その・・・返り討ちにしてしまいました。申し訳ありません。魔王様からはいくつかの注意事項を頂いておりましたのに・・・」
この偽魔王には様子見をしてみようと前に言ってあった。勧誘をされたらスパイとしてその誘いに乗ってみるとか。
或いは敵対行動をされたら撤退をして余り相手を刺激しない様にとか、そんなテキトーな事を言っていた。
「あ、いや、良いよ。今はほら?外に出てる部隊は全部作戦実行中だしね?今は偽物君の相手をするのはちょっと後回しにしたい所だし。と言うか、その偽者君って、まさか?」
俺がそんな聞き方をしてしまう。コレにミャウちゃんが若干の溜息を吐いて答える。
「魔王様が想定していた強さよりもかなり斜め下に弱いかと、私は判断致します。今後の偽物の取り扱いはどの様に致しましょう?」
まさかとは思うんだけどウチの軍隊、強過ぎないですか?などと俺は思わず聞いてしまいそうになった。
多分、偽物魔王も強いはずなのだ。偽物魔王はプレイヤーを見つけては倒していたと言う報告をチョビチョビ受けていた。今までしっかりと偽物魔王の動向は監視していたのだ。
そうなればプレイヤーからポイントは回収をかなりしているはずだろう。それを自身の強化に注ぎ込んでいるはずだから弱いはずは無い。
しかしそれをあっさりと返り討ちにしたと言うのだからウチの軍でやってる訓練が役に立っている証拠だろうか?
「いや、ちょっと待って?返り討ち?殺しっちゃった?いや、最初にミャウちゃんがキレそうになって抹殺とか口走ってるし死んでないんだよね?で、ウチの部隊の方の被害はどれくらい出たの?」
そう、まだ返り討ちと聞いただけだ。こちらも満身創痍にさせられている可能性も無くは無い。