何で俺だけ「興味があるの」
どうやら精霊を呼び出す事ができるようになるには特殊な「職業」が必要らしい。それは「精霊使い」といった類らしく、エルフはソレを生まれた時から持って生まれるそうな。
種族特性と言う奴なんだろうと俺は理解した。そしてそこからどうやらエルフの国では小さい頃にどんな精霊との相性が良いかを確認すると言う。
「あー、もし俺が精霊を使役できるとしたらどんなのができるのかねぇ?」
俺は思いを馳せる。それは俺が精霊関連の使用が不可だからだ。俺は「魔王」であるからして「精霊使い」は無理だと言う事が判明したからである。
話はちょっと逸れたが、その相性の良い精霊が見つかると儀式を行うそうだ。精霊を顕現させるものであるらしい。
そこでその呼び出した精霊とエルフがお互いに契約を結んで、晴れて正式な「精霊使い」となると。
マイちゃんはどうやらこの城の書庫でそう言った書物を読んで知識を仕入れたらしい。
(この城なんでもあるな?つか、あり過ぎだろ!・・・いや、「王」の城なんだし、それくらいは在るものなのか?)
そう言えば俺の居る場所は「城」であり、「王」が住む場所であった。なので書庫くらいは在るだろうし、それこそ、その書庫に「禁書」も一緒に貯蔵されていたりすると言った事も在るかもしれない。
また話が逸れそうになる。元に戻すと、そうやって精霊使いは契約で精霊を呼び出す事ができるようになり、自身の魔力を精霊に与える代わりに、強力な魔法を使えるようになるらしい。
「その強力な魔法が俺に通用しなかったんだけど、何か心辺りは無い?ちょっとそこら辺がおかしいなぁ、って気になっていてさー?」
「おそらくで良いでしょうか?あの、きっと魔王様の精神力と魔力の高さが、その精霊魔法が通用しなかった要因の一つかもしれないです。」
マイちゃんが俺のこの質問に答えてくれた。どうやら素で俺は精霊魔法が効かないらしい。
「あの、これも本に載っていた知識なのですが、どうやら精霊魔法は基本的に精神力の高い者には効きにくいと記載されていました。それの理由が、どうにも研究が足り無い様で、曖昧な表現になっていましたが。」
曰く、精霊魔法はどうやら「自然」へと働きかける魔法と言う事らしい。精霊が「こうしたい」といった念を込めた魔力を「自然」へと流し込むとソレが起こると言うのだ。
その「念」と言う部分に対抗できるのが「精神力」と言うステータスらしい。俺はまだそう言った詳しい自身のステータスとやらをまだ一度も見た事が無いので、その数値が幾ら位あるのかが分かっていない。
なのでどれくらい高いと無傷で居られるのかなどの検証は難しいだろう。そもそも、プレイヤーにも「精神力」などと言う項目はあるのか、それとも無いのかを調べてみる所から始めた方が理解が早くなるかもしれない。
(とは言え、そんな面倒臭そうな事はヤル気は起きないけどな。もしかしてマスクデータかもしれないし?)
プレイヤーが確認できない運営だけが見る事の可能な隠されたデータかもしれない可能性もある。
そしてそもそも、俺は「魔王」であるからして、プレイヤーと「共通」か、そうで無いかもまだ全く分かっていないのである。
マイちゃんの説明で精霊という存在がどの様な物なのかはざっくりと分かった。さて、後はである。
「説明ありがとうマイちゃん。それじゃあ次の議題ね。エルフの国に対して兵を出したいと思います。あ、勘違いしないでね?エルフの国とは友好を結びたいから派遣という意味でね。危険がエルフに迫ったら代わりにウチの軍が出撃してコレを撃退、受け持つのね。その代わりにエルフの国はこちらに対して森の恵みをほんの一部でいいから送ってもらいたいんだよねー。珍しい森の素材が手に入ればソレがきっとウチの発展にもつながると思うんだ。」
これでは国家運営シミュレーションだ。いつの間にか規模がデカくなり過ぎて俺が今なんのゲームをしているのかが一瞬だけ分からなくなる。
だけどもボサッとこの玉座の間の椅子に座り続けている訳にはいかない。俺はゲームを楽しむために此処に居るのだ、ログインしているのだ。
ならばこのゲーム世界に入っている間は何でもカンでも楽しまねば損なのである。
「じゃあ、そう言った方向で宜しく。仕事量が過剰にならない様に部下に仕事を分散して効率良く進めてください。人材育成という面でも、重要な仕事とかも部下にやらせたりしてね。失敗をしても大丈夫だし怒らないから。あんまり部下の子たちに厳しい事を言わないように。」
現実社会では平社員、こっちでは「魔王」なんて言う最高権力者だ。なんだかギャップが激しくて俺はここで眩暈を起こし掛ける。
だが、コレは大切な事だ。将来は俺が何かと言わなくとも、部下が何もかもを全部俺の裁可を仰がずに処理する事ができるようになってもらうためである。
正直に言って、今の俺は自分のこの「封印」を早い所に解きたいと願っている。
しかしコレはまだまだ後回しにせざるを得ない状況である。こればかりは仕方が無いので俺はモヤモヤした気分を抑え込んで今日はこれでログアウトした。