表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
142/638

何で俺だけ「次なる大事」

 良いご身分だな、と独り言ちてしまう。昨日は戦闘訓練の件を通達してからログアウトしている。

 俺は「魔王」という立場だからそんな物なのかもしれないのだが、中身の俺は偉そうに命令を出すなんて柄じゃない。

 自らに振られた仕事を淡々とこなして横に流す、そんな毎日を会社で送っているのである。本当に柄じゃない。


「おいおい、お前さー?いくら何でも仕事早く終らせ過ぎだろ?休憩入れてねーのかよ?ずっと画面と睨めっこって、詰まらねーやつだな?」


 以前にゲームを始めたからと言って俺へとレベリングを頼んで来た?奴がまた俺へと絡んできた。

 しかし仕事の邪魔だ。俺は無視してそのまま画面へと規定の数値、数字を打ち込み続ける。


「お前この間のイベント出たかよ?俺は良い線まで行ったんだけどよ、結局は前々からやってた奴らには勝てるはず無いっての!あれは運営の調整がどうかしてるぜ。俺みたいな初心者に新設設計にしろや、って感じだ。で、お前はどうなの?もしかして本戦出場してたとか?」


 課金でキャラの見た目を「イケメン」にできて、現実とは全く別物の顔にできるのだ。ゲーム内で顔を合わせても自らバラさない限りはその正体を分かるはずも無い。

 ソレを理解しているのか、していないのか。こいつは俺にそんな質問をして来る。


「何だよ?さっきから黙りやがってよ。俺が聞いてやってんのにさー。愛想ねーな。お前が俺の手助けをしてレベル上げに協力してれば俺だってもっと強くなって本戦出場できたかもしれねーのに。そしたら有名人になれたじゃん。お前のせいだぞ?ったくよー。」


 頭の中がこれほどにちゃらんぽらんな奴と何を会話しろというのだろうか?俺には無理である。そもそもこいつの名前すら憶えていない。


「そう言えば聞いたか?何でもよ、魔族?って言う敵キャラが強くて勝てねーらしいぜ?しかもソレがついこの間は滅茶苦茶大勢空飛んでるのを目撃例が出てるってよ?空飛べるとか俺もできるのかね?いや、できなきゃ不公平だろ。凄くねーか?魔法使いなら空飛べそうじゃん。俺もできるようになるぜ絶対に。うらやましがるなよお前そん時は。」


 コイツは俺に何をしたいのかと。先程から俺が何も返さずとも勝手にベラベラとお喋りを続けている。


「それによー?何でも、森の中に幻の種族が居るとかなんとか。マジでヤバくね?ちょっと俺も見てみてーからその情報で今度そこに向かうつもりなんだわ。つか、お前今どこ等辺までストーリー進んでる訳よ?教えてみろよ俺によ?」


「スタート地点から全く何処にも行けてねーよ。話が終わったならさっさと仕事に戻ってくれ。」


「うっわ!ダッサ!?マジでお前弱っちのかよ!それなら俺の頼みを断ったのは納得だわー。俺なんて滅茶苦茶順調に進んでるのにな!お前みたいなお荷物抱えて冒険とかマジあり得ない!何?戦闘センス皆無なの?ぷぷぷ!ぶきっちょ?あ、アレかもしかして生産職とか言うやつか?お前ゲームの中で物作りとかシステム嬲ってちょちょいのチョイで作れる物に何がおもろいのかね?冒険してこそじゃないの?普段できない事で暴れられるからこそゲームなんじゃないの?お前とは相容れなさそう、ぷぷぷ。」


 俺の事情も知らないで良くそこまでペラペラとものが言えると逆に感心する。相手の事を下に見て、馬鹿にして、面白がって、それで自らの評価がどれだけ下がっているのかを認識できていないんだろう。

 俺がその事をこいつに指摘してやる義理も無いので何も言わないが。


「おっと、弱っちいザコと話しても何ら身になる話はできなさそうだなこれ以上は。俺が今度お前に戦闘のレクチャーしてやんよ。俺がストーリー進ませてやるって言うんだ。感謝しろよ?あ、お前みたいな奴が他人に頼ってゲーム進めるのって確かアレだろ?キセイって言うんだろ?ぶふっ!お前にぴったりじゃん?あ、休憩時間終わるわ。じゃあな、キセイ君。」


 別にこんなアホにどれだけ何を言われても俺は別段怒ったりはしない。俺はそいつがやっといなくなった事で作業に集中できる。


「毎日コツコツポイント集め。うん、全然前に進めていないな、確かに。でも、別の部分でどんどん肥大化して行ってるよ。どうこの先これを扱って良いものか・・・悩むよなあ。」


 まだまだ拡大の様子が止まらない状態の「魔王軍」である。ハッキリ言って俺の手に余る、というよりは、もう既にこぼれて独り歩き状態だ。

 そして俺は今日もいつも通りに早上がりの後は一通りの事を終わらせて「魔王」へとログインした。

 そして早々にキリアスがこう報告してきた。


「様々な獣人族が魔王様の庇護下に入りたいと言って城に押しかけてきています。どうなさいますか?」


「え?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] NPC?に感情あるなら 当然、こうなるよねぇ 理不尽なしで保護してくれるなら 口コミで広がるもん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ