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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
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何で俺だけ「どうやら一人目」

 今、三名の魔族は魔王の命により、各地に散らばっている思い思いに移動している魔族たちの足取りを追っていた。それは魔王「軍」へと勧誘を行うためである。


「三人で固まって動くのは効率が悪いわね。ゲブガルとマイウエルは二人で動いてちょうだい。私は単独で探すわ。」


「あの、おねいちゃん、大丈夫?だって・・・「偽物」がウロチョロしてるって・・・」


 姉を慮ったマイウエルはそう言って不安を口にするが。


「大丈夫よ。魔王様も今は放置して様子を見るとおっしゃったわ。それを無視するような事は絶対にしない。それにプレイヤーに処分を任せるとも魔王様はおっしゃった。ならば私はその両方の監視をし続けるだけでいい。勝手そこらで単独行動の魔族たちに負けるような強さでは無いわ。心配は無用よ。逆にあなたの方が心配だわ。だからこそ、ゲブガルを付けるのだけれど。」


「そうじゃの、マイウエルはまだまだ精神が不安定だ。城に来た時よりかはかなりマシになったが・・・プレイヤーの事を思い出すとまだ少々の揺らぎが出る。私が付いて行くのは妥当だな。」


 などと言って休憩中の木の陰でそんな会話が続けられた。魔王からのスカウト話が出た後は、マイウエルは城に籠ってまだまだ養生をしていた方が良いと言った判断だったのだが、マイウエル本人からの希望もあり、早めのリハビリと言う事で城外にこうして出てきている。


「探す範囲は広大だわ。何処か狙いを付けた方が良いわね。目撃情報としてはゲブガルの拠点だった場所に頻繁に出没してるって事だったのだけれど。ゲブガル、大丈夫かしら?」


「まあ構わんさ。苦い思い出があそこにはあるが、もう呑み込めた。今ならプレイヤー共に後れは取らんわい。さて、行こうか。」


 こうして余りにも少ない人数での「軍」へのスカウト作戦は続く。コレは長い時間が掛かるとこの三名も理解はしていた。

 しかし命令だと言うのであれば実行するのみだ。しかし魔王からはちゃんと「命令」としてこの作戦は出されてはいない。

 頼み事、などと言った少々頼り無い言葉で三名へと願われたものである。それでも「魔王様からの頼み」として受け止めている三人にはこれを突っぱねると言った事はあり得ない。


 ========   ========   =======


「ここがゲブガルさんの守っていた拠点ですか?うーん?寂れちゃってますね。プレイヤーはもうここには現れていないと見ていいんでしょうか?」


「そうだな。鍵はもう見つけられてしまってるだろう。そうで無ければまだまだプレイヤー共が何処かに見かけていてもおかしくは無い。さて、何故その様な場所に魔族がいるのか?そしてなぜプレイヤーは用など無くなったはずのこの場所にやってきているのか?」


 そうで無ければ目撃情報などはあり得ない。ミャウエルが「正義の味方ごっこ作戦」でプレイヤーたちからの噂話を集め、そうして集まった情報でここに確実に一人は魔族が居ると言う確証が出ていた。

 そしてこの場所を見て回るならばよく知っているゲブガルが適任だと言う事だ。


「あの、大丈夫ですか?ゲブガルさんはもう呑み込んだ、何て言いましたけど。不安や拒絶とかは・・・」


「お前さんは優し過ぎるのぅ。ミャウエルも妹が可愛いならば四天王になんぞさせなくても良かっただろうに。そのせいでマイウエルが負わずともよい傷を心に負ったと言うのに。」


「あの、御心配おかけして申し訳ありません。でも、私も、このまま引き下がるつもりはありませんから!」


 そんな風お互いを心配し合う会話を続けながら拠点の中を歩きゆく二人。

 そして大分奥へと入り、もう少しで最奥、以前にゲブガルが居た部屋の近くまで来た。そこでどうにも戦闘が繰り広げられている音が流れてくる。


 金属を打ち合う音、魔法の爆発音、そしてどうやらプレイヤーが仲間へと連携する掛け声。


「いますね。どうしますか?」


「割り込むと余計な情報をプレイヤーに与える事となろう。この勧誘はまだまだ知られたくはない。終わってから行こう。」


「様子見をしに行くのもしないんですか?それに、戦闘しているのであれば私たちがプレイヤーを倒す事も・・・」


 最奥の部屋からは多めに離れた場所の物陰に隠れて二人は次の行動への相談をする。


「ここまでにプレイヤーは一人も見かけなかった。そして戦闘音。おそらくは中で戦っているのは十中八九、私たちが探していた魔族だろう。そ奴が負けるならそこまで。勝つならば一定の戦力アリとして勧誘をする。ここでの戦闘はそ奴の力量を見極める一定の判断材料にはなるだろう。」


 この理屈に納得したマイウエルはその後は「理解しました」と言って静かになる。

 こうして二名はこの戦闘が終了をするまでの間そっと隠れ続けた。

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