何で俺だけ「有り得ない結末」
鞘から刀身が抜かれる前にドウゴンからヤジが飛ぶ。
「なんじゃいその地味過ぎる物は?やはりそこらの有象無象がワシに挑むのは百年早かったんじゃないのか?んん?」
自らの作り上げた作品と比べて余りにも地味な外観に思わずと言った感じである。
コレにその刀を持つその魔族は俺の方へと寄ってきた。
「コレは魔王様へと献上致します。その御手でどうぞこちらを抜き放って頂ければ。」
「え?俺がやってい良いの?うわー!ドキドキする!めっちゃドキドキする!」
大太刀と言って良い長さの刀だ。その大きさは。しかし俺が持つとどうにもピッタリなサイズである。ここらへんも考えってあったりするのかと思ってしまう。
確かに彼らは俺の代わりでこの刀を作って貰っている。この勝負は俺とドウゴンとの戦いだ。ならば作られた作品を俺の物としてこの場で受け取って披露するのが筋なのだろうか?
鍛冶をしてくれたプロジェクトチームの力は俺の「力」でもあるのだろう。そう言った形でこの場で刀を抜くべきだ。
「じゃあ、お披露目と行こうか。」
俺はゆっくりとした動きで刀を握り、そして静かに引いて行く。そこには目が離せない美しさがあった
「うっわ!ナニコレ!刀身がうっすらと青く光ってる・・・?あ!光の加減で虹色!うっそやろ!綺麗だわ~。あれ!?波紋?コレ波紋なの!?おおおおおお!光が揺れて見える!めっちゃスゲエ!」
言葉のチョイスが稚拙過ぎる。自分で言っていて何だが、余りにも魔王じゃない。これではちっちゃい子供のリアクションと何ら変わらない。
そう思いつつも刀身をあっちから眺め、こっちから見つめ、などと斜めにしたり、掲げてみたりともの凄い俺一人で盛り上がってしまっていた。
最初の印象だった地味が何処へやら、その刃を抜き放てば美しさに目も心も奪われた。
こうして俺一人で夢中になっている間、ドウゴンは目を見開いてプルプルと震えている。それが視界の隅に入ってきた。
「あ、ゴメンゴメン!切れ味も大切だよね!ちょっと待って!あ、その鉄の棒俺も切って良い?」
ドワーフの付き人が用意していた鉄の棒、ドウゴンが切った残りはまだ残っていた。それを俺も切らせて貰う。
「さて、切れ味の方はどうかな?どうやらウチのプロジェクトチームも満足のいく作品だから出されたんだし、行けるよな?」
「少々お待ちを魔王様。一つ、注意点が御座います。」
俺がその切れ味を試そうとした所に魔族の方からそう言った言葉が投げられる。
「え?注意点?・・・何かあるの?」
俺はここでワクワクが止まらなかった。もう美しさだけで充分に満足させて貰っているのに、ここに来てまだ何かあるのかな?と。
「魔力をその武器に流して頂ければ、それが分かるかと。」
勿体ぶられた。しかしこれに俺は怒りは湧かない。寧ろ久しぶりに胸のドキドキがMAXである。
俺は魔力を流すって言ってもやり方が分からない。しかしこれはゲームだ。きっと意識すれば勝手にやってくれるだろうと信じて手に意識を集中した。そして刀にも。
するとどうだろうか?刀身が白くなって行く。いや、ちがう。刀身自体から光が発せられているのだ。コレに俺は。
「うっそーん!?なんじゃこりゃぁ!?」
俺だけが驚いたのではない。ドウゴンも、その付き人の四名のドワーフもこれには驚いた。
「なんじゃコレは!?どう言ったカラクリなんじゃい!?刀身自体が魔力を受けて光り輝くじゃとゥ!?」
この叫びはドウゴンだ。どうやら彼の人生においてこの現象は前代未聞の事である様だ。
俺はこの状態のままで鉄の棒へと振りかぶり一閃した。しかしドウゴンの時みたいに鉄の棒は二つに別れない。
コレに俺はどう言う事?と思った。しかし次の瞬間に鉄の棒は「消滅」した。
この刀の刀身と同じ様に鉄の棒自体が光を発し、やがてその光が収まった時、鉄の棒は跡形も無くそこから消えていた。
「やべぇ・・・何だコレ・・・おいそれと抜けないぞ?こんな武器・・・」
結果はドン引き、もろくそドン引き、これ以上無いってくらいに、ドン引きだ。表現の仕方が分からなくなる位に俺は目の前で起きた事に理解を示せない。
「これ、どう言う事?聞いても、いいか?」
俺はコレに魔族の彼から説明を受けようと思って質問をした。