何で俺だけ「軍らしくなってきた所に」
俺の前に整列する15名の魔族たち。彼らを一体どこでスカウトしてきたというのか?ミャウちゃんに聞いておきたかったが、それは止めておいた。
「はい、じゃあ新たに内に入ってきてくれた皆には三人一組になって行動して貰いたいと思います。あ、ミャウちゃんの方から「守るべき事」は教えてある?あ、ない?じゃあ俺の口からちゃんと説明しないとね。」
俺はベルガーンたちに出した「命令」をここで説明する。もちろん「死んではいけない」「粘らない」「逃げてこい」という中身の話である。
やはりこの話をすると魔族たちは一斉にがやがやする。どうにも「魔王」の中身を知らない事で皆自分の中の魔王像と懸け離れている事に困惑を出してしまうようだ。
「それで、後は自由。各々で自己判断で動いてくれていいよ。あ、休息もちゃんと数日に一回は入れて心身共に回復させるように。じゃあ、後の運用はミャウちゃんに任せるから。」
俺は後の事を全てミャウちゃんに丸投げした。そもそもだ、俺はこれほどに膨れ上がった人数をまとめ上げる手腕を持っていない。
だから自由に動いてくれ、などと言って責任逃れをしようとしてしまう。
こうしてミャウちゃんが今後の事を早速ここで口にする。
「各地で部下たちにプレイヤーの襲撃をさせ、魔王様の封印を解くための一助をと考えておりますが、如何でしょうか?」
俺へと今後の方針を語るミャウちゃん。プレイヤーへと襲撃をし、どうやら積極的にポイント集めをしようと考えているようだ。
「うーん?どうなんだろうなあ?積極的にこちらからプレイヤー狩りをすると、あっちもそれなりの対応をして動いて来ると思うんだよなあ。それが過剰に膨れ上がったりすると厄介だ。一組、一日一人を目安にプレイヤーを倒す、って事にしておいてくれない?あんまりにも短時間で大勢のプレイヤーをやっちゃうとソレは問題になると思うんだよねえ。」
ミャウちゃんの提案に俺は「焦りは禁物」と諫める。どうにもミャウちゃんは過激思考の持ち主なので、ここで一気にプレイヤーたちに「お祭り」を提供しかねない。
そう「魔族を倒せ!」の気運を高め過ぎてしまうだろうと考えられた。それが一気に高まるのはどうにも頂けないだろう。
その時まではジックリ、じんわりと粘ってポイント稼ぎを続けたい。その稼いだポイントで部下たちの強化を少しでも続け、戦力増強を狙っておきたかった。
「プレイヤーと魔族の全面戦争するにしたって、まだまだ数が少ないしね。・・・あれ?全面戦争?うへぇ?」
俺はそう遠くない未来にそれが起きる事を想像してしまい辟易した。
「平和にゲームを楽しめないのかねぇ?今度は戦争シミュレーション?やだやだなぁ?」
俺は小声でぼやく。しかしこのボヤキは小さすぎて誰にも聞こえていない。
「さて、ミャウちゃん。目立つのは無しだ。ゆっくりとポイント稼ぎをしよう。それと、軍への勧誘もみんなで同時進行で少しづつ増やしていきたい。人数が増えれば少しづつ編成をしていってどんどんと部隊を作っていこう。そう、ちょっとずつね、ちょっとづつ。」
魔王という肩書ですることとして、こんなにみみっちい事をするとは考えてもいなかった。
もっとド派手にババーンと登場して、そしてドッカーン!と活躍、プレイヤーたちの度肝を抜いての御登場!って感じを最初は思っていたのに。
「地味な仕事もまた王様の務め、なのかねぇ?まあ、確かにそうか。こんな所までリアルじゃ無くてもいいのになぁ?」
こうしてミャウちゃん率いる部隊が作られて今後から入って来るポイントがまた微増するようになった。