何で俺だけ「求めに応じよう」
この城は魔族だけでは無く、獣人も住んでいる。ライドルが獣人であるのでそこら辺もあって移住を希望する者たちは集められるだけ一緒に集めて回っている。
で、何でこんな事を説明しているのかと言うと。もう一人、今日の長は獣人だったからだ。
「私は別に魔王の強さを疑う訳じゃ無かった。けれども、これを見させられたらもう納得する以外の事ができない。」
この場にはゴツイ魔族の他にもう一人、銀髪碧眼のちびっこが居た。どうやら「銀狐」という種類の獣人であるそうだ。森を中心、しかも大分深い所に住んでいたと言う事なのだが、プレイヤーたちが押し寄せて来る事を事前に察知、そして魔族が人を集めていると言った情報を独自に入手してコンタクトを取って来たという経緯らしい。
「はぁ、はぁ、はぁ、俺の負けだ・・・いや、勝負にすらなっていなかった。」
床には大の字で寝転がって息の荒いマッチョ魔族がそう呟いた。そう、俺はこの力試しを言ってきた魔族と先程迄ずっと手合わせをしていた。
当然の事ながら、俺の方が断然強いので、この魔族の力量に合わせて力を調整しつつ、その力を少しづつ上げながら時間を掛けてバッチバチに殴り合っていた。
「えーっと?獣人の君も、魔族の君も、お互いに協力し合って生きて行こうね?いがみ合っていてもしょうがないし、一緒に生きて行く仲間として互いを受け入れて行ってくれ。」
「私は別にその様な敵対意志は最初から持ち合わせていない。大丈夫。部族が平和に暮らせるようにするのに協力は惜しまない。」
銀狐の長はその姿は子供なのだが、大人びている。あとそれから何故か喋り方がキッチリカッチリしていて冷たい印象だ。
とはいえ、この言葉で別にこの城に住むのに問題は起こさなさそうなので安心はしている。
で、まだまだ問題は大の字で起き上がれない程に体力を消耗しているこっちの魔族の方だ。
「なあ?これからもこうしてちょくちょく手合わせをして貰っても良いか?長としてこのまま情けないままで引けないんでな。ウチの所は力を示す事が一番大事だ。このまま負けっぱなしって言うのも他の奴らに舐められちまうしよ。」
段々と息を整え始めてそう俺に頼みごとをして来るマッチョ魔族。これには俺も仕方が無いと考えて答える。
「まあ、良いよ。時間が合えばね。それじゃあ、これからもよろしくね新しい住人として。」
謁見は終わるのだが、じっとこちらを見つめてくる銀狐の長。
「えーっと?何か伝え忘れた事があるのかな?いいよ、遠慮無く言ってくれ。別それが俺を馬鹿にする言葉でだって一々怒ったりする事は無いから。どんな些細な事でも良いよ。言いたい事でも、聞いておきたい事でも、この場で答えられる事ならいくらでも対応するし。」
「・・・私の名前はシャール。獣王ライドルの遠い親戚。今度彼に会わせて欲しい。」
「・・・え?マジで?君って、あ、そうなの?会わせるのは別に構わないから話は通しておいても良いけど。一応はいつになるか分からないよ?それと、何で会いたいのかを、ここで聞いておいてみてもいい?あ、本人にしか話したくはないというのであれば無理に聞かないよ。」
俺はここでちゃんと銀狐の長シャールが何故ライドルと会いたいと言ってきたのかをここで聞いておいて良かったと思った。心底。
「魔王、貴方は不思議な存在。それだけの力を持っているのに私たちの様な弱い者にそこまで下手に出る。でも不思議と落ち着く。」
そう俺への評価を言葉にしてからシャールはライドルに会いたいと言ったその理由を説明してくれた。