何で俺だけ「心の準備がまだです」
その作戦とは「今度は錬金術を極めよう」である。ちょっと説明を飛ばし過ぎた。
「やっぱドワーフが居ればエルフも居るんだよねぇ。貴重な薬草を扱ってるって言うけど・・・」
森の住人、自然の守り人、高貴なる者、精霊の友、弓の名手、などなど。作品によってはその言われ方が多数に及ぶが、その姿はと言うと。
「やっぱり美人で耳がとんがっていて長いのはこのゲームでもお決まりなのね。で、ありきたりだけど鎖国してる、と。」
今回はこのエルフと交渉を出来るようにしよう、という内容である。先ずは鎖国、他種を拒絶していると言う事なので、コレをウチの「武力」でこじ開けようと言う話になる。
そう、訓練の成果が見たいと言った話はこれほどに大きく膨らんでしまったのだ。
「まあ、エルフはどうやら錬金術が得意だって言うからね。貴重な薬草なんかも使って回復アイテムを作れたりとかしたらウチの魔王軍の死亡者の数も大きく減らせるだろうしな。」
どうやら今の俺の状況が軍備拡張シミュレーションに様相が変化していた。物資確保である。今度は延命のための薬と言う訳だ。
幾ら強い武器を得られても、やはり怪我人、死人は出るのが常だろう。戦場は。
「あれ?着々とプレイヤーと「魔王軍」との全面対決が迫って来てる?・・・いや、まだそうと決まった訳では・・・」
危機感は募るが、そうなった時の為にもこうして何事も充実させるために動いた方が後々に後悔しないで済むのだ。ならばここで悩んでいる場合では無い。
「とは言ってもねぇ?実際に動いているのは、現場で指揮を執っているのはミャウちゃんなんだよねえ。俺は未だに一歩もこの玉座の間から出られないし?」
そう、既に作戦は動き始めていた。人選、そして軍の進攻の準備も既に終わっているのだ。
後はここを発ってそのエルフの棲む森へと出発するだけ。その後の事は何ら俺の方からは口出ししていない。
ミャウちゃんの現場の判断、対処で事を進めていく予定なのだ。良く言えば部下への全幅の信頼、悪く言うと、丸投げである。
「だってしょうがないじゃんね?俺がこんな何だから。それこそ、そのエルフがどこら辺に地理的に住んでるのか、場所すら分かって無いしね俺自身が。」
情けない限りだが、コレを言うとミャウちゃんが「全ての些事は我々が」などと言って俺に「気にするな」的な事を言って来てくれるのでもう何も深く考えない事にしたのだ。ダメ上司まっしぐらである。甘やかされパッなしである。
「そしてミャウちゃんに訓練の成果が見たいとか言ってから三日目の今日なんだけど、早くね?」
この玉座の間の扉が開く。そして中に入ってきたのはミャウちゃんと、今回の話の中心であるエルフである。
(いや、流石に俺の方の心の準備が何にもできていないんだが?)
「お初にお目に掛かる。私は種の代表としてやってきた。名をベイルと言う。」
俺はその美しさに目を見張った。女性のエルフなのだが、出る所は出ていて引っ込んでいる所はキッチリ細い。ボンキュッボンのグラマー体型。
顔は目鼻立ちがキリッとしていて異様なほどに整っている。髪は金髪でサラッサラ!であり、その一本一本が内側から光っているんじゃないかと錯覚するほどにキラッキラ!の腰までの長さの長髪ストレートであった。
「うわぁ・・・胸無し細身体型タイプじゃ無くて巨乳肉感的グラマラスタイプですか・・・運営の人たちはエッチですか?」
そのベイルの着ている服はどうやら俺に謁見すると言う事らしくドレスを着ているのだが、これまた体のラインがぴっちり出る代物でなんとも官能的デザイン。
そんな彼女に見とれていた俺なのだが、次のベイルの発言に俺は「はい?」と間抜けな声を発してしまった。