何で俺だけ「ソレはいくら何でも」
「で、負けた訳じゃ無いって言ったけど、じゃあどうするの?」
俺はドウゴンへと問いかけた。飲み比べ勝負だったはずだ、俺が受けたのは。それに負けているドウゴンが次に何を仕掛けてくると言うのか?
確かに勝負は一回だけ、などと言った覚えは無いし、他にも別の勝負を持ちかけて来ても俺はソレを受けようと思ってはいた。
こう言った相手の場合は徹底的に納得をさせなければ負けを認めないものだ。そしてその場合、相手が出してくる得意な勝負に徹底的に勝つ事で、有無を言わさない所まで追い込まないとならないのである。
「次は鍛冶の腕前だ!ワシが作った物と、お前さんが作った物で勝負だ!」
俺は一瞬何を言われているのか分からなかった。俺は鍛冶の技術何て持ち合わせていない。それを分かっているのか、いないのか、鍛冶勝負をやれと言ってくるドウゴン。
「あー、俺はそう言った職人技術を持っていないし、その勝負はどうなんだろうか?」
「お前さんの一番信用の置ける者を代理に出せばええじゃろが。」
てっきり俺は鍛冶勝負なんて免除されるものだと思っていた。思考の死角を衝かれた感じである。
だがこのドウゴンの言い出した勝負は付き人ドワーフ四名には受け入れられないものである様で、その顔つきは苦いものになっていた。不満だと。
既に飲み比べ勝負で負けているのである。ドウゴンはもちろんそこで勝つ気でいたんだろうが、こうして見事に負けてしまってからの鍛冶勝負である。
見苦しい、と言った感じなのか。ドワーフの気質からするともしかしたらこの行動はどうにも許しがたいものなのかもしれない。
俺が「魔王」である事は相手も分かっているし、物作りなんてできる訳無いと思っているはずだ。そこに鍛冶勝負を挑むと言うのはどう考えても卑怯だと言った具合か、大人げない、と言った感じなのか、お付きドワーフ四名のドウゴンを見る目が昨日と比べると冷たいものになっている。
「あー、そうか。代理ね。分かった。選出する時間をくれないか?その勝負は受けるとしよう。で、こちらが負ければ勝負の件は一対一で、三度目はどんな勝負になるのかね?それで決着かい?」
ここでは話を先に進める事を優先で良いだろう。そして本職のドワーフに勝てるとは思えないので、ここでこちらがその鍛冶勝負を負けた時の後の話を持ち掛ける。
「・・・そうじゃな。その時にはお前さんとワシの殴り合い勝負じゃ。それでケリをつけてやるわい。」
ちょっとした間が空いたが、ドウゴンはそう言った。コレで言質は取った。ならばもう鍛冶勝負に真面目に取り組まないでもいだろう。
何て事は思ったりしない。鍛冶の腕前が高い者を選出してドウゴンにぶつけてみるのが面白そうだ。もしかしたらいい勝負をするだろう者が見つけられるかもしれない今回の事で。
そうなれば武具製作ができたりして軍備増強につながるかもしれないのだ。ガチで選ぶべきだろう。素質がある者が見つけられたら儲けもの、ぐらいの気持ちでいた方が良いか。
だがこちらの代理を一人だけ選ぶのでは面白く無い。ここで俺はドウゴンに挑発をしてみた。
「ドウゴンはそもそもドワーフの中でも一流、名工だと聞いたんだが、ハンデを貰えないか?流石にそんな相手と製作物勝負などをして普通に勝てる訳が無いからな。こちらは複数のメンバーを選ばせてくれ。そしてドウゴンに挑ませてもらいたい。」
褒める、そしてプライドを刺激して見た。すると簡単に乗ってくる。
「ええじゃろう。ワシに敵う鍛冶の腕前を持つモノなどお前さんの所にはいないじゃろうからな。纏めてドンとかかって来るが良い!」
こうして俺は人員を厳選、選出するまでの間、ドワーフたちを手厚く持て成しをするようにキリアスに頼んでおいた。
「さて、ちょっと色々と思い付きを試してみたいから、それが実行できそうな奴らを選び出さないとなぁ。」