何で俺だけ「いずれはもっと大きくなる?」
アレから三日経った。あの「事件」は既にプレイヤーたちの間に広まり、有名な話となっていた。
プレイヤーたちはその掲示板内で「運営の対応が恐ろしい」という結論を出していた。
このゲームを遊ぶ者たちは誰もが誰も魔王に「中の人が居る」とこれっぽっちも思っていないみたいだった。
そして魔族に対しても今回のプレイヤーへの「処刑」は決められた行動でしかないとも。
コレは魔族が独自の判断で動いている、と言った思考になっていないと言う事である。プレイヤーはあくまでも魔族を只の「キャラ」としてしか見ていない。
俺は魔族たちと関わっていて何となく「独立」した存在なのだと既に感じてはいた。
「今回の事も何故かプレイヤーたちは「イベント」だと勘違いしてる奴らも多くいたしなあ。いや、俺の事を疑うためのきっかけも情報も無いのであれば致し方無いのか?」
俺はここ三日は別段ルーティーンを変えずに生活している。仕事は早めに終わらせていつものように早上がり。
ログインすればミャウちゃんと日課の稽古をして、そこにはキリアスも混じるようになったくらいだ。
俺の「権限」で動かせる魔物をプレイヤーへと早々にぶつけてポイント稼ぎを狙いつつ、手に入ったポイントが一定数に溜まったら順番に魔族たちに与えてパワーアップを図る。
「ああ、変わったと言えば。増えたなぁ。俺はこれだけの人数をちゃんと管理できるのだろうか?」
助けた子供の魔族の棲んでいた隠れ里の人員の全員がこの城に引っ越してきていた。
当然俺が勧誘を掛けたからなのだが、その時には軽い気持ちでそう声を掛けたのであり、これを管理するという点を全く考えてはいなかった。
かなりの大人数が来てビビり、やっとその時に自覚をして背中に冷たいものが伝った事をよく覚えている。
「まだ若干の余裕が御座います、所じゃ無いんだよなあ?もの凄く余ってるよまだまだ。それにしても、城も大分賑わうようになった。」
この城の面積は膨大だ。俺はまだこの部屋から出る事は叶っていないが、それでもこの城内の話を聞けば聞くほどに広過ぎる!と感じる。
以前に助けたベルガーンの守っていた子供達は今はもうすっかりとこの城に馴染んでいる。
その子供達に色々と新入りの世話なども頼んでおり、その際に聞かされる城の規模に初めは眩暈がしたくらいだ。
「野球場位に広い訓練場、超巨大な台所に、もの凄く豪華な部屋が十数部屋?庭園も迷子になりそうなくらいに広大で、畑もあるし、湖もあるとか言ってたな?城の裏には鉱山あるしな。あ、ついこの間には巨大な森もあるとか聞いたな?あとは宝物庫があるのは判っていたけどね。うん、想像するだけで頭が痛いよ。」
この他にもリビングルームに客間もあれば、寝室も別にあるし、更衣室もとなればもう何が何だか分からない。
「この玉座の間も充分に広いんだけどな。まるで俺が閉じ込められた籠の鳥みたいだよ。」
そんな場所だからこそ、まだまだ魔族の収容は可能である。
「全く何人入れられるんだろうな?この城は?今後とも姿を隠して暮らしている魔族をもっとこっちに引き入れる事になるんだろうけど。本格的な国の運営シミュレーションになる?あ、やべ、マジで頭痛い。」
これからも戦う力が弱い、或いは無い魔族たちがプレイヤーに見つかる前にこちらへと引き入れる予定だった。
これからどれだけの数が増えるのか想像もできない。もしかしたら経営シミュレーションを飛び越えて国家運営シミュレーションになる可能性がある。しかもその先を見据えれば。
「戦争・・・か?いや、集めた魔族たちに死んでは欲しく無いし・・・あら?そうなれば魔族の強化は必須?」
魔王の封印を解くのが増々遠くなっていく。しかしそれを俺はぐっと呑み込んだ。
「ええい!最初からシミュレーションゲーだったんだ俺だけは。楽しむと決めたじゃないか!ならやるだけやらなきゃならんだろうが!しっかりしろ!俺!」