何で俺だけ「おや?これはどういう事だ?」
「プレイヤーの間でどうにも妙な噂が立っております。しかもそれが・・・「魔王」だと言うのです。」
ミャウちゃんが帰って来て妙に慌てていたので、その中身を確認したらコレである。俺にもさっぱりだ。混乱は否めない。
「えーっと?それって・・・どう言う事?」
俺がこんな風に思うのも無理は無い。魔王の妙な噂と言われても、俺は今までにも「やらかし」をした覚えは無い。いや、あると言えばある、無いと言えば無い。
只の噂でここまで慌てた様子でミャウちゃんが帰って来るなどあり得ないのだ。
「はい、プレイヤーの間で「魔王」と名乗る魔族と接触したと言う話が持ち上がっているのです。」
「いや、俺、ここから出られて無いんだけど、一度もこれまで。それって、魔王を騙る魔族、って事だよね、そうすると。・・・何が目的なんだろ?」
俺がこの偽物の「魔王」は何の目的で?と首を傾げかけた時、ミャウちゃんが話の詳細を続けた。
「どうにもプレイヤーが消える際に出る神の力の残滓を吸収していると言うのです、その「魔王」は。」
「え?それって俺が得るはずのポイントを掠め取ってるって事?え?そんな事できるの?魔族がそれを吸収すると・・・あ!パワーアップする?もしかして?ああ、そうだよなあ。俺の所に集まったポイントは四天王にも、ミャウちゃんにも振り分けられたんだし?直接その場で魔族がプレイヤーを倒した時にソレを自身で吸収する事もできそうではあるなあ。」
「・・・そ奴を我々が見つけて粛清して参ります。魔王様が得るはずの物を盗み取るようなマネ、許せるはずはありません。必ずや自身の行いを後悔させた後に、死が救いだと思えるような拷問を受けさせて、生きながらにして殺し・・・」
「待って待って待って!ちょっと待って!はい、落ち着いて!ね?ミャウちゃん、深呼吸をしてー?吸ってー?吐いてー・・・はい、ミャウちゃんのキレイな顔がもの凄く怖いものになってました!はい、笑って笑って。」
俺のこの言葉にミャウちゃんが「申し訳ありません」とだけ漏らして俯く。その表情がどの様になっていたのかは窺い知れなかったが、次に顔を上げた時の表情は冷静さを取り戻していたように見えた。
どうやらもの凄くその「自称魔王」にキレていたようだ。どうにもミャウちゃんの中の「地雷」を踏み抜いているらしい、その自称魔王の行いは。
「その「自称魔王」って言うのは今は放って置こうか。様子見をして見よう。そいつがプレイヤーを倒すのは別に良いよ。そして力を吸収して強くなるのも別に構わない。ポイントが得られないのはちょっと勘弁して欲しいけど、それでも「面白そう」だからそいつの対応はプレイヤーに任せてみたいと思う。ああ、それと、今日はちょっと今後の事についての話したい事があったんだ。」
俺はマイちゃんとゲブガルに話があるので来て欲しいと通信する。そしてその後に直ぐに二人がやって来たので俺はここで考えていた事を口にする。
「この三名にフィールドを徘徊している魔族たちにスカウトをしてきてもらいたいです。魔族たちを集めて、束ねて、協力してプレイヤーへと当たって欲しいんだよね。さて、この案に何か不備があるとか、その他の意見など何でもいいからあれば発言して欲しいんだ。何かあるかな?」
足止めをする役目、攻撃を積極的に仕掛ける役目、あるいは索敵に情報収集、奇襲など、こちらも数を揃えてプレイヤーへと積極的に関わっていくと言った目的のために、散らばっている魔族たちを集めて「軍」を創りたいと言った事を俺は言ってみた。