何で俺だけ「最悪の流れ」
俺に報告があると言ってミャウちゃんがやってきた。しかも大分深刻そうな表情だ。
いつものミャウちゃんならばポーカーフェイスだろう。しかし今は本当に心の底から嫌悪感を滲ませた顔となっていた。
「申し上げます。どうやらプレイヤーたちに動きがあった模様です。それが・・・」
俺はその内容を聞いて心底に嫌気がさした。どうにもキリアスと「囮」の事で話した時の一番最悪なパターンを報告されたからだ。
「よくもまあ恥も外聞も無く、そんな事できるよなぁ?ホント、マジでプレイヤーって救えねえ。」
プレイヤーの動向を俺が注意事項を連絡した後にずっと探っていたらしいミャウちゃん。
仮面を付けて「正義の味方ごっこ」バージョンで各地に赴いてプレイヤーたちの会話を拾い続けていたそうだ。
「御苦労様、ミャウちゃん。この情報はもの凄く重要だ。俺の方でも調べてみる。ちょっとログアウトしてくるわ。皆には焦らずジックリ様子を見る様に、俺が戻って来るまで動かない様に言っておいて。」
俺はこれまでずっと掲示板は覗いていたのだが、その掲示板は「総合」の所を中心にしていた。
幾つもあるお題の中で全体をあくまでも把握するためだったのだが。
「お題を絞ってもうちょっと「深め」の所を探ってみるか・・・」
俺は一旦現実の方へと戻って情報端末から検索をかける。するとあれよあれよと出て来る、ミャウちゃんから報告を受けたものより濃い話し合いの中身。
「なんだよ・・・マジで腐っってやがる・・・おっと?どうにも俺は「魔王」なんかやってるせいで感情が魔族寄りになってるな完全に。コレはゲームだ。そうだ。・・・だけどなあ?」
あんまりにも汚いやり口が掲示板に羅列されているものだから反吐が出そうになった。コレに俺は「本当にこいつら、俺と同じ「人間」なのか?」と。
しかし自分がプレイヤー側だったとしてこれを眺めていたら、きっとそんな不快な感情なんて浮かばずに「面白い」だなどとのたまっていたのだと思う。
「さて、どうやら方向性は決まってるみたいだな。お?そうか、そういう手でやるつもりか。ならこっちは容赦しないぜ。」
掲示板を読みふけっているとそのプレイヤーの作戦がこうして決まったのは偶然から始まった事だったというのが判明した。
しかしながら、俺はその経緯を読んでいて胸糞悪くなった。そんな事をするなんて普通の感性を、道徳性を失ってはいないか?と。
「後でミャウちゃんに魔族の生態とかを聞いてみたりした方が良いな、こりゃ。しかし今回の事を解決してから、だな。」
俺は一旦知りたかった情報は粗方集められたので目の前に浮かぶ画面を消すと再びログインする。
「さて、ミャウちゃん、ちょっといい?」
俺はずっと待ってくれていたミャウちゃんに対して今回の件を調べて得られた、プレイヤーがどの様な作戦を立てているのかの話をする。
そしてそこで俺はミャウちゃんに「正義の味方」をやってもらう事を頼んだ。
「はっ!お任せください!このミャウエル!与えられた役目を必ずや遣り遂げて見せます!」
気合十分、それ以上なのはきっとプレイヤーたちに怒りを覚えているからだと思う。
こうしてこちらはプレイヤーたちを逆に「嵌める」作戦を開始した。