何で俺だけ「釣りの材料を考える」
ゲブガルとの相談の末、決まった事がある。それは第一回、大規模プレイヤー狩りである。
コレは今と言うタイミングだからこそ、ポイントを大量にゲットするために行うモノである。
この城に住む者たちにもポイント付与ができると判明したのだ。正しく領地経営シミュレーションである。
食糧生産にポイントを入れれば生産量が、鍛冶や建築などにポイントをいれるとそれに見合った発展が起こると言う形だ。
とは言え、それは別に「投資」をしないでも俺がアイデアを出したり、会議を開いたりと、ゲームシステムに頼らずとも発展はさせる事ができる。
だが、出来得るのならば早々にそのレベルを上げておきたいと言うのも事実だ。そうすればより一層にこの城がプレイヤーに陥落させられる未来を防ぐ可能性を上げられる。
軍の強化がされて、しかも訓練も順調で魔王軍は相当な軍備増強を成し遂げている今こそ、そしてプレイヤー側に大きなこちらを脅かす様な変化を見て取れない今だからこそ、ここで大きくプレイヤーを叩いて大量のポイントゲットをするチャンスだと判断したのだ。
「と言う訳で、しかし四天王の二人とミャウちゃんは指揮を執るだけに留めてもらう。部下たちが危ないと思ったら即座に手を出して守ってやるのは構わないから、そこら辺は注意をしてね。今の魔王軍がどれだけプレイヤーに通じるのかを見るのと、「光の力」を取得した者が居るのかどうかを炙り出すためのモノでもあるから。命大事には守ってね?「光の力」を手に入れたプレイヤーの力は未知数だから、その事を忘れて侮って相手取ってこちらに死人が出るのが一番愚かな事だと思ってくれ。挑発に乗せられて怒りやらの感情で突っ込んだりするのも危険に突っ込む事だと思ってちょうだい。逃げるプレイヤーが居ればそれは放って置いていい。あくまでもこちらの安全最優先、一人も欠ける事無くこの作戦の成功をもぎ取って来てくれ。それじゃあ、作戦開始だ。」
一つの行いに二つ、或いは三つ四つと他にもさまざまな思惑を込めて効率良くいく。その土台にはちゃんと「安全最優先、命最優先」を入れて。
この玉座の間に居るのはミャウちゃん、ゲブガルにマイちゃん、そしてベルガーンにボッズ。その他にその後ろには彼らが選び抜いた種類分けされた各軍部の隊長だという者たちが四十名並んで片膝付いて頭を垂れている光景だ。
ハッキリ言って隊長の彼らの名前を俺は覚えていない。と言うか、知らない。ぶっちゃけ今初めて知ったくらいである。本当に今の俺はこうしてたまに命令を気まぐれに出すだけの存在と化していたりする。
これに城には俺の知らないルールとかもきっと制定されているだろうな、と何だか背中がうすら寒くなった。
俺の知らない所で何もかもが決まっていき、それらを俺は全く知る事が無い。誰も教えてくれない。軽くホラーである。
そうやって俺が全然何も知らないのに、こうした集まりの時には誰もが俺へと忠誠を誓った態度で現れるのだ。本当に勘弁して欲しい。
(今回は四天王の強さをプレイヤーたちはもう判っている事だし、目撃したら即座に逃げ出すだろ。それじゃあ話にならないから後方で指揮を執るように言ったけど。プレイヤーが食いつく材料が薄すぎるか)
四天王だけでなく、普通の魔族も充分に強い。それもまたプレイヤーの知る所である。なのでもっと今回の作戦においてプレイヤーを「釣る」為の材料が求められる。
魔族と戦って得る物があると、もしくは自らが初めてこのゲームで魔族を倒したと言う称号を得るのだと言ったプレイヤーたちの欲望を引き出す事を求められる。
そうで無いと戦ったら確実に負けるだろう相手に挑むと言った愚かな事はプレイヤーも流石にしない。だからソレをひっくり返す材料が必要なのだ。
「どうしようか。掲示板に情報を流して誘導を試みるか?いや、それはアカウントを停止されかねない危険があるからできないな。他には口コミ?前みたいにビラを配る・・・のは無しだな。二度三度と同じ方法は面白く無い。プレイヤーに損をさせない様にすれば乗って来るか?アダマンタイトはそれに使える?」
武闘会の時の集まったプレイヤーのリアクションをこの時の俺は思い出した。