何で俺だけ「その後の」
その後、ゲブガルにやられたプレイヤーの彼らは情報を他のプレイヤーへと共有した。そしてゲブガルへのレイド戦を仕掛けるために仲間を募った。
魔族は基本自らの持つその強大な力に自負を、矜持を持っている。神の兵など物の数ではない、そう思っている節があるのだ。
群れなければ魔族を倒せない弱い存在、そうやって魔族は基本プレイヤーたちを下に見る。でもそう言った部分もありながらゲブガルは油断はしない。しないうえで魔王の偉大さをプレイヤーたちに知らしめるために慈悲だと説いて彼らに選択させる。一時撤退をしても構わない、と。
ゲブガルのそう言った目論見、それらは大抵通じない。最初に攻め込んできたパーティーの他にも三つのパーティーがゲブガルの元へと攻め込んできていたのだが、その全てが最初のパーティーと同じ、全くと言って良いような同じ末路を歩んでいた。
その返り討ちに遭った者たちの情報も併せて、より精度の高い情報になったとして、プレイヤーたちは決起した。そう、レイド戦を仕掛けるという。
しかし彼らの情報はまたしても一歩、遅かった。魔王が既にこの時、ゲブガルの強化を終え、そして拠点を強化してしまっていた。
コレが残酷な結末をプレイヤーたちに与えることになる。レイド、その人数で道中の魔物も、罠も踏み抜いて、砕き散らせて強引に進むつもりでいたプレイヤーたち。
しかしそんな事を許さぬほどに、ゲブガルの拠点とするダンジョンは凶悪化していたのである。
彼らは拠点攻略を甘く見過ぎていた。その結末が罠によるプレイヤーの大量脱落であった。次々に極悪非道の罠が彼らを襲う。
この罠の設置や強度などはゲブガルが自ら考え、拵えているのだ。これらの侵入者に容赦無い罠の数々は四天王一の弱者であるゲブガルだからこそであった。
彼は自らが弱い事を知っていた。そしてソレを自らの強みだとも考えた。そう、自分は驕る事無くプレイヤーと言う存在に向き合う事ができると。
そして彼は罠を、強力な魔物では無く罠を、自分が信じる事ができるモノだと決めているのだ。
自身で考え、設置したそれらの罠は、強者がこれらを前にしてどの様にして動くのかを深く想定して張られている。
弱者だから油断は無い、弱者だから強者の見えぬ所まで気を配って配置をする事ができる。
この強みは魔族には珍しい事だった。いくらゲブガルが四天王の中で最弱とは言え、強化をする前でもプレイヤーの十人や十五人程度が固まってやって来ても押し返す事ができる位は強いのだ。
なのに彼は、ゲブガルは自身の弱さをしっかりと把握している。それこそ、それが自分が掛かっている呪いだとでも言わんばかりに。
そんなゲブガルが魔王から受けた強化で驕るか?と言われれば、それはあり得ない。彼はより一層、魔王への貢物としてプレイヤーを屠り続けるための努力をもっとする。
そしてこうして魔王からの強化を受けた事でより一層凶悪な罠を仕掛けられるようになり、それらを早速仕掛けたのだ。
コレがプレイヤーにとっては地獄となった。30人集まったレイドパーティー。これらはこの拠点でほぼ半数迄減ってしまう。
想定していない罠、罠から罠への連続発動、罠への誘導、息もつかせぬ怒涛の連続で彼らプレイヤーは次々に沈んでいく。
「最初に来た時にはこんなの無かった!ふざけんじゃねーよ!どう言う事だよぉ!?」
そんな叫びは虚しいだけだった。このゲームの仕様上、レイドとして戦う際には難易度が上がる仕様となっている。
この様な人数で攻め入れば、本来なら1パーティーでも極悪な罠たちが、レイドパーティーになった事に寄って筆舌に尽くしがたいモノとなったのだ。
もう、このパーティーは破滅へとまっしぐら、それを半分となった人数で今回の作戦に同行した者たちは悟った。