何で俺だけ「処刑風景」
草原、プレイヤーが集まっていたその場所は今は地獄絵図と化していた。しかしそんな状況であるのにもかかわらず、そこには美しい光が発生していた。
今この場では「処刑」が行われている。一人の魔族によって。そんな一人を相手にしているプレイヤーは五十もの数が居ても手も足も出ずに捕縛され、身動きを一切封じられてこの「処刑」を受けさせられていた。
一人、また一人とこの場に集まった仲間が消されていくその光景に、プレイヤーたちの中から見苦しい言い訳をし始める者も現れる。
曰く「そんなつもりじゃ無かった」、曰く「俺は本気で参加した訳じゃ無い」、曰く「まだ俺は何もしちゃいない」、などなど。自分が今この場に残っている時点でその様な言い訳は通らないと言う事が分かっていない者たち。
そんな中で悪態を吐く者たちも居る。こう言った者たちも結局はこの場にこうして居残っている時点でお話にならない。
「何で俺がこんな目に合わされなきゃいけないんだ!」
「こいつらが全部悪いんだ!俺じゃ無くこいつらだけにしてくれよ!」
「俺はあの餓鬼に何もしちゃいねーだろ!離せよ!」
こう言った者たちは魔族が最初に九名飛来して来て交渉、要求をしている時点でその場から去るべきだった。それが境界だった。自分が今助かる為の。
ソレを見極められなかった時点で彼らに救いは無いのだ。魔族が引き戻り撤退した際に勝鬨を上げていたのだから。
ならば、この様なプレイヤーたちに対しての報復に容赦など与えない。「正義の味方」の姿のミャウエルがこの場に居るプレイヤーたちに与える慈悲は無い。
そしてプレイヤーたちは今、勘違いしていた。自分たちがやった、これからやろうとしていた「魔族の子供を人質に取る」というプレイスタイルは運営から「アカウント停止」をされかねない行為だったと。
このゲームの世界は自由度が高い、だからこそきっとこの行いも許される。そう思っていた者たちはその考えを改める事になる。
以前に迷惑行為を行っていたプレイヤーを取り締まっていたこの「正義の味方」を、運営が操っているキャラだと勘違いしていた。
ここで即座にアカウント停止をするのでは無く、この場でこの様な「悲惨・凄惨」な強制ログアウトをさせる事に因ってプレイヤーへの「警告」の代わりとしているのだと。
「うげろげろげろげろぉぉぉおお~」
誰もかれもがそうやって気分を強制的に悪くさせられて光の粒となって消えていく。ミャウエルの「糸」にこの場のプレイヤー全員が拘束されて次々に、そして一人一人が光の粒へと変換されていく、見せしめの如くに。
そう、今順次消されているプレイヤーは「ランナーズ」たちが受けたあの時の「拷問」を受けて強制ログアウトにまで追い詰められて消滅している。
「なあ?これってもしかしてさ?俺たちに悪行を行うと神罰が下るよ?っていう神様からの忠告なのかね?」
「あー、確か俺たちって神様から力を受けて魔王を倒す派遣された兵士って言った立場だっけ?」
「そんな俺らが、幾ら打ち倒す相手が魔族だからって言っても、道を外した方法を取ると神様の評判も落ちるってか?」
「そういう裏設定ありそう、って言うか、今から俺たちが受けるのは高い確率でそれっぽい感じ?」
冷静に自分たちの今の状況を見つめて分析するプレイヤーたちも中にはいた。
しかしこの会話は根本から思いっきり外れていた。それを指摘する存在はこの場にはいない。
こう言ったプレイヤーたちは見事に「正義の味方作戦」にまんまと踊らされていると言う事である。
命乞いをする者、自分は悪くないと喚く者、悪態を吐いて暴れようとする者、現状を受け入れて冷静に考察する者、何もかも諦めて大人しい者、などなど。
その誰もが平等にこの場で順番に光と変えられていく。そしてとうとうそれらが片付いた。
こうして後は元凶の六名を残すのみとなった。