何で俺だけ「交換条件」
今、俺の目の前で跪いている名も知らぬ魔族が居る。そいつはゲブガルとマイちゃんが連れて来た者だった。
そう、スカウトで見つけた魔族をこうして俺の前にて忠誠を誓うようにと連れて来たのだ。
「あー、そんなに畏まらないで良いよ。立って立って。話は二人から聞いたけど、随分と苦労したみたいだね。今はこの城で疲れを抜いて欲しいんだ。それと、キッチリと傷が癒えたら君を戦力として数えたいんだけど、了承してくれないかな?」
「・・・自分の願いを受け入れて貰った。この恩義には必ず報いる。」
ゲブガルはこの魔族の言葉にかなり眉間に皺を寄せている。言葉使いがなっていないと言いたいんだろう。
でも、今は彼と話しをしているのは俺だ。なので弁えて横から口を出すと言った真似をしてこない。
コレがミャウちゃんが居た場合は多分ビシッと注意をしていたかもしれない。
「ああ、大丈夫だ。この城で匿う事は約束だからな。もし将来にプレイヤーたちがこの城に攻め入って来た時には子供達を連れて君は真っ先に逃げてくれ。その代わりに君は俺の配下になる。その時まで君にはプレイヤーたちを狩ってポイント集めに協力して貰う。まあ君がやられてしまう可能性も秘めては居るから危険は承知か。」
彼が俺の配下になる条件に「子供達を匿う」といった事を提示された。なので俺はコレに二つ返事で即座に受け入れた。速攻でOKを出した事にぽかんとされもしたが。
城ではその子供達は自由にしていていいとも言っておいた。その子供達は当然魔族である。どうにもゲブガルの拠点だった場所で最初は静かに隠れ棲んでいたらしいのだが、そこに偶々プレイヤーが現れた事で戦闘となったらしい。
その時に遭遇したプレイヤーは倒す事に成功したらしいのだが、二回目に来たそいつらは完全に準備をした状態だったと言う。
そこでやられそうになりかけた所をゲブガルとマイちゃんに助けられたそうだ。そこでスカウトの話をする前に城へと彼を連れて来て治療を施そうと言った流れになったそうで。
その時にこの魔族に「守っている子供達も一緒に連れて行って欲しい」と願われてマイちゃんがそれを了承したと言う。
その時のマイちゃんの言葉はと言うと「魔王様は優しいからきっと大丈夫」とかなんとか言った内容だったとゲブガルから説明を俺は受けた。
この頼みに即座にOKを出したマイちゃんにゲブガルは勝手な決断をする事を注意したと言うのだが。
『私が全責任を持ちます。それならいいでしょう?』
と、そんな一言で押し切られたらしい。普段のマイちゃんからは想像もできない位に強い意志が込められていてゲブガルはそれ以上何も言えなかった、と。
こうして城にこの魔族とその守っていたと言う子供達を連れて来た後は部屋を一つ用意して休息を取らせたのだ。
俺はこの玉座の間から出られないので、この魔王の城がどの様な構造、間取りになっているかすらも知らない。
そう、魔王の俺は未だにこの城の中を把握できていないのだ。システム的に真っ先にこの城の構造を知る事ができても良さそうなモノなのに、である。
俺なんかよりもよほどミャウちゃん、マイちゃん、ゲブガルの方がこの城に詳しい。何か解せない気持ちにその時はなったが、こうして配下が増える事を今は喜ぶべきだろう。
「さて、君の名前を教えてくれないか?これからは危険な仕事を任せて働いて貰うのだし、そんな自分の部下の名前を知らないって言うのはどうにもイカンと思うんだ。」
コレになんとも珍獣でも見るかの様な眼差しをその魔族から向けられた。
「自分は・・・ベルガーン。子供達が安全である限り、自分はあなたの手足となってプレイヤー共を蹴散らす。」
「オッケー!それじゃあ今後とも宜しくね。あ!大事な事を言うのを忘れてた。危ないと思ったら直ぐに逃げて来てね。限界までギリギリ粘るとかしないでいいから。命大事に!これ、命令ね。ちゃんと守るように。君が死んだら子供達が悲しむからね。あ、それとゲブガルとマイちゃん、子供達に教育とかできる?戦闘訓練だけじゃなくって勉強も教えてあげられるとなおヨシ!」
何て俺が言うと何故かベルガーンが「は?」と言った感じの表情になった後に、またしても俺を珍獣を見る目になる。
俺はこの視線を向けられるのが凄く気になったのだが、ここで「ピンポン」と音が鳴って勝手にシステム画面が出てきた。そこには。
【魔族・ベルガーンが配下に加わりました。ポイントを消費して強化ができます】