何で俺だけ「危険予知と乙女」
シャールにはライドルの事を俺が説明をした。各地へと散らばって住んでいる銀狐族を纏めて保護する事も。
なのでそこでその他の銀狐族の住処を聞き取りもその時にしている。この情報を直ぐに部下たち全員に連絡をし、護衛と言った点も含めて大勢で向かわせた。
護衛と言うのはもし万が一そこでプレイヤーと遭遇した時の為である。とは言え、未だに掲示板の方にはプレイヤー間で銀狐族の件でスレッドが立っていないばかりか、その情報すら一切出ていないので心配をし過ぎかもしれないが。
「分かった。魔王、貴方にこの婚姻の話は預けておく。ライドルは貴方の部下、なら今の魔王軍の状況からしてもっと安定した時に話を進めて欲しい。今はそのプレイヤーとやらが私たちを狙って来るという話を信じる。」
シャールの所が今まで住んでいた場所からここに引っ越す決意をしたのも、そのプレイヤーが接近してきているというのを察知したからなのだが。
ソレは戦闘になると判断して緊急での決断であったそうだ。その際のシャールが補足したプレイヤーたちの動向はどうにも「戦闘狂」と言った様相だったらしい。そいつらと遭遇してしまえば被害が出る事は免れない、と。
そのプレイヤーたちは森で出会う対象を手当たり次第に殺して回っていたという事だった。その事実にどうにも危険予知が発動したらしい。それがシャールの特殊な能力だという。
「この力があったから、私は長になった。そしてその時の周囲からの大胆過ぎると言われて批難された決断は間違っていなかった事が証明された。」
シャールは感情の起伏無く淡々とそう言葉にする。
「あー、その証明って、俺が他の集落の銀狐族も全て残らず保護するって言った事?」
コレにシャールがこくりと頷いた。
「えーっと?俺はまだ銀狐族の他の人たちを見た事無いけど、皆子供みたいな容姿ってホント?大人でも?」
この俺の次の質問にも、またしてもシャールは返事はこくりと頷くだけ。無口。
他の別の地域で生活している者たちもどうやら同じく子供な見た目らしい。獅子族の血の力を取り入れたシャールの部族の者が他の集落にでも嫁いで行ったりしてそうやって広がって行ったようだ。
「ライドルは四天王になった程の強さ。その血をもう一度得られればもっと銀狐族は強くなれるはず。見た目で侮られるような事が起きても純粋な力を見せて馬鹿にして来る者たちを見返せる。」
どうやら種族の強化、といった面でライドルとの婚姻をシャールは進めたいらしい。それと、見た目にどうにもコンプレックスを抱えているようだ。
「あー、昔あったロマンスの件を考えると、ちょっとソレは考え物だなぁ。お互いにちゃんと好意を持って結婚はしてほしい所。夢見すぎかね?」
俺のこの呟きをシャールは聞こえていたらしく。
「まだ一度も会っていないから好きになれるか分からない。私も出来得る事なら、夫になる相手をちゃんと好きになって夫婦になりたい。」
乙女だった。冷たい印象だし、獅子族の力をもう一度自分たちの種族の血に入れて力を増したいという理由は語ったが、この言葉から分かるのはシャールはちゃんと個人で見れば乙女である。
「話は変わるんだけど、どう言った事ができるの銀狐族って?」
俺は話題を変えてシャールたち銀狐族たちがどんな力が使えるのかを教えて貰おうと聞いてみる。
「魔力の精緻な操作が可能。細やかな作業はお手の物。手先が器用。魔法が得意。皆魔力が高い。」
「へー、そうなのかぁ。それじゃあこの城に住むうえであったら便利だな?って思う道具とか作れたりする?」
俺は「器用」と聞こえた所でパッと思い付いた事をシャールへと提案してみたのだった。