何で俺だけ「余りにもやり過ぎだ」
簡単に説明を纏めると「魔力を込めたこの刀で対象を切る」「込められた魔力が対象の内部へと侵入、侵蝕」「侵蝕された部分が崩壊、魔力へと変換されて放散される」と言った流れらしい。
そして刀に込めた魔力が膨大であればあるほどに、その侵蝕は強力になって対象を一瞬で先程の鉄の棒のように瞬時に消滅させてしまうそうだ。
物体が魔力へと変換されて空気中に放散されて跡形も無くなると言った具合である。
「オッソロシイ物を生み出させてしまった俺に罪があるな。いや、これは本当にヤバい兵器だよ・・・」
自分で彼らに「こんなサイキョウ武器ほすぃ」とかぬかしておいて、こうして出来上がった物の威力に心底震える。恐怖で。
「こちらの武器の威力調整したモノを増産し、軍へと配備しようと考えております。プレイヤーの手に万が一にも渡ってしまわないために本人の魔力を識別、認識し、他人には使えない様にすると言った工夫を付ける予定です。」
この報告にも震える。やり過ぎだ、と。しかしこれを俺は止める事ができない。自分で「軍備増強」と言ったのだから。
「あ、そうだ。本人にしか使えない様にするって言ったよね?じゃあ、これって・・・」
俺は自分が今握っているヤベェ武器に視線を落としつつ今回のプロジェクトチームメンバーの魔族に聞く。
「はい、こうして魔王様の魔力を通した事に因ってソレは魔王様専用となりました。今後とも愛用なさって頂ければ、これほどに我々生み出した者にとって喜びになる事はありません。」
俺は内心で「こんな危ない武器、何処で使う機会があるんだよ・・・」と思ってしまった。
この城にプレイヤーが来て、俺と戦闘になったとか言った場合はおそらくは使う事になるのかもしれないが。
(それでも、俺の今のステータスとプレイヤーのステータスって、かなりの差があるんじゃないか?それこそプレイヤーが最大レベルにまで上げて攻撃スキルも豊富で、仲間との連携を取って来たとしても)
まだ俺の方が圧倒的に強いと思われる。コレはプレイヤーと戦闘をした経験則だ。
(しかも、もしかしたら第二形態とか、第三形態とかに変身できたりとか言う仕様になってる可能性も否定できないしな)
未だに自分のこの「魔王」の仕様の全貌は分かっていない。正直に言ってここまで逆の意味で「酷い」ものだとは俺は当初思っても見ていなかった。
そこにこんな危ない武器を自分の愛用にして、さてプレイヤーがやって来て戦闘になった際にこの武器を振るって良いモノかどうか?
もう既にゲームバランスは崩壊していると言って良いと思うのだが。そこにこんなブッ壊れ性能の武器を、それこそ魔王が持っていて、それを振るってプレイヤーを攻撃するなど正気の沙汰じゃない。いわゆる無理ゲーである。魔王なんて倒せる訳が無い、となってしまうだろう。
「有難う、大事にさせて貰うよ。まあ、振るう時が来ない事を祈ろうか。」
コレは俺の心の底からの、嘘偽り無い言葉である。大事にしてね、と言った魔族の彼に俺はこう答えるしかなかった。
と、ここで先程から沈黙をしていたドウゴンが膝を付いて敗北宣言をしていた。
「ワシの、負けじゃ・・・なんじゃ、あの常識外れの威力は?あの美しい輝きは。ワシの作った物など、霞んでしまうではないか・・・」
どうやらドウゴンは素直に自分の心に正直になったようだった。最初にヤジを飛ばしていた時とは打って変わって、その目は純粋なものに変わっている様に見えた。