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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
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何で俺だけ「交渉」

 城に住む者の中で物作り、鍛冶が得意な者を探し出さなければならない。だがソレは俺が直接するのでは無く。


「あー、各種族、もしくは集落の長、聞こえてますかー?」


 俺はこうして魔王通信で一斉に連絡を取った。こうして彼らに俺の考えを伝えて人を選出して貰うのだ。

 そしてその時には銀狐族にも声を掛けている。確かモノ作りが得意、繊細な魔力操作が得意だと言っていたはずだ。

 俺が考える思い付きにはこの魔法の腕前が必要である。まあこの時点で上手く行くかは全く分からないのだが。

 やってみる価値はあったので今回の事を機に試してみようといった所だ。


 こうして獣人族からも、魔族からも、鍛冶が得意な者たちが合計で十名集まる。そこに銀狐族の魔法の扱いに長ける者が三名。


「えー、君たちはもうざっくりとした話は一応は聞いていると思うけど、改めて俺から説明させて貰う。」


 玉座の間にて彼らに直接俺の口から詳細を説明した。ドウゴンと鍛冶の勝負をする事、そこにこの城の、魔王軍の軍備増強につながる実験ができるだろう事も。

 そして俺がそこに噛ませてやってみたい事の内容も説明した。コレに彼らの反応はと言うと。


「・・・ドワーフに勝てるとは思えませんが、全力で取り組む事をここにお約束します。」


 と言ってくれた。どうやら彼らは最初からドワーフに勝てるなどとは思っていない様子だ。

 それだけ彼らとドワーフと言う種には隔たりがあるんだろう鍛冶の腕前、その技術に。

 しかし俺の「思い付き」にはかなり面白そうだと言った食いつきを見せてきたのは意外だ。


「我らはその点では得意分野です。確かに研究の余地がありますね。かなり楽しみです。どの様な結果が得られるかは分かりませんが、なかなかに興味を惹かれます。」


 これを言ったのは銀狐族である。なかなかに頼もしい言葉だ。そこに俺は注意事項を述べる。


「えー、今回は別に幾ら失敗をしても構いません。成功の見通しが無くても「できなかった」という結果を得られるだけでもかなりの進歩になるからね。余り肩に力を入れて取り組まないで、気軽に今回の事に取り掛かってください。勝っても負けてもこの勝負はどちらの結果でも気にしないから。まあ、勝った方が嬉しいのは当たり前だけど。この十三名で協力、一致団結して一本の「剣」を製作お願いします。では宜しくね。ドワーフを驚かせられる一品を目指しましょう。」


 こうして一大プロジェクトは発足して「俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ」と言った具合でスタート地点に立った訳だが。

 一番大事な物が無いと言えば、無い。そう、鍛冶場である。ドワーフとの勝負になる訳で、それは当然この魔王城で行われる訳で。

 この件に関して俺はドワーフの付き人四名にこの後で協力を仰いだ。それは。


「えーっと、この勝負を公平に戦うために、二つ、鍛冶場を設けたいんだけど。建てるの協力してくれないかな?ノウハウ、要領が分からないから建設にドワーフの知識と経験を貸して貰いたいんだよね。あ、ちゃんとその見返りは用意するから。どうだろうか?」


 コレに飲み比べ勝負の時に俺へと経緯を説明してくれたドワーフが対応してくれた。ドウゴンはと言うと、部屋でくつろいでいる。この場にソモソモ呼んでいなかったりする。

 ソレはドウゴンが俺に少なからず敵意を持っているから。彼とこうした交渉などできると思えなかったのだ。


「分かりました。我々が協力します。建設する上での立地なども込み込みで考えましょう。鍛冶の炉も我が国での最新をご提供致します。」


 コレに俺は「あれ?」と思ってしまった。幾ら何でもソレは行き過ぎでは?と思ったのだ。だけどもコレに最もらしい「言い訳」がそのドワーフの口から用意された。


「ドウゴン、彼は一流の鍛冶師です。彼の腕に見合った炉が必要でしょう、剣を一振りと言えど打つのなら。であれば妥協はできません。勝負において互いの条件を揃えると言うのは大事な事であります。我が国の威信もここには含まれておりますので、どうぞお気になさらず。」


 要するに、この俺「魔王」と積極的に仲良くしたいよ、と言葉の裏で言っていると見なしていいだろうこのドワーフは。

 それこそ勝負で相手に要求を呑ませようとするのでは無く、本当は最初からこうして交渉事でドワーフの国は俺と仲良くしたかったのではないだろうか?

 試しにここで俺は少々大盤振る舞いをして様子を見てみる事に。そもそも彼らはプレイヤーが持ってきたアダマンタイトを定期的に俺の所から得たい、といった魂胆からこうして魔王の城まで来たはずだと俺は予想している。ならば。


「では後程にこの鍛冶場建設の「見返り」を用意させておくよ。キリアス、ちょっと良いかい?」


 俺はキリアスにアダマンタイトを一抱えもある大きめの袋に満タンに詰めて、後でこのドワーフに渡しておいてくれと頼んだ。

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